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国民審査ってしってる?

こんにちは。カラフルデモクラシーの松浦です。

菅政権が1年程で幕を閉じ、岸田新政権が発足しました!そして、先日衆議院が解散され、10月31日には衆議院議員選挙が行われます。

ところで皆さん、衆議院選挙と同時に「国民審査」というものが行われるのをしっていますか?

衆院選の話題は色々なところで出ていますが、国民審査について詳しく知っているよ!という方は意外と少ないのではないでしょうか?

この記事ではその「国民審査」について解説してみたいと思います。

裁判官を私たちが裁く機会?!

「国民審査」。それは簡単に言うと、最高裁判所の裁判官が適任かどうかを国民がジャッジする機会です。

 最高裁判所は日本の裁判所のトップで、全部で15人の裁判官からなります。最高裁の裁判官は内閣によって指名されますが、指名後初めての衆議院選挙の時に国民審査を受けることになっています。国民審査で有効投票数の過半数の国民に辞めるよう意思表示された裁判官はやめなくてはいけないのです!ですが、実際には国民審査で辞めさせられた裁判官は、今までに1人もいません。国民の関心も低く、たいてい辞めさせたいと意思表示をする人は全体の10%にもみたないのです。

 実際の投票では、投票用紙にずらりと並んだ裁判官の名前のうち、辞めさせたいと思う裁判官の上にバツ印をつける仕組みになっています。

国民審査はなんであるの?

 最高裁判所の裁判官は司法の最終判断を担当します。市民間のいざこざはもちろんの事、時には市民と国の間に起こったいざこざに関しても公平公正な立場から判断することが求められるのです。国の権力が不当に国民の権利を侵害した場合には、法に従って「それはいかん!」とただすのが裁判所の大きな役割です。従って、国民の権利が不当に侵害されないようにする最後の砦が裁判所ですから、彼らが公正公平な立場から裁判を行っているか、私たち国民はきちんとチェックする必要があるでしょう。それが、「国民審査」です。

最高裁判所の裁判官は法律家だけじゃない??

 地方裁判所、高等裁判所の裁判官は、司法試験を通った法曹資格を持つ裁判官しかいませんが、最高裁判所の裁判官には法曹資格を持っていない人を任命することもできます。裁判官、弁護士、検察官だけでなく、官僚や法学者などからも選ばれています。40歳以上の人から選ぶという法律上の規定があるのですが、たいてい60代で就任し、定年は70歳と定められています。

適任かどうかって、どうやって判断したらいいの?

 皆さんの中には、政治家を選ぶのでさえよくわからなくて大変なのに、最高裁の裁判官なんて誰が誰だかわからない!という人も多いと思います。そこでここでは、最高裁判所のHPを参考に、それぞれのお人柄と、今回国民審査の対象となる裁判官が関わった判決の中から「選択的夫婦別姓」に関わる裁判でそれぞれがどのような意見を述べたかを紹介したいと思います。

おまけ!選択的夫婦別姓訴訟ってなんだ?
今の日本の法律では、結婚するときに苗字を夫か妻、どちらかの苗字に合わせないといけないことになっています。このような制度を作っている国は、なんと世界で日本だけのようです。その制度を違和感なく使っている人や、むしろ苗字が変わる事を結婚した証として喜んで受け入る人が多い一方で、結婚はしたいがお互い自分の姓に思い入れがあり変えたくない人、または苗字を変えてしまう事によって今まで仕事で積み上げてきたネームバリューがふいになってしまうため、変えたくないと考える人などもいます。そうした人たちが、別姓のままでは結婚できないのは、憲法24条の保障する「結婚の自由」や14条の保障する「法の下の平等」に反するとして国を訴えたのが、選択的夫婦別姓訴訟です。

 初めにこの裁判の判決が最高裁で出されたのは2015年の事でした。その判決で最高裁は、夫婦同姓制度は「社会に定着しており、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」として、選択的夫婦別姓を望む人たちの訴えを却下しました。

 その後、別の人たちが再び選択的夫婦別姓を求める裁判を起こし、その判決が今年の6月に最高裁が判決を出しました。ここでも、2015年判決の趣旨を踏襲して訴えを棄却しています。

 しかし、最高裁の判決は多数決で決まるため、多数意見とは別に選択的夫婦別姓を認めるべきだ、という反対意見を書いた裁判官もいます!!

