Satoru Teshgaura

サンガム印度武術研究所主宰。これまで学び探求してきたインド武術、ヨーガ・瞑想、原始仏教…

Satoru Teshgaura

サンガム印度武術研究所主宰。これまで学び探求してきたインド武術、ヨーガ・瞑想、原始仏教、古代インド思想などについて情報発信します。記事はマガジンとして開いて上から順番に読んでいく構成になっています。当面のテーマは、インド式エクササイズの素晴らしさとバーラティア棒術についてです。

マガジン

  • インド武術から見た相撲の起源

    日本の国技『相撲』、その二千年近くに及ぶ歴史のそれぞれ画期を成す節目に、いかにインド武術のDNAが重要な影響を及ぼして来たかを解き明かしていく、ひとつの試論。

  • 印度武術王国エッセイ

    知られざるインド武術、そしてその優れたエクササイズに関するよもやま話、考察、秘話など。

  • ブッダの瞑想法とヒンドゥ・ヨーガ

    1995年から96年にかけて経験した上座部仏教のヴィパッサナー瞑想と、当時から続けているヨーガ実践をベースに、2011年から本格的にパーリ経典を読み込みつつ、更にヴェーダやウパニシャッドなどヒンドゥ教の古典をひもとき検証してきた、その研究プロセスと成果をまとめていきます。 基本的に、はてなブログの「仏道修行のゼロポイント」記事を移転・再構成する形になりますが、端的に言えば、ゴータマ・シッダールタ・ブッダこそが、インドにおける『元祖ヨーギン』だった、というのが、私の結論です。

  • インド棒術 バーラティア:理論編

    インドの大地で武術的なエクササイズ&パフォーマンスとして数千年にわたって継承されてきた棒術の回転技について、その実践的な効果や現代的な意義を、論理的に解説していきます。

  • チャクラの国のエクササイズ

    ある日テレビ番組を通じてインド棒術と出会った私は、回転する車輪を表しているかの様なその技に魅せられた。そして未だ知られざるインド武術を求めて現地を踏破しローカルな道場を訪ねつつ、いつしか棒術の回転技とその起源に引きこまれていく。その果てにたどり着いた驚くべき真実とは… 延べ6年に及ぶ修行と探求の記録。インド世界に興味を持つすべての人に。 「聖車輪」というキーワードを元にインドの歴史を紐解く事によって、これまで見えなかった何かが見えてくる。

最近の記事

  • 固定された記事

インド武術から見た近代スクワットの起源

はじめに 2023年6月初旬に、Tarzan誌より「スクワットの起源について」取材依頼があった。 スクワットは加重スクワット(ウェイト・トレーニング)としても身ひとつで行う自重スクワット(Air Squat or Bodyweight Squat)としても現在世界中で盛んに行われており、別名『エクササイズの王(The King of Exercises)』とも呼ばれている。 以下はこれを契機に始まった私の個人的な「スクワットの起源探求」のプロセスを覚書的にまとめたものだ。

    • インド武術から見た相撲の起源5:織田信長の『黒人従者・弥助』は、インド武術の使い手だった!?

      ◆織田信長の相撲好き 日本の柔術・組討術は平安時代の相撲にその淵源を発し、平安末期から鎌倉時代をへて戦国時代にかけて打ち続く戦乱のさ中に錬磨された結果、徐々に体系化されていき、最終的に江戸初期までにその技法が確立したと言われている。江戸期の相撲に大きな影響を与えたという関口流も、戦国期に確立した既存の術技をベースに、開祖の関口氏心が独自の工夫も合わせて江戸初期に大成したものだ。 特に戦国時代の発展は著しく、数多の著名な戦国武将たちが、もっぱら実践的な要請から武者相撲をは

      • インド武術から見た相撲の起源4

        前回の投稿はこちら ↓ 四股と反閇とインド武術◆醜(しこ)を踏むインドの神々 実際のところ、相撲に特徴的な四股、土俵入り、蹲踞、股割りなどの身体所作&エクササイズが何時、どのような経緯で始まったのか、という点に関しては、明確な記録は見いだせず謎に包まれている。 しかし、例えば四股の原像は醜と言われ、大地を踏みしめてそこに潜む魔を追い払う『醜を踏む』儀礼に由来するという説があるので、以下に引用しよう。 これら「地中の悪霊を踏みつけ邪気を払う」というコンセプトは、先述した

