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ブランクーシ 本質を象る

大学生の時に彫刻科の先輩に<空間の鳥>というすごい彫刻があるよ、と教えてもらって以来、好きになったブランクーシ。著名な彫刻家なのに、意外にも日本の美術館で個展が開催されるのは今回が初だった。

《眠る幼児》を皮切りに、「眠り」の状態を通じて、ブランクーシは重力から解放された、水平に置かれた頭部像を創出します。《眠れるミューズ》にみられるように、表面に外形の特徴をとどめつつ、その内部に思念や夢想の観念を想起させる卵形の頭部は、次第に生命や誕生のシンボルとして、抽象性を高めていきます。1910年代のブランクーシの創作は、頭部をモティーフとする、観念とフォルムとの関係の追求に牽引されていきます。

展覧会HPより
<眠る幼児>
1907年 (1960/62年鋳造)/ブロンズ/豊田市美術館
<眠れるミューズⅡ>
1923年 (2016年鋳造)/磨かれたブロンズ/個人蔵
<空間の鳥>
1926年 (1982年鋳造)/ブロンズ、大理石(円筒形台座)、石灰岩(十字形台座)/横浜美術館

モチーフの要素を極限まで削ぎ落とし、神秘的な、魂のようなものを想起させるブランクーシの彫刻は本当に美しい。フォルム・質感・陰影・壁や台座に落ちる影や反射など、平面作品では表現できない美が彫刻にはあるということを改めて実感した。

あと、<眠れるミューズⅡ>が「個人蔵」ということにも興味を惹かれた。名前を出せない団体が所有している際も「個人蔵」と表記するらしい。もし本当に個人が所有しているのだとしたら、普段はどんなふうに飾られているんだろう、所有者はどんな気持ちで眺めているんだろう、と想像をめぐらす。
ちなみに、美術手帖の記事によると、2017年に行われたクリスティーズのオークションでの《眠るミューズ》(1913)落札価格は5740万ドル(約63億7000万円)だったらしい。つい下世話な憶測をしてしまうが、こうやって一般の人の目にも触れる機会を作ってくれるのだから、どこかの富豪(おそらく)に感謝しなければ。

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