conicolor

イラストレーター/グラフィックデザイナーの読書録・備忘録

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最近の記事

ブランクーシ 本質を象る

大学生の時に彫刻科の先輩に<空間の鳥>というすごい彫刻があるよ、と教えてもらって以来、好きになったブランクーシ。著名な彫刻家なのに、意外にも日本の美術館で個展が開催されるのは今回が初だった。 モチーフの要素を極限まで削ぎ落とし、神秘的な、魂のようなものを想起させるブランクーシの彫刻は本当に美しい。フォルム・質感・陰影・壁や台座に落ちる影や反射など、平面作品では表現できない美が彫刻にはあるということを改めて実感した。 あと、<眠れるミューズⅡ>が「個人蔵」ということにも興味

    • 『サルディーニャの蜂蜜』

      <印象に残った話> ・口紅 貴族出身で政略結婚を破棄したことで勘当され、それから自力で生きてきた六十代の女性との出会いの話。 イタリア女性がいくつになっても女性であることを楽しみ、強さとしたたかさを持つ様が描かれている。 ・満月に照らされて イタリアとフランスの国境近くの山間部に筆者が暮らした時に出会ったとその家族の話。この女性も苦労した過去があり、それを乗り越えて手に入れた山での生活が綴られている。自然の中でのつつましい暮らし、ページの外まで香り立つボロネーゼの描写

      • 『9000人を調べて分かった腸のすごい世界 強い体と菌をめぐる知的冒険』

        昔から、アイデアを思いついたり、ワクワクした時に、なぜか腸のあたりがざわざわすることがよくあり、不思議に思っていた。「脳腸相関」を知り納得した。あの感覚は気のせいじゃなかった! ほとんどの有害な菌は胃腸で死滅すると思っていたので、歯周病菌の怖さがよくわかった。歯科医院が嫌いな母は、滅多に歯科検診を受けなかったが、脳梗塞を患ってしまった。全く関係ないとは言い切れない。日頃のセルフケアはもちろん、3ヶ月に一度の歯科検診はちゃんと受けよう。 コロナ流行時に夫婦ともにテレワークに

        • 『猫は、うれしかったことしか覚えていない』

          大好きな画家・絵本作家、ミロコマチコさんの挿絵がたくさん見れる本。この人が描く猫が一番好き。 以下、本書よりお気に入りのイラストと文をいくつか抜粋。 ミロコマチコさんのイラストはユーモアたっぷりでクセになる。何年か前に奄美大島に移住して、以前にも増して自然や生き物をダイナミックに表現したプリミティブな絵を描くようになった。思いっきり心を開放して描いているのが伝わる。絵もイラストも、対象物への愛が溢れているのは共通している。名作の「ねこまみれ帖」もたまに読み返さなくては。

        ブランクーシ 本質を象る

          teamLab Borderless: MORI Building DIGITAL ART MUSEUM

          <印象に残った作品> Light Sculpture 大量のムービングライトが作り出す光の彫刻。 光と音に包まれ没入体験する。トランス状態ってこんな感じなのかな。光のパターンもたくさんあり、これを見るだけでも行く価値があった。欲を言えば、奥にある鏡の存在感をもう少し消してほしい。 <その他> 空間全体に映像が映し出される作品は、自分も映像と一緒に動いているような感覚になり、美術鑑賞というよりはアトラクションのように驚いたり楽しんでいた。ただ、noteに記録するにあたり

          teamLab Borderless: MORI Building DIGITAL ART MUSEUM

          『私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』

          「火」が作り出した煤と「水」という対極の要素から生まれる墨の色は、黒色でも灰色でもないと篠田桃紅は言う。墨の中に何種類もの色を見ている彼女がどれだけ経験を積んでも、コントロールできる素材ではないらしい。 しかも愛用していた筆は、正規で売られている筆ではなく、筆職人の失敗作だったらしい。制御が難しい筆ほどいい作品を生み出すと言う。自分の意図に反して表れる表情に魅了され、一世紀に渡り生涯を通して対峙し続けた。 篠田桃紅ほどストイックに一つの画材に向き合えてはいないが、私も絵の具

          『私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』

          『今日でなくてもいい』

          佐野洋子(以下ヨーコさん)のエッセイを初めて読んだのは、2015年頃で、すでにヨーコさんは亡くなっていた。最初に本屋さんでパラパラ立ち読みをしたとき(たぶん『問題があります』だった)、ストレートな物言い(というか口が悪い)でギョッとしたのを覚えている。何この人?変わった人・・という印象だった。でもそんなヨーコさんの文章がすぐに好きになった。 ヨーコさんは日常を淡々とした口調で語る。戦後に壮絶な生活を強いられたり、身内がどんどん亡くなっても、自分がガンで余命宣告された時のことで

          『今日でなくてもいい』

          マティス 自由なフォルム 展

          好きな作品 <バーンズ財団壁画 ダンス> マティスのダンスシリーズの中で、この作品が色合い・構図・フォルムの全てが一番好み。生命の喜びに溢れた作品。 実物大で作成した後に、作品のサイズが間違っていて描き直したというエピソードにもびっくり。マティスほどの大御所でもそんな間違えするんだ・・・そして61歳で大作を描き直す気力があるのがすごい。この時にサイズを間違えてボツになった作品がパリ近代美術館に所蔵されているのだけど、バーンズ財団壁画の「ダンス」より人物がパキッとデフォルメさ

          マティス 自由なフォルム 展

          『なぜ、クリエイティブな人はメンタルが強いのか?』

          印象に残った内容1.ポジティブ感情は視野を広げ、選択肢を増やし、身体の回復を早める 被験者に楽しい映像(「楽しい」の定義は人それぞれ)を約2分見た後に皮膚の回復力を測定したところ、楽しい映像を見た被験者の回復が早かった。(アメリカのポジティブ心理学者 バーバラ・フレドリクソン博士の実験より) 自分メモ:つい空き時間にお笑いや動物の動画を見てしまい、時間を無駄に浪費したと後悔することもあるが、ダラダラ見ずに短時間ならポジティブ思考になるのでOK! 2.ポジティブ感情が生まれや

          『なぜ、クリエイティブな人はメンタルが強いのか?』

          はじめに

          1年で100冊くらい本を読んでいるが、最近好きな著者の本でも、前に同じ本読んだかも?というくらい記憶が曖昧になっている。読んでいる最中に感動した一節も、時間が経つと忘れていることも多々ある。これからは心に留めておけるよう、noteに読書録を残しておくことにした。 私の好きなアーティストは素敵な文章を書く人が多い。文章でのアウトプットが本業の創作活動に活かされているのかもしれない。 今まで紙の日記もブログも何度も挫折したけど、今回は目的意識を持って、自分のために続けよう。

          はじめに