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【404 not found】[感電]と[MIU404]を考察する【ロス】

数年ぶりにどっぷりハマったドラマが終わってしまった。

オタク用語で言うと、沼に落ちた。「沼」という漢字の意味に「趣味や好きな人・物に夢中になる様。類語にはオタク、ハマる、熱中などがある」も追加してもらいたい。

「感電」を語るにはドラマ「MIU404」は不可欠だし、ドラマ「MIU404」を語るには「感電」は不可欠であるから、今回はドラマと主題歌を同時に考察する。

※この記事は全て考察です
※この作品を愛するあまりに長文になりました

「星野源が主題歌を担当すればよかったのに」

と米津玄師が言っていた。

"源さんが主演ならファンも喜ぶし、源さんが主題歌をすればいいと思ってたから、源さんではなく自分が主題歌を担当することには少しプレッシャーを感じた”と話していたが、私はそうは思わない。

「MIU404」の星野源は、俳優でもミュージシャンでもなく、第4機動捜査隊刑事の志摩一未だ。

もちろん「逃げるは恥だが役に立つ」と同じく星野源が主演と主題歌を担当したとしても1ファンとして嬉しいが、刑事ドラマである「MIU404」では俳優とミュージシャンをはっきり分け、綾野剛とも星野源とも親交があり、野木亜紀子先生脚本ドラマという共通点を持つ米津玄師を抜擢したことはベストな選択で、かつ大成功だった。

そして、この3人に共通するもの、バンド。

星野源は「SAKEROCK」というバンドで活動していた経験を持ち、ソロで音楽活動を再開すれば「恋」で大ヒットを巻き起こした。

綾野剛は山田孝之と内田朝陽の3人からなる「THE XXXXXX(ザ・シックス)」でバンド活動をしていたことは記憶に新しく、TK(凛として時雨)との対談で駆け出しの頃は映画の音楽監督を努めた経験も話している。

米津玄師も音楽を始めたきっかけとして最初にバンドを組んだと随所で語っているし、ライブは常に4人のバンドセットで行われている。

「感電」を「MIU404」視点で考察する

以前書いた記事はディスクレビューがメインだったため考察は軽く書いたのだが、実際に書いて改めて「感電」を「MIU404」と照らし合わせて、しっかり考察したいと思った。

そして、米津玄師が見た「MIU404」はどんな世界だったのかを、知りたかった。

米津玄師のインタビューを読んで考察。

1、2話の脚本を読ませてもらって、そこからいろんなことを連想して作っていきました。最初は「犬のおまわりさん」というタイトルで曲を作ろうと思っていたんです。そっくりそのままそのタイトルでもいいかなと考えていたんですけど、「犬のおまわりさん」という曲はもうあるし同じ曲名でどうするんだと思い直して、そこからいろいろ逡巡して、最終的に「感電」というタイトルになりました。
──1番には犬の鳴き声、2番には猫の鳴き声がサンプリングされていますが、あれは味付けというより、むしろ根幹の部分だったと。
そうですね。「困っちゃったワンワンワン」「迷い込んだニャンニャンニャン」のところが最初に生まれた部分だったかもしれないです。

刑事ドラマと聞いて思い浮かべたのが犬のおまわりさんとは意外だった。

私もこのインタビュアーさんと同じく、犬と猫の鳴き声は後付けだと思っていた。犬のように忠実で責任感の強い志摩と、猫のように本能のまま動くがどこか憎めない伊吹を表しているのだと思っていた。

そしてこちらの星野源と綾野剛のインタビューでは、伊吹と志摩視点の感電の感想が綴られている。

― 「感電」の感想を聞かせて下さい。
星野:詞も含めてものすごく『MIU404』の世界観を大事にしてくれたというか、ドラマで流れることをすごく意識して作られている曲だなと思いました。
タイアップだから自分の宣伝のために新曲をとりあえず提供しようとかではなく、主演の2人の人物像や、物語を踏まえた歌詞、音の世界観を感じました。(一部抜粋)
綾野:伊吹と志摩が動いてるところをここまで想像してくれる主題歌は、もう出てこないと思います。
彼が1話と2話の台本を読んだと連絡をくれて「めちゃくちゃ面白かった!これは最高の曲書くよ」と言ってくれて、だから志摩と伊吹が動いている風にしか思えないですね。歌詞もそうだし、すごくキャッチーな部分と時に深刻な部分がすごくアンサンブルされて、本当に映像の中で流れて完成している。痺れますよね。(一部抜粋)

