8つのステップで理解する! 初めての不動産投資

新築マンションや中古マンションの価格は上昇傾向を続けており、「下がるのを待っているのに全然下がらない」という声がよく耳に入るようになってきました。一時期、頻繁に出ていた暴落論やバブルの指摘なども次第に声が小さくなってきており、プロ・アマ含めてどこまで上昇を続けるかを見極めているというような状況です。

この記事では、初心者の方のために、不動産投資を始めるまでのプロセスを8つに分けて、それぞれのプロセスでおさえておきたいポイントを解説していきたいと思います。

STEP1
不動産投資に関する情報収集
まずは、不動産投資に関する正しい知識を身につけることが大切です。自分にあった不動産の投資スタイルや、現在の不動産相場の把握、マンションとアパートのどちらが良いか、新築と中古のどちらを買うか、ディベロッパーや不動産投資会社の特徴、定期的にチェックしたほうが良いサイトなどをチェックしましょう。下調べをせずに物件選びから入ってしまうと、仲介業者やディベロッパーを信じるしかなくなってしまいますので、言われるままに物件を高値づかみしてしまったり、年収や自己資金に対して大きすぎる融資額を受けてしまい返済に困難になったりと失敗するリスクが高くなってしまいます。

不動産投資の書籍であれば2冊~3冊、不動産セミナーであれば2-〜3社はチェックすることをおすすめします。なぜ書籍やセミナーを複数チェックしたほうが良いかというと、不動産業者がセールスの場として書籍やセミナーを利用していることが多いためです。その場合、自分たちのサービスを利用して欲しい、自分たちから物件を購入して欲しいということで、発信される情報も自分たちのサービスを勧める偏ったものになりがちなので、複数の情報源に触れて客観的に比較検討を行うことが大切です。複数の情報源に目を通すことで、得られる情報が立体的になり、信じて良い情報かどうかを判断しやすくなるというメリットがあります。

STEP2
エリアの選定(都心か地方か、将来の開発計画など)
不動産投資では、実は物件よりもエリアのほうが重要と言われています。どんなに良い物件でも、人口が少ない小さな町やアクセスが非常に悪い場所にあれば、入居してくれる方自体が少なくなってしまい、空室が発生してしまいます。逆に物件のグレードや設備などが周辺の物件に劣っていたとしても、都心の駅徒歩5分のような物件には入居者がつきますので、まずは失敗しないエリアを選び、そこに投資効率が最も良い物件を保有するというのが大まかな流れとなります。
エリアの選定基準としては、今後10年から20年の単位でエリアの人口が維持もしくは増加しそうか、売却を検討する場合は、それまでの間に再開発や公共事業などのプロジェクトが予定されているか、賃貸需要を近隣の大学や大企業、工場などに依存していないか、地震などが起こったとしても液状化や火災などの影響を受けにくいか、などといった点を考えていく必要があります。
マンションであれば都心がおすすめということは耳にしたことがあるかと思いますが、そのなかでも特に、大手町・虎ノ門・八重洲エリア、銀座エリア、日本橋・京橋エリア、渋谷・品川エリアあたりは、2040年頃まで再開発プロジェクトや公共事業が予定されているので、今後も成長が期待できるエリアと言われています。

STEP3
物件選び(新築か中古か、マンションかアパートか、現地視察)
エリアが決まったら、次に物件を検討していくフェーズとなります。物件選びだけで本が一冊かけてしまうほどの領域ではありますが、ここではよく検討される点を絞って取り上げたいと思います。
まずは、新築か中古かという論点については、新築は税金面での優遇や住宅に問題があったときの保証を10年間受けられるなどのメリットはありますが、利回りや収益性という意味では築年数が経って不動産価格が下落がゆるやかになる中古のほうが高いと言えるでしょう。ただし、融資面では新築のほうが評価が高く融資額が出やすいので、フルローンで不動産投資を始めたい方、年収水準に不安のある方や自己資金があまり用意できない方は新築を検討してみることをおすすめします。
また、区分マンションかアパート1棟かという論点については、年収が600万円程度を超えてくる方で、資産価値が値下がりしにくいことや長期的な家賃収入を重視したいという方には区分マンションがおすすめです。アパートは投資額が1億円前後になることが多いため、23区の中でも足立区・葛飾区・墨田区といった都心から少し離れたエリアの立地が多く、区分マンションと比べると空室リスクが高く、初心者には見極めが若干難しいためです。不動産知識が豊富な方や資金に余裕がある方、不動産投資を副業ではなく本業にしていきたいという方はアパート経営を検討していくと良いでしょう。アパート経営の会社については、以下で2社をご紹介していますので、まずは資料請求やセミナーで情報収集をしてみると良いでしょう。