深山卓也さん

FireShot Capture 175 - 深山卓也 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部を卒業し、その後裁判官としてのキャリアを積んでこられた方です。2018年に最高裁判所の裁判官に任命されました。

 裁判官としての心構えは、「最高裁判所に係属する事件は,難しい法律問題や価値判断の分かれる論点を含んでいるために判断の難しいものが少なくありませんが,それぞれの事件における適正妥当な判断,とりわけ,法律審としての適正妥当な法の解釈及び適用を見出すことに力を尽くしたいと考えています。」とのことです。

 最近印象に残った本は「「サピエンス全史(上・下) 文明の構造と人類の幸福」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)、趣味は料理で、和、洋、中華、エスニックと分野を問わず日常的に料理をなさるとか・・・。

 選択的夫婦別姓に関しては多数意見を支持しました。しかし、深山裁判官は補足意見を他の裁判官と共同で書いています。その中では選択的夫婦別姓制度を求める意見にも理解をしめしています。しかし、それは立法府である国会が決める事であり、裁判所が現行法が違憲であると言い切る事はできないとして、結論としては多数意見を支持しました。

岡正晶さん

FireShot Capture 176 - 岡正晶 - 裁判所 - www.courts.go.jp


 東京大学法学部を卒業し、弁護士として活動されてきました。第一東京弁護士会会長などをお勤めになった後、2021年9月に最高裁判所長官に任命され今回国民審査の対象となります。

 裁判官としての信条は「日本国憲法76条3項の「すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される」を常に念頭に置き,根本原理とします。そして,従うべき「良心」の充実・向上に日々努め,「独立」はするが独善に陥らないよう常に自戒し,「職権」行使に当たっては「記録・資料をよく読み,自分の頭でよく考え,わかりやすく自分の意見を言い,同僚裁判官と多面的で深みのある熟議を尽くす」ことを信条に,一つ一つの事件に全力で取り組みます。また同憲法81条の「最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」を心に刻み,この憲法上の職責を全うします。」だそうです。

 印象に残ったのは、新井紀子著「AI vs.教科書が読めない子どもたち」など。趣味は山歩きとチューリップや菊などの花栽培だとか・・・。

 9月に就任したばかりなのでまだ重要な判例には関わっていません。

宇賀克也さん

FireShot Capture 177 - 宇賀克也 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学を卒業後、東京大学、ハーバード大学などで教授を務められた後、2019年に最高裁判所裁判官に就任された学者出身の裁判官です。

 裁判官としての心構えは「40年を超える研究者生活の時代は,できる限り多くの判決・決定や著書・論文等の文献を読み,それを通じて自分の考えをまとめ,論文等でそれを公表してまいりました。最高裁判事としては,個々の事件の資料を丹念に読み,他の裁判官の御意見もよく伺いつつ,個々の事件についての自分の考えをまとめていくことになりますが,一つ一つの事件に公正・中立の立場から真摯に取り組み,妥当な結論を導くことができるよう,微力ながら全力を尽くしたいと存じます。」だそうです。

 印象に残った本は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」「坂の上の雲」、趣味は自然の中を散策することだとか。

 選択的夫婦別姓訴訟では、現行民法は憲法24条に反しており違憲だとの反対意見を書きました。生来の姓を変えることがアイデンティティの喪失につながるとの理由から姓を変える事を理由に対し、夫婦同姓制度を強要することは、人格的利益が傷つけられることを前提に婚姻せよというのに等しく、当事者の意志に反して夫婦同姓にした上でなければ婚姻できないという現行制度は自由で平等な制度とは言えない。憲法24条の趣旨に反すると結論づけました。

