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最近読んだ本(逃げていった5月分)

「2月は逃げる、3月は去る」なんていうけれど、4月も5月も、とんでもなく早足で逃げていった。もうゴールデンウィークがのっけからリズムを狂わせにかかっていたので、どんくさい私にはどうしようもない。

そんなこんなで、5月に読んだ本たち。

女性作家、エッセイ多めの5月でした。

『むらさきのスカートの女』今村夏子

おもしろいのひと言。奇妙なスタートに心を持って行かれたと思ったら、そのままラストまで突っ走ってしまった。夜中の1時に読み終えた瞬間、なんとも言えない脱力感に襲われた。

人によってとらえ方が大きく異なる作品だろうと思う。私は孤独をうつしたホラー的要素を強く感じた。

『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』ジェーン・スー

今をときめく女性13人へのインタビューエッセイを書籍化したもの。ご本人たちのコメントのあいだに筆者(お姉さまとお呼びしたい……!)の見解をはさみながら進む構成になっている。これって書くのがものすごく難しい形式のインタビュー記事なのでは、と思うけれど、どうなんだろう。

語彙も表現力も豊かで、それぞれの女性の魅力や葛藤、歩いてきた道を「書ききっている」という印象を受けた。すごいなぁ。

『夜中の薔薇』向田邦子

向田邦子が大好きだ。ドライに思える筆致に人間らしさや泥臭さ、こまやかな情がにじむところがたまらなく好き。

そして時折、ゾッとするほど示唆に富むフレーズが飛びこんでくる。「牛の首」なんかがそうだ。うかうか読んでいられないのが、私にとって最大の魅力。

あとは「楠」という作品が心に残った。構成がしっかりしていて、自身の育ちを踏まえたうえで体験談をどすんと織りこんである。エッセイってこういうのだよなぁ、とつくづく思う。

『女のいない男たち』村上春樹

映画『ドライブ・マイ・カー』をとても好きになったので、原作も読んでおきたいと思い、手に取った。あ! あの描写は映画オリジナルなのね、とか、発見がたくさん。

淡々と進む物語のなかに、愛する者を失った人の心がくっきり浮かび上がるのが印象的だった。人生はドラスティックなことばかりで構成されているわけじゃない。でも悲しみはちゃっかりいすわる。そんなことを考えた。

『本を読んだら散歩に行こう』村井理子

実は、村井理子作品ほほとんど読んでいる。「あー、わかるわかる!」の連続でどんどん読み進められる。さんづけで呼びかけたい作家、ナンバーワンだ。でも、こちらは重いテーマの話もあり、どっしりと読みごたえがあった。

紹介される本はどれも読みたくなってしまい、いろいろと購入した。

あまりにも没入しすぎて、読み終えたあと「あれ、うちの双子も男児だったっけ?」なんて思ってしまった(村井家のお子さんは双子の男の子)。我が家の双子は女児だったわ、とハッとするなど。

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5月は忙しかったこともあり、(自分にとって)読みやすい本を多く読んだ。仕事関係で読まなければならない場合を除いて、読書の醍醐味はやはり「うまいなぁ、すごいなぁ、おもしろいなぁ」と感嘆を重ねていく瞬間にある。

6月はなにを読もうかな。

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