なお、物件選びをしていると、不動産業者からの資料やウェブサイトの情報で分かったつもりになりがちですが、できるだけ時間を作って現地視察しておくことをおすすめします。不動産投資では、どうしても貸す側の気持ちで物件を選んでしまうことが多いのですが、大切なのは借りる側の気持ちをイメージすることです。駅までの距離は長いと感じないか、近くにコンビニや病院などがあるか、複数路線が使えるか、通勤の際に不便がないか、夜道が安全か、近隣がうるさくないか、マンション管理が行き届いているか、住みにくい間取りではないか、設備は十分かといった入居者の目線で実際に確認することで失敗するリスクを大幅にヘッジすることができます。

STEP4
収支シミュレーションの検討(自己資金、利回り、キャッシュフロー)
希望するエリアで良い物件が見つかった、ということであれば、次は収支シミュレーションを作成します。大手の不動産会社(ディベロッパーなど)であれば物件紹介と一緒に物件購入後の収支シミュレーションを出してくれるかと思います。ただ、この収支シミュレーションを盲目的に信じてはいけません。なぜなら、収支シミュレーションに本来含めるべき前提条件が入っていないケースがあるためです。
たとえば、多いのは定額の家賃収入とローン返済、登記などの初期費用、売却時の金額だけでシミュレーションが作られているケースです。このケースでは、次のような費用を考慮して収支シミュレーションを組み直す必要があります。

  • 家賃の下落率(新築から10年で5%~20%程度の下落)

  • 毎年の固定資産税など(築浅3000万円の物件でおよそ年8万円前後)

  • 確定申告の外注費(年3万円~4万円)

  • 退去時の原状回復費・修繕費(数年に1回:5万円~10万円)

  • エアコンや水回りの修繕費(5年~10年に1回:5万円~10万円)

  • 売却譲渡税(減価償却分が売却益として加算される)

  • 売却で仲介会社利用時の手数料(売却額3%+6万円)

たとえば、築浅、物件価格3000万円、賃料10万円、頭金100万円、ローン金利2.5%、家賃が10年間で5%下落、10年で入退去3回、10年後に購入金額と同額で売却できたとするケースを考えてみます。大まかな計算ではありますが、上記項目の費用を考慮した場合とそうでない場合で、以下のように合計300万円以上も費用が異なってくると考えられます。(物件があるエリア、建物と土地の割合、土地の持ち分などによって多少変動します)

  • 下落家賃総額:約30万円

  • 固定資産税:60万円前後

  • 確定申告の外注費:4万円×10年=40万円

  • 原状回復費:5万円×3回=15万円

  • エアコンなどの修繕費:10万円

  • 売却譲渡税:100万円~120万円前後

  • 売却額3000万円×3%+6万円=96万円

不動産会社からのシミュレーションを鵜呑みにせず、Excelなどを使って自分でシミュレーションを作成してみることで、物件選びの目を養うことができますので、ぜひ一度試してみて下さい。

STEP5
不動産投資ローンの事前審査(融資額、融資期間、金利交渉)
物件の購入意思がかたまってきたら、不動産投資ローンの審査を受けて融資が下りるかの確認となります。大手ディベロッパーの場合は、提携金融会社が10社から20社ほどありますので、そのなかから金利や支払機関などの条件が良いところに申し込んでいく流れとなります。
現在の相場としては、マンション投資のほうで金利は2.0%~2.5%、支払期間は30年から35年、場合によっては45年程度を想定しておけばよいかと思います。上場企業の勤務者や勤務年数が3年以上の方、頭金を15%以上入れることができる人、30代で年収が600万円を超えている方などは返済能力が高いと評価され、もう少し良い条件で借り入れをおこすことができる可能性があります。逆に、不動産投資ローン以外に多額の借り入れ(クルマのローン、カードローン、住宅ローンなど)やクレジットカードの不払い履歴、自営業など毎月の収入が不安定な職業の場合には、高い金利となったり、融資期間が短くなったりするなど融資条件が厳しくなる恐れもありますので、まずは一度確認してみると良いでしょう。
アパート経営のほうでは金利は3.0%~4.5%、支払期間は20年から30年程度、中古アパートの場合はフルローンがつかない可能性が高いということを想定しておくと良いでしょう。アパートは初期費用として500万円~1000万円弱の支出を見ておく必要がありますので、自己資金には余裕をもっておくことをおすすめします。

