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「ふとした結びつき、静かなやさしさ」

コスモテックの青木です。

私がコスモテックの門をたたき、それから数年後の2005年に立ち上げたコスモテックの箔押しブログ 『 ようこそ!行列のできる箔押し印刷工房へ 』 はおかげさまで まもなく開設20周年という節目をむかえようとしております。

2005年に立ち上げた箔押しブログ
まもなく20年の歳月が過ぎ去ろうとしている


2024年になり、じんわりとうれしくなる出来事が2月に同時に立て続け3つも起こるとは驚きでしたので、 note にてご紹介させていただきます。

◉ おてんとうさまは見ている

3つの出来事が 「 少し前のことなのにも関わらず、ふとした瞬間に今・現在へと、こうして結びついて繋がってくるものなのか!? 」 と気づいた瞬間…
私は不思議なご縁を感じずにはいられませんでした。

そして、私がコスモテックという箔押し加工所( まだ印刷加工会社というよりも加工所と呼んだ方がぴったりの時 )に入社して、右も左も何もわからない新米営業マンだった頃、今は亡き箔押しの匠 佐藤と、厳しかった私の祖父が、「 誰も見ていなくとも、おてんとうさまが見ているもんだよ( だから頑張れ ) 」 という言葉を私によく話してくれた日のことを思い出したのでした。

どこに進めば良いものなのか、新人で真っ暗闇を進んで行く。 明るい太陽のあるべき位置を想像して、コツコツと前へ前へと進んでいるのか、進んでいないのかもわからない。 そんな時に昔の人、箔押しの匠や祖父の 「 おてんとうさまが見ているもんだ 」 という言葉が何故か思い出され、心に沁みてきたのです。 

今回起こった3つのうれしい出来事は、まさにコツコツと積み上げてきたものをおてんとうさまが見ていてくれたように感じたのでした。

◉ JAXA レッテル風 ステッカーが!

1つ目の出来事は、2017年にコスモテックでデザイン・製作加工を一貫してお手伝いさせていただいた JAXA のレッテル風ステッカーです。

「 H3と種子島宇宙センターのミッションマークとコスモテックが制作に携わった JAXA ステッカーが一同に並ぶのは本当にすごい!!! 」

このことに気づいたのは、 SNS でのある投稿を介してでした。
はじめは 「 一体何のことなのかな? 」 と、お恥ずかしいながら理解するまで時間が少しかかってしまいましたが、わかった瞬間 私は大興奮しました。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構( JAXA )が、種子島宇宙センターから2024年2月17日(土)に、H3ロケット試験機2号機 打ち上げを行った時のライブ中継の際、中継内に映し出されているノートパソコンに、なんとコスモテックが2017年に JAXA のご担当者さまと一緒になってがっつり作り込んだ JAXA ステッカーが大切に貼られていたのでした!

「 コスモテックが携わっているステッカーだ! 」
と教えてくださったのは SNS 上の顔も名前もわからない方の投稿なのですが、皆さまがコスモテックの加工現場でつくったものとして認識してくださっていたお力添えもあって、運良く気づかせていただくことができたのです。

JAXA とのステッカー制作の開始は今から7年前( 2017年 )の出来事です。 今回のH3ロケット試験機2号機の打ち上げがきっかけとなり、SNS 上の皆さまの一声が後押しとなり、まるで昨日のことのように当時の JAXA ステッカー制作のやりとりが一気に思い出されていきました。

◉ 雪朱里 『 印刷・紙づくりを支えてきた 34人の名工の肖像 』

2つ目の出来事は、H3ロケット試験機2号機 打ち上げが行われた2024年2月17日(土)の午後。この日の午後からはコスモテックの箔押しの現場で、コスモテックとしては初の試みとして 20名ものお客さま( 応募当選者の皆さま )を箔押し立ち会いにご招待するという 『 箔押し公開立ち会い 』 を開催しました。 

当日の参加者の一人に校正者であり、校正エッセイ集 『 文にあたる 』( 亜紀書房 )の著者 牟田 都子( むた さとこ )さんがいらっしゃることは、『 箔押し公開立ち会い 』 の主催 S_Dさんより共有いただいていたので事前に知ることができました。


以前より、校正者 牟田さんの活動は SNS を通して度々お見かけすることがあり、今回はじめてお会いする機会にも関わらず、勝手に親しみのような気持ちを感じておりました。


牟田さんがコスモテックの現場に到着次第、開口一番に私にかけてくださった言葉が印象深く残っています。「 コスモテックさんに来る前に 『 名工の肖像 』 を改めて読んできましたよ。 」 と。

書籍 『 名工の肖像 』( 発売日:2019年12月 )が刊行されたのは約4年前。今は天国にいるコスモテックの箔押しの匠 佐藤勇も印刷・紙づくりを支えてきた名工34人の一人として掲載されており、私にとってとても大切な本です。

佐藤が逝去したのが本の発売日のちょうど一ヶ月ほど前。残念ながら佐藤が刊行された本を見ることはなかったのですが、これから世に生まれる本のゲラを届け、ご報告した日のことは今でも鮮明に私の中に残っております。

牟田 都子さんが 『 名工の肖像 』 をお持ちで、コスモテックでこれから開催する 『 箔押し公開立ち会い 』 の直前に再度 箔押しの匠 佐藤の記事をご覧くださったということに、とても感動しました。

「 読んできてくださったのですか。ありがとうございます! 」
「 なんとかおかげさまで今もコスモテックは箔押ししています! 」
と、心の中で牟田さんに握手をしていました。

