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『私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』
これはなんだとあっさり言えちゃうような、この色は何色だとパッと言えちゃうようなものではない。いつも何か引っかかっている。何か言ったようだけど、言えてない。そういう表現というものの限界を悟らせるような存在なんですよ、墨というのは。
「火」が作り出した煤と「水」という対極の要素から生まれる墨の色は、黒色でも灰色でもないと篠田桃紅は言う。墨の中に何種類もの色を見ている彼女がどれだけ経験を積んでも、コントロールできる素材ではないらしい。
しかも愛用していた筆は、正規で売られている筆ではなく、筆職人の失敗作だったらしい。制御が難しい筆ほどいい作品を生み出すと言う。自分の意図に反して表れる表情に魅了され、一世紀に渡り生涯を通して対峙し続けた。
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篠田桃紅ほどストイックに一つの画材に向き合えてはいないが、私も絵の具を使用した際に現れる予想外の滲みや、色の重なりの虜になっている。偶然が生み出す表情に魅せられると、デジタルだけで作品を完結させることは物足りなくなる。生成AIがどんな絵でも描けるようになっているが、アナログ制作の楽しみは忘れてはいけない。
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