        • インド武術から見た相撲の起源3

          『仁王のポーズ』でつながる古代アジア世界◆マラ・ユッダと金剛力士と埴輪力士 インドの伝統レスリング、クシュティの祖型であるマラ・ユッダには、もうひとつ正統の後継者があって、それがヴァジュラムシュティと呼ばれる武術だ。 この格闘技は、主にグジャラート州からカルナータカ州にかけて、ジェスティマラを名乗る特殊な戦士カーストによって保存伝承されて来たもので、「その拳に特殊な『メリケン・サック/ナックル・ダスター』をつけた状態」でフルコンで殴り合うという、凄惨な試合で特徴づけられ

        • 固定された記事

        インド武術から見た近代スクワットの起源

        マガジン

        • インド武術から見た相撲の起源
          5本
        • 印度武術王国エッセイ
          1本
        • ブッダの瞑想法とヒンドゥ・ヨーガ
          2本
        • インド棒術 バーラティア:理論編
          3本
        • チャクラの国のエクササイズ
          38本

        記事

          インド武術から見た相撲の起源2

          相撲の起源とされる角抵力士とインドの精霊ヤクシャ◆野見宿禰と当麻蹴速、そして埴輪力士 前回投稿では、インドの伝統武術であるクシュティ・レスリングやカラリパヤットと日本の相撲の類似点を例示した上で、これらインド武術の原像である『マラ・ユッダ』と相撲の不思議な親近性を指摘した。 一方、日本の伝統的な神事としての相撲、その起源について遡っていくと、古事記と並ぶ日本最古の歴史書である日本書紀に記された、野見宿禰と当麻蹴速との対戦にいき着く様だ。 この戦いは垂仁天皇の展覧試合と

          インド武術から見た相撲の起源2

          インド武術から見た相撲の起源1

          実はとても良く似ている、相撲とインド武術◆はじめに 私が2005年からインド武術探訪の旅を開始した際、そこで最初に訪れたのは、西インドのラジャスタン州にあるクシュティという伝統レスリングの道場だった。 その後、続けて南インドに移動した私はケララ州で伝統武術のカラリパヤットの道場に入門し、それがインド武術実践稽古の事始めとなったのだが、この最初期の段階から、私はある感触を抱かずにはいられなかった。 それは 「日本の国技である相撲の起源は、インドの伝統武術にあるのではない

          インド武術から見た相撲の起源1

          「広長舌相」とヨーガ:元祖ヨーギンとしてのブッダ

          前回投稿 では、スッタニパータにおける謎の『広長舌相』について考察した。 私がこの、一見突飛な、荒唐無稽にも思えるエピソードにこだわるには、もうひとつ理由がある。 それは、前回の読み筋とほぼ並行して始まったもので、ヨーガの行法とも深く関連する視点だった。 広長舌相についてとやかく言う前に、そもそも広長舌相をそのひとつとして含んでいる仏の32相について、おさらいしておくべきではないか。 そう考えた私は、まず仏の32相について1から32まで、読み上げていった。これは検索す

          「広長舌相」とヨーガ:元祖ヨーギンとしてのブッダ

          スッタニパータ「広長舌相」の謎

          これまで私は、『ブッダの言葉』をはじめとした岩波文庫版パーリ仏典シリーズを、各巻4~5回以上は読んでいるのだが、初めて読んだ時から更に回を重ねても、しばらくの間まったく理解不能だった一節がある。 何しろ、2500年前の古代インドの人々が口承で伝えた文言を、私たちにとって全く異質なパーリ語という言語から翻訳している訳だから、完全に理解するには困難が伴うのは当たり前だ。 それでも、優秀な翻訳者の努力によって、これらの経典の大意は、私たちにも理解できるようになっており、それは何

          スッタニパータ「広長舌相」の謎

          一本の棒を「相棒」とする事で、ヒトの脳は飛躍的に進化して来た

          前回の投稿はこちら↓ 前回投稿では「比類なきエスノ・サイエンスとしてのインド式エクササイズ」という主題を立てましたが、今回は私がどのような理由でインド棒術バーラティアを現代人向けエクササイズとして推奨しているのか、その拠って立つ基本的な人間観(身体観)を中心にお話ししていきます。 そこで重要な意味を持つのは、「人類が辿った進化の歴史」です。 《今回の投稿は現代人向けの汎用エクササイズ、という観点からのもので、スポーツや武術、アスリート向けなどにはまた違った文脈があり、これ