堺徹さん

FireShot Capture 178 - 堺徹 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部卒業後、検察官に任官。東京高検検事長などをお勤めになった後、今年の9月3日に最高裁判所裁判官に就任されました。

 裁判官としての心構えは「我が国を取り巻く内外の社会環境の変化には著しいものがあり,その影響を受けて裁判所に持ち込まれる事件は複雑困難化,多様化していますから,適正妥当な判断を下すためには,新しいことを積極的に学んでいくことが不可欠だと思います。国民から信頼される司法を実現していくことができるよう,学び続ける意識と謙虚な姿勢で誠心誠意努めていきたいと考えています。」

 最近印象に残った本はカミュの「ペスト」で、好きなことは、ウォーキングと美術館などに出かける事だそうです。

 今年の9月に就任されたばかりですので、まだ重要判例には関わっていません。

林道晴さん

FireShot Capture 179 - 林道晴 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部卒業後、裁判官として長年働いてこられました。東京高裁長官を経て2019年に最高裁判所長官に就任されました。

 裁判官としての心構えは「裁判で取り上げる紛争や事件は,一つとして同じものはないので,多角的な観点からアプローチし,その背景事情や経緯などから,紛争や事件の実態や真相を十分把握した上で,少しでもそれに適合する解決や判断をするよう努力したいと考えています。そのために,普段から良い意味での好奇心を持って種々の事象に関心を向けるようにしています。」だそうです。

 最近印象に残った本は、清水克行「喧嘩両成敗の誕生」など。趣味は長男とのスポーツや映画鑑賞、読書などだそう。

 選択的夫婦別姓訴訟では多数意見を支持しました。

岡村和美さん

FireShot Capture 180 - 岡村和美 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 早稲田大学法学部卒業後、弁護士登録。ニューヨーク州の弁護士資格も修得しています。その後検察官に転身。東京高検検事などを務めたのち、消費者庁長官などのお役人の仕事を経て、2019年に最高裁判所長官に就任されました。

 裁判官としての心構えは「一つ一つの事件に誠実に取り組み,公正な裁判のために力を尽くしたいと考えております。
価値観が多様化した現代の社会では,最高裁判所の判断が求められる事件は,複雑で解決困難なものになっていると感じます。広い視野での問題把握・多角的な検証等を心がけることで,より深く論点を検討できるよう,引き続き,研鑽を積んでまいります。」

 最近印象に残った本は「朔総漫筆」(アララギ歌人の清水房雄遺稿集)、趣味は美術館・博物館めぐりだだそうです。

 選択的夫婦別姓訴訟では多数意見を支持したうえで深山裁判官らと共に補足意見を提出しました。

三浦守さん

FireShot Capture 181 - 三浦守 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部卒業後検察官に任官。大阪高検検事長などを経て2018年に最高裁判所の裁判官に就任されました。

 裁判官としての心構えは「中立・公正の立場から紛争の適正妥当な解決を図るという司法の役割を果たすため,与えられた職務に対し,誠心誠意全力で取り組みたいと考えています。近年,社会が急速に変化する中で,社会における権利利益のあり様も複雑化し,価値観も多様化していますが,様々な視点から十分な審理・判断を行うことができるよう,自らも研鑽を積みたいと考えています。一つ一つの事件について,常に謙虚に,当事者の意見に耳を傾け,自らの良心に問いかけながら,考えを深めたいと思います。」だそうです。

 好きなことは、今まで転勤で滞在した様々な場所で、その土地の歴史や自然を知り、地元の人たちと関わることだそうです。

 選択的夫婦別姓訴訟では単独で反対意見を書いています。家族に関わる価値観が多様化する中で、伝統的な形だからといって例外を一切許容しないのは合理的な区別とは言えないとして、現行民法は憲法24条に反すると結論づけました。

草野耕一さん

FireShot Capture 182 - 草野耕一 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部を卒業後、弁護士として活動。東京大学や慶應義塾大学、ハーバード大学で客員教授なども歴任した後、2019年に最高裁判所長官に就任されました。