STEP6
売り手との交渉(物件価格、支払い条件、引渡し時期、物件申込み)
ある程度の収支の見通しが立ったら、売り手と物件に関する条件を交渉していきましょう。初期に提示される価格や条件は売り手の希望を反映したものとなりますので、売り手が納得しさえすれば条件を変更してもらうことが可能です。この交渉で大事なことは、買いたい姿勢を見せすぎないことと、交渉の着地点を想像しておくことです。たとえば物件価格を3%値引きしてもらいたい場合、「少し割高に感じているので、5%値引きをしてもらえれば即決したいと思います」などと伝えておくことで、相手からは「5%の値引きは難しいが、3%までなら値引きできる」という形で回答が返ってくることが予想されます。なお、5%以上の値引きでもOKという返事が返ってくるかもしれませんが、値引きで提示された価格が自分のほうで適切と考えていた物件価格とのギャップが大きかった場合には、相手が「売りたい」姿勢が強い物件と考えられますので、物件に何か問題がないか(自分が見落としていることがないか)を改めて確認することが大切です。

「交渉なんてしたことがない」という方も多いかと思いますが、値引きの交渉をするのとしないのとでは、最終的な損益が大きく異なってきます。特に、新築マンションではディベロッパーの利益が物件価格に上乗せされていますので、交渉余地が大きくあります。また、決算月などの時期や第1期の販売で売れ行きが芳しくなかったケースでは、ディベロッパー側のほうで「物件価格を下げてでも売上を上げたい」という心理が働きますので、価格交渉も有利に運ぶケースがあります。新築マンションの価格のうち、ディベロッパーの利益にあたる割合が10%~15%と言われていますので、たとえば3000万円の新築マンションであれば100万円から150万円程度(ディベロッパー利益の半分程度)の値引き交渉余地がある計算となります。

値引き交渉はやって損がないものですので、「値引きを要求するのはなんだか恥ずかしい」「相手に悪いのでは?」などと思わずに、希望金額をどんどん伝えるようにしてみましょう。うまくいけば、1年間の家賃収入分の金額を浮かせることができる可能性がありますし、価格が下がれば利回りの改善やローン利息の軽減につながりますので、不動産投資で失敗するリスクを大きく引き下げることができます。「いかに割安に買うか」「高値づかみをしないですむか」ということを念頭に入れて、交渉に臨むと良いでしょう。

STEP7
契約手続き(ローン特約、契約解除、違約金・賠償範囲、瑕疵担保責任など)
条件面で折り合いがついたら売買契約となります。契約書には、不動産投資ローンの融資が下りなかった時に備えて「ローン特約」というものを盛り込んでおくのが一般的です。ローン特約がないとローンの審査がNGだった際にも購入をしなければならなくなり、買い手に非常に不利な契約内容となってしまいます。また、契約履行までの間に何らかの事情で解約をする場合、解約手付金(売買金額の5%~10%程度)を支払うことで契約解除をすることができる「手付解除」という条項もあります。ただ、手付解除は大きな損失となってしまうため、解除は出来る限りしなくてすむように事前に準備をしておいたほうが良いでしょう。

その他、購入後に物件に何か問題が起こった際に修繕などの補償をする「瑕疵担保責任」という項目も重要です。新築物件の場合であれば、売主に10年間の瑕疵担保責任がついていることが多いですが、中古マンションの場合はケース・バイ・ケースとなります。個人間の取引の場合は、瑕疵担保責任が引渡し後1ヶ月から3ヶ月の保証となっていることも多いですが、契約書内の「売主の瑕疵担保責任は免除される」という文言が入っていると、あとで瑕疵担保責任を請求することができなくなってしまいますので注意が必要です。こういった契約書関連のやり取りに不安を覚える方は、契約書チェックを司法書士や弁護士事務所に別途依頼すると良いでしょう。

STEP8
決済・引渡し・登記手続き(不動産登記変更)
最後は、買主と売主の間で資金決済を行い、物件の引渡しと登記手続きの流れとなります。決済は、金融機関に集まり、手付金以外の残代金を買主が振込み、売主が着金を確認するという流れが多いです。

引渡しの際には、契約記載の設備の状況などをしっかりと確認し、問題がなければ鍵の引渡しとなります。遠方だと物件を見ずに契約ということもありますが、契約の前にしっかりと物件や設備などの確認をしておかないと、契約後に「話が違う」と声を上げても後の祭りということになりかねませんので、できる限り自分の目で確認することをおすすめします。

登記手続きは司法書士の方にお任せするケースが多いと思いますが、手続きにあたって実印・印鑑証明証・住民票が必要となりますので、事前に準備をしておくと良いでしょう。


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