          一本の棒を「相棒」とする事で、ヒトの脳は飛躍的に進化して来た

          インド式エクササイズは、比類なきエスノ・サイエンスなのだ

          「現代人に不足しているのは『スクワット』と『棒術』だ。」 つね日頃から私はそう感じています。それは一体、何故でしょうか? 本マガジンでは、その裏付けとなる「インド式エクササイズ」について、特に棒術の回転技「バーラティア」に焦点を合わせて、順を追って分かり易く説明して行きます。 その前に、ですが、今回はまず私が拠って立つ基本的なスタンスを知っていただくために、最初にひとつのエピソードを紹介したいと思います。これは以前聞き知ってとても印象深く心に残っているもので、実際の史実とは

          インド式エクササイズは、比類なきエスノ・サイエンスなのだ

          バーラティア棒術:インド武術との出会いから、その背景思想探求に至る道のり

          バーラティア棒術、あるいは転法輪棒術は、インドで数千年にわたって実践され続けて来た武術的エクササイズ・パフォーマンスです。 この棒術は、自分の背丈よりも若干短い程度の一本の棒を真ん中で握って、自分の身体の周りをあらゆる方向にひたすら回していく事に特化した、不思議なエクササイズになっています。 今回の記事では、noteで既に投稿掲載が完了した『チャクラの国のエクササイズ』という、バーラティア棒術との偶然の出会いから始まる長大な物語をダイジェスト的に要約していきながら、この棒

          バーラティア棒術:インド武術との出会いから、その背景思想探求に至る道のり

          エピローグ

          前回の投稿はこちら ↓ 2022年の初夏から秋にかけて、この「チャクラの国のエクササイズ」を大幅に加筆しnoteに移転していく過程で、いくつかのとても印象深い発見、あるいは『出会い』があった。エピローグとしてはいささか情趣に欠けるかも知れないが、以下にそれを記していきたい。 ひとつ目は、6~7(7~8?)世紀に南インドのカンチープラムでパッラヴァ朝の宮廷詩人あるいはサンスクリット詩学者、更には物語作家として活躍したと言われる『ダンディン』との出会いだった。 ある日、いつ

          エピローグ

          コスミック・ダンス

          前回投稿はこちら ↓ 一体、回転する『車輪』とは何だろうか? それは中心なる神から、世界のすべてが創造展開されていく真理を表していた。同時にそれは、一点から発せられたエネルギーの波動が、360度あらゆる方向に等しく伝わって行く摂理にも重なるものだった。 その形は、様々な植物や動物、そして鉱物や雪の結晶が、中心から円輪放射状に成長展開する原理をも写し絵のように表象していた。同時にそれは、私たちがこの世界を観る、瞳の形でもあった。 回転する車輪のその働きは、人類の文明その

          コスミック・ダンス

          天地万象のチャクラ

          前回投稿はこちら ↓ 生物界の車輪様デザイン 前回投稿の終わりで私は、「80 億の人類・文化が繫栄するこの地球こそが『チャクラの惑星』に思えてくる、それぐらいチャクラ・デザインは人の世に満ち溢れている」と書いた。 では何故、円輪放射の車輪様デザインは、ここまで普遍的に人々を魅了し、その心の奥深くから繰り返し紡ぎ出されてくるのだろうか。 思うに、それはおそらく、私達がその生を営む天地大自然の中に、チャクラ・デザインがあまねく存在しているからではないだろうか。 それは第

          天地万象のチャクラ

          終章 コスミック・ダンス:人類普遍のチャクラ

          前回投稿はこちら ↓ この物語のメインテーマに関して、およそこれまで明らかになった事実関係とそれに基づく『仮説』については、前回投稿に至る流れの中でほぼ書き尽くしたかと思う。 ここから先は、その間個人的に思い巡らせてきたチャクラ存在にまつわる様々なトピックスについて書き綴りながら、エンディングへ向かって着地していきたい。 それは、インド棒術の回転技やチャクラ思想と直接関係が有るような、あるいは無いような、そんな微妙なラインを交錯する『とめどない連想イメージの流れ』であり

          終章 コスミック・ダンス:人類普遍のチャクラ

          インド棒術の回転技『バーラティア』

          前回の投稿はこちら ↓ ここまで、ともすれば全く影が薄くなってしまっていたが、この長いながい探求の道のり、そのそもそもの出発点は、あのテレビ番組でインド棒術の回転技を初めて眼にした時、直感的に「これは転法輪の棒術だ!」と閃いた事がきっかけだった。 その後、私の意識の焦点は完全に『チャクラ思想』にシフトしてしまい、棒術は本稿の文脈上も二の次になってしまっていたのだが、それでも旅の途上折に触れてこの回転技について考えて来た。 インド武術において特徴的な棒術の回転技。これまで

          インド棒術の回転技『バーラティア』