 裁判官としての心構えは「法令の解釈が異なれば人々の行動が異なり,人々の行動が異なれば社会のありようが変わります。この点を踏まえて,法令を適正に解釈することを通じて豊かで公正で寛容な社会を形成すべく,微力ながら全力で職務にあたりたいと考えています。」だそうです。

 最近印象に残った本は、村上春樹「ノルウェーの森」など。趣味は勉強だそうで、最近はフランス語にも挑戦しているそうです。

 選択的夫婦別姓訴訟では反対意見を書きました。導入することで夫婦別姓を希望する人たちの福利は向上するため認めるべきだとしたうえで、別姓の夫婦の下に生まれた子の福利について検討しています。よくある選択的夫婦別姓制度に対する反対意見として、別姓夫婦の下に生まれた子供がいじめられるのでは?という意見があるのです。草野裁判官は、こうした福利の減少は、夫婦同姓を標準とする社会を前提としたものであり、一定数別姓の夫婦が輩出されれば解決する問題だと述べています。従って選択制導入によって失われる福利よりも増加する福利の方が大きく、また個人の尊厳を害している現行制度は改められるべきであるとの観点から、違憲判決を書きました。

渡邊恵理子さん

FireShot Capture 183 - 渡邉惠理子 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東北大学法学部卒業後、弁護士登録。慶應義塾大学教授や政府機関の監査委員などをお勤めになった後、2021年7月に最高裁判所長官に任命されました。

 裁判官としての心構えは「裁判を通じて具体的な争訟(事案)について公平・妥当な判断を示すことがまず重要であると考えています。また,同時に,最高裁の判断がその後の事案において先例としてどのように使われていくのかということも想定して,法が正しく機能するように最善の努力をしたいと考えています。」だそうです。

 印象に残った本は、塩野七生著「ローマ人の物語」など。趣味は落語を聞く事や中島みゆきの歌を聞く事、読書などだそうです。

 今年7月に就任したばかりで、関わった重要判例はありません。

安浪亮介さん

FireShot Capture 184 - 安浪亮介 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学法学部卒業後、裁判官を長年お勤めになりました。大阪高裁長官などを経て、今年の7月に最高裁判所判事に就任されました。

 裁判官としての心構えは「一つ一つの事件について,誠実に真正面から向き合って判断することが大切だと思っています。その際には虚心坦懐にじっくり記録を読み,多くの人の意見を謙虚に聞くことが大切だと思います。」だそうです。

 印象に残った本は司馬遼太郎の全作品。趣味は健康維持のための運動、宝塚歌劇団の観劇や、文楽の鑑賞だそうです。

 今年の7月に就任されたばかりなので、関わった重要判例はありません。

長嶺安政さん

FireShot Capture 185 - 長嶺安政 - 裁判所 - www.courts.go.jp

 東京大学教養学部卒業後、外務省などで長年仕事をされてきた官僚出身の最高裁裁判官です。

 裁判官としての心構えは「一つ一つの事件の背景を正確に把握し,真摯に事件と向き合い,適切な判断に到達することができるよう精一杯努めたいと思います。これまでの行政官,外交官としての経験を生かしつつ,謙虚に研さんを積みながら,この重責を果たしていきたいと思います。」だそうです。

 印象に残った本は、ジョン・ルカレやイアン・マキューアンの小説など。趣味は読書や音楽・演劇鑑賞、旅行やテニスだそうです。

 選択的夫婦別姓訴訟では多数意見を支持したうえで、深山裁判官らと共に補足意見をのべました。


あなたはバツにする?マルにする?

 いかがでしたか?こう書かれてもよくわからない!という方も多いと思います。私もとても判断が難しいな、と感じています。しかし、だからといってこの制度がいらない!という事にはなりません。もしも、最高裁が暴走を始めたら、おかしな判断を下し始めたら、私たちの生活は大変なことになってしまいます。

 ですから、判断が難しいけれども、この機会をしっかり使って裁判官をジャッジすることが大事かな、と思います。

 ですから皆さん、選挙と合わせて、国民審査にも参加しましょう!

                カラフルデモクラシー 松浦 薫


参考資料


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