見出し画像

『 深海魚 』 ZINE 製本について

『 深海魚 』 ZINEの発行人 「 青木前田 」( ユニット名 ) の青木の方です。 今回は、 『 深海魚 』 ZINE の製本工程についてご紹介します。


製本は、小原一哉さん( 篠原紙工 )からのご提案により、「 光る製本 」 を採用しました。 小原さんが 『 深海魚 』 というテーマからイメージを膨らませ辿り着いたのが 「 本を光らせる 」 というアイディアです。


まずは、コスモテック社内のカラープリンターで印刷したZINEの本文用紙。その表紙には 『 深海魚 』 のタイトルを型押し( デボス )加工しています。そして丁合した状態のものを、今回 「 光る製本 」 をお願いした有限会社篠原紙工へ搬入しました。

そして、有限会社篠原紙工のすばらしい製本技術で 『 深海魚 』 写真をZINEの状態に綴じて頂きました。その一部始終を今回はレポートしてみたいと思います。

◎ 本の 「 のど 」(背) 側を断裁

本の 「 のど 」 とは、本文を開いた際、本のページを綴じている側の断面部分を指します。この 「 のど 」(背) に当たる一辺を、まずは仕上がり寸法に断裁します。


『 深海魚 』 ZINEの表紙・本文・裏表紙は全て同じ紙で印刷されており、薄く、つるつる、ぺらぺら 。 上の写真のようにトントントンと、ZINEのページを揃えた後、断裁機で 「 のど 」(背) の一辺をスパッと切り落としています。


断裁機で一辺を落とし終えた後の 『 深海魚 』 ZINEがこちら。
前田がお気に入りの断面。 『 深海魚 』 ZINE のメインカラーとも言える深緑色の断面が印象的です。

◎ 本の 「 のど 」 側に 「 ミーリング 」

先ほど断裁してツルリと揃った 「 のど 」(背) 側に、 「 ミーリング 」 と言う、削る加工をします。せっかく断裁してきれいに揃った断面ですが、ギザギザに削る( ガリを入れる )ことで、製本で綴じる際の糊付きを良くします。


1冊毎に機械にセットして、「 ミーリング 」 。
加工を終えた断面はご覧の通り、ジャギジャギに削られております。
荒々しく、そして生々しく、非常にカッコいいです!

◎ 本の 「 ミーリング 」 した場所に蓄光塗料を塗る

今回、「 光る製本 」 ( 暗闇でぼんやり、本の四つの断面が光る )をするために、まずは 「 ミーリング 」 した 「 のど 」(背)の断面に、篠原紙工の職人が刷毛( はけ )を使って、蓄光塗料を丁寧に塗ります。


タワーのように積み上げた 『 深海魚 』 ZINEのてっぺんに重しを乗せて、刷毛でさっさ、さっさと蓄光塗料を均一に塗っていきます。


◎ 「 PUR 製本 」 で綴じる

そして、いよいよ「 PUR 」 製本機で 『 深海魚 』 ZINEを綴じます。
一番最初の工程で断裁し、「 ミーリング 」し 、蓄光塗料を塗った、本の 「 のど 」(背)に、製本機で糊を塗って綴じていきます。

「 PUR(※) 製本 」 とは、PUR 専用の糊を使用する無線綴じ(針金や糸を使わない製本方法)のことです。 PUR 専用の糊を使用することで、通常の無線綴じよりも 「 がばっ! 」 と開きの良い本を作ることが出来ます。

※ PUR = Poly Urethane Reactive Hot-melt Adhesiveの略。
( 反応性ポリウレタン系ホットメルト接着剤 )

「 PUR 」 製本機に表示された 『 深海魚 』 のタイトルが可愛かったので、思わず写真撮影してしまいました…。 さて、それでは綴じて頂きます!


「 PUR 」 製本機に 『 深海魚 』 ZINE を1冊ずつセットして、糊で綴じていきます。 「 PUR 」 製本で一番大変なのは、この専用糊の厳密な管理方法と、更には、製本時間・その工程管理だそうです。


機械に1冊セットして、糊で綴じ、また1冊セットしては糊で綴じ…を手際良く、スピーディーに繰り返していきます。


綴じられた 『 深海魚 』 ZINE が山積みになっていきます……。


◎ 「 三方断裁 」 する

糊で綴じた 『 深海魚 』 ZINEは、一晩寝かせます。

昨日 「 PUR 製本 」 で綴じた 『 深海魚 』 ZINEを仕上がりサイズにカットする作業が 「 三方断裁 」 の工程です。


まだ仕上がりサイズになっていない、 「 のど 」(背)以外の三辺を断裁機で裁ち落としします。

三辺をカットするとご覧の通り! 写真の周りの白い余白部分が無くなり、写真のみがページいっぱいに 「 どん! 」 と現れました。


◎ 「 三方断裁 」 した断面に蓄光塗料を塗る

そして、いよいよ最終工程。

『 深海魚 』 ZINEは、四つの断面全てが暗闇で光る 「 光る製本 」 を採用していますが、この時点ではまだ 「 のど 」(背)の部分のみしか光りません。

最後の工程では、先ほど 「 三方断裁 」 した三つの断面に対して、篠原紙工の職人が刷毛で丁寧に蓄光塗料を塗っていきます。
ムラなく、満遍なく塗る作業は、まさに職人技です。


以上が 「 光る製本 」 の全貌です。

有限会社篠原紙工の職人による丁寧な手作業によって、一冊のアートブック、 『 深海魚 』 ZINEがついに仕上がりました。完成品を手に持った感じ、予想以上にグニャグニャ、ヌメヌメ感が触感として感じられ、どこか魚を持った感じにも通じている気がします。

製本の工程を経て、 『 深海魚 』 の写真は無事、ZINEとして綴じられ、いよいよ完成しました。

小原さん( 篠原紙工 ) 、 「 光る製本 」 という最高の、そして挑戦的な製本のご提案本当にありがとうございました。 また、今回の製本作業に携わってくださった篠原紙工の職人の皆様にも厚く御礼申し上げます。

『 深海魚 』
製品が生み出される裏側では、
意図せぬ異形の副産物もまた静かに産声をあげる。
偶然に生み出され、廃棄される時を待つだけの
冷たい深海魚たちのパレード。
WEB : https://deep-sea-fish-label.tumblr.com/

©︎aokimaeda “Deep sea fish“, 2019 Printed in Japan

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?