そして、翌日 2024年2月18日(日)の牟田さんの下記の投稿が私へのとどめの一撃で、気持ちをわしづかみにされた気分です。

「 どうやってやろうと悩むような仕事しか、青木は持ってこない 」
これは、書籍 『 名工の肖像 』 の中で語られている佐藤の言葉なのです。生前 箔押しの匠 佐藤が毎日毎日 私からの無理難題を全力で受け止めてくれていた日のことを牟田さんのあたたかみ溢れる投稿から思い出し、なつかしい気持ちになりました。

そして、「 青木、もっとしっかりがんばれよ! 」 と、ぽんと匠( 佐藤 )に肩を叩かれたような気持ちになりました。 本の刊行から4年の歳月が流れておりますが、今も匠を知ってくださる方がいること、匠を思い出してくださる方がいることがうれしく、牟田 都子さんのあたたかい心遣いに感謝したのでした。

牟田さん、「 コスモテックさんに来る前に 『 名工の肖像 』 を改めて読んできましたよ。 」 と伝えてくださり、本当にありがとうございました!

◉ 北田博充 『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』

3つ目は牟田さんのあたたかい投稿の翌日、2024年2月19日(月)に、注文していた本 『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』 が本の発売日当日に私の手元に届きました。

それまで本ができあがる過程を目にしたことがなかった私は、「 箔押しとはいってもベルトコンベアで流れ作業だろう 」 と軽く考えていました。

ところが、実際にカバーの箔押しを見学させてもらうと、驚くことに前田瑠璃さんという職人が一枚一枚手作業で箔押しをされていたのです。一枚のカバーにエンボス( 浮き出し加工 )とデボス( 空押し )の二つの加工を施すという、前例のない依頼をしたこともありましたが、技術と経験がなければ到底できない繊細な職人芸でした。

本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- P25-26 より


上記はこの本の中の文章 『 自分の持ち場で役割を果たす 』( P25-P26 )の一部( 掲載の許可は 著者の北田博充さんよりいただきました )です。 なんと! コスモテックが、そして現場リーダーの前田瑠璃が登場するワンシーンがあるのです。

『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』 とは?

本屋の未来の姿を考えるノンフィクション。
「 書店員 」 だけではなく、「 本の魅力を伝える人 」 すべてを広義の 「 本屋 」 ととらえ、未来の読者を創るために、高校の国語教師や、TikToker のけんご氏など、いまどんな人たちが活躍しているのかをインタビューなどで紹介。さらに、プロレス産業など、衰退産業でありながら復活を遂げた業界を取材し、いまだからこそ示せる書店業界の復活のヒントや将来の可能性を探っていく。

出版業界に関わる人、本と本屋を愛する人すべてが必読の一冊。

PHP 研究所 ホームページ より


このように書籍 『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』 は印刷・加工に関する本ではなく、本屋さんの未来を考える本です。

コスモテックと前田瑠璃が掲載されることについて、著者の北田さんは 「 本書の主旨とは異なることではあるのですが、コスモテックさんにお邪魔して、製作工程を見学させていただいた日のことは、一生忘れられないほど印象的な出来事だったので、少し記載させていただきました。 」 と私と前田に教えてくださいました。

「 あの時の体験を北田さんは本当に大切にしてくださっている! 」
私の頭の中にふわっとその時のシーンが蘇りました。 それは今から4年前の2020年9月の出来事です。

書籍 『 ののの 』( 下記 note 記事 )の加工立ち会いに北田博充さんと 『 ののの 』 の著者である太田靖久さんがお越しくださいました。これが私と北田さんのはじめての出会いです。

この 『 ののの 』 のお仕事は 藤原印刷株式会社 の藤原章次さんからご依頼、お任せいただき、難易度の高い デボスとエンボスの連続技でみせる表紙加工を立ち会いにて実現させることができました。

「 そうなのです! 」 
『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』 にコスモテックが掲載されているワンシーン( P25-P26 )は 『 ののの 』 の加工立ち会い時のエピソードなのです。

書籍 『 本屋のミライとカタチ-新たな読者を創るために- 』 の著者である北田さんより掲載に関してはじめてお話しをうかがった際、「 北田さん、あの時の体験を憶えていてくださり本当にありがとうございます! 」 という気持ちとともに、藤原印刷 藤原章次さんが繋いでくださった製作のバトン無くして、おそらくこのような素晴らしい機会を2024年の今、こうしていただくことはなかったのかもしれないなと思ったのでした。

◉ ふとした結びつき、静かなやさしさ

2024年2月17日(土)から19日(月)の3日間にかけて、2017年・2019年・2020年の出来事が形を変えて、私やコスモテックの前に突然戻ってきました。

すべてその時その時には目の前にあるモノ・コト・ヒトと真剣に向き合い、「 どうすればうまくいくだろうか? 」 「 うまく形づくるにはどうすればいいのだろうか? 」 と頭を悩ませたことのほうが多かったと思います。

仕事の中で生まれた人と人との結びつきや何気ない会話のやりとりが、年月を経て別の誰かを介してふわっと巡り戻ってくる。 今回の3日間に起こった素晴らしい出来事は、静かなやさしさや思いやりを感じ、なんだかまるで特別なプレゼントをもらったような気持ちになったのでした。

また、その当時に必死にものづくりに取り組み、お客さまと向き合った制作物や体験が、お手伝いさせていただいたお客さま自身にも大切な体験・思い出として痕跡を残せているのだということに気づかせていただきました。

そして昔、箔押しの匠や祖父が話し、私を励ましてくれた 「 おてんとうさまが見ているもんだ 」 という言葉が、今も私の中で生き続けていることを感じたのでした。

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