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民藝 MINGEI — 美は暮らしのなかにある

《紺地剣酢漿草大紋山道文様被衣》

苧麻、筒描/江戸時代〔日本〕18–19世紀/131.0 x 117.5 cm/日本民藝館所蔵

小花柄の着物を藍で型染めし直し、絹で草花の刺繍を施した、ものすごく手の込んだ再生衣料。型染めの大胆さ、地布と刺繍の繊細さが相まって、江戸時代の職人のセンス・技術に脱帽する。日本刺繍の魅力に改めて気付いた。

《燭台》

真鍮/江戸時代〔日本〕19世紀/日本民藝館所蔵

吊り下げられた、蝋燭の芯を切るための鋏の形状と位置が絶妙なバランスで美しい。

《芯切鋏》

真鍮/昭和時代初期〔日本〕20世紀/1.7 x 30.5cm

寺院で使用されていた、蝋燭の芯を切る鋏。切った芯の受け皿部分が花のような形状で、仏具ならではの神秘的な雰囲気。

《小鹿田焼の唐臼》

ししおどしの原理で、水の力を利用し陶土になる土を砕く

この展覧会の見どころの一つは、各産地で撮られた作り手たちのインタビュー映像。その映像の中で流れる小鹿田焼の唐臼がとても美しく、焼き物よりもそちらに目を奪われた。川の水を汲み続け、ししおどし部分に苔が生え、それ自体が生きているかのような姿で自然と一体化している。

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1926年に柳宗悦らによる民藝運動が始まる前からこれらの作品は作られていて、美術品としてではなく、生活用品として作られていた。今のように物に溢れていないからこそなのか、昔の人の美意識の高さに驚く。しかも、小鹿田焼や鳥越竹細工などは、作家さんではなく、農家さんが農閑期に生計の足しにするために製作していた。それが芸術と認められ今では専業となり受け継がれている。でも、後継者不足や原材料の枯渇でいつ途絶えてもおかしくない状況だということも、今回の展覧会で分かった。
特に小鹿田焼は一子相伝で続いているというが、その仕組みは今後も変えれないのだろうか。私が家業を継がずに家を逃げるように出てきた人間なので、その辺の事情が気になる。

いつでも見に行ける日本民藝館所蔵の作品がほとんどだったけど、日本民藝館の展示とは違い、作品の解説や映像資料が充実していて、見応えのある展覧会だった。

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