歌詞と照らし合わせて答え合わせをしよう。

”よう相棒 もう一丁 漫画みたいな喧嘩しようよ
酒落になんないくらいのやつを お試しで” 
”お前がどっかに消えた朝より
こんな夜の方が まだましさ
”愛し合う様に 喧嘩しようぜ
遺る瀬無さ引っさげて”

登場人物は、どう考えても志摩と伊吹だ。

6話で志摩の元相棒である香坂が自宅マンションから転落死したことを伊吹から伝えられた回、「MIU404」を見てしまったからに「お前がどっかに消えた朝」は志摩視点の香坂のことにしか聞こえず、「こんな夜の方が まだましさ」も志摩の心情にしか読み取れない。

「遺る瀬無さ引っさげて」も相棒を亡くして刑事を続ける志摩の本心だと思ったのは、変わらない。

たった一瞬の このきらめきを
食べ尽くそう二人で くたばるまで
そして幸運を 僕らに祈りを
まだ行こう 誰も追いつけない くらいのスピードで

「二人」は志摩と伊吹、「僕ら」は警察である自分ら、「幸運を 僕らに祈りを」は事件解決のために命を掛ける刑事が生きることを願うこと、「スピード」は足の速さが武器である伊吹であったり、緊急事態に駆けつける警察車両を連想させる。

「くたばるまで」ではあるセリフが脳裏をよぎる。

10話での伊吹のセリフだ。

”なあ志摩、俺たちが定年まで刑事をやるとして、
誰かを助けた数と助けられなかった数、どっちが多いんだろうなあ。
もしかすると、助けられなかった方が、遥かに多い”

「刑事をやめるまで、刑事として人生を終える役目がくるまでの期間」という意味をこの4文字に凝縮させたのだと思うと、言葉選びのセンスに鳥肌が止まらない。

転がした車窓と情景

放送開始前の第1話での予告でもあったが、煽り運転の車を止めるべく、早速警察車両を破壊するシーン。
米津玄師が「1.2話の脚本を読んでから作った」と話しているので、ビンゴの可能性が高い。

”真実も 道徳も 動作しないイカれた夜でも”
”正論と 暴論の 分類さえ出来やしない街を”

ここでの夜も街も、舞台の東京だと思う。

肺に睡蓮 

綾野剛主演映画「シャニダールの花」は女性の肺に睡蓮が咲いてしまう奇妙な病気を植物研究者が研究するストーリーだ。

つまり、綾野剛のこと。

遠くのサイレン

パトカーのサイレンだと思いきや、星野源の楽曲「FamilyName」に「救急車のサイレン」というフレーズがある。

つまり、星野源のこと。

響きあう境界線

響きあう=出会うを意味するのでは?

つまり、二人のこと。

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綾野剛と星野源を間接的に表現しただけでなく、もうひとつ私が気になる点をもう少し深く読みたい。

睡蓮の花言葉。

ちなみにフランス作家のボリス・ヴィアン作「日々の泡(日本語タイトル:うたかたの日々)」は、結婚直後に妻が肺に睡蓮が咲いてしまう病気にかかってしまう青春小説だ。

花言葉は色や国によって様々な意味を持つが、基本的にはロマンチックな意味と恐怖な意味の2面性を持つ。

睡蓮の花言葉
ロマンチックな意味:「清純な心」「信仰」「清浄」「信頼」
怖い意味:「冷淡」「終わった愛」「滅亡」

この中でも引っかかるのは「滅亡」と「信頼」

「滅亡」は刑事として悪者を撲滅させるという意味、「信頼」は第2話ではバディを組んだばかりで相棒に心を開かない志摩に言った車中での伊吹のセリフを思い出す。

"志摩ちゃんも俺のこと信じてくれていいんだぜ?"

どうしてだろう、花言葉だけでは一切思い浮かばないのに、「感電」の歌詞になると警察に関するキーワードが連想してしまうのは。

何より恐ろしいのは綾野剛と星野源の二人を華麗に表現した上に「スイレン」と「サイレン」で韻を踏んでいる。音楽的にも隙がない。

米津玄師の作曲能力はおろか、作詞能力も底が見えない。

それは心臓を 刹那に揺らすもの
追いかけた途端に 見失っちゃうの

最初はこの歌詞は米津自身が見た景色だと思っていたが、「MIU404」を見進めるうちにそれだけでない気がしてきた。

9話で桔梗隊長が預かっている羽野麦ことハムちゃんを狙っていたエトリを見つけたが、最終的には車で逃走中、ドローンの墜落による白昼の爆発事故により死亡、いや殺害された。

同じく9話ではいたずら通報の容疑者である行方不明だった成川をようやく逮捕。羽野麦を呼び出したこと、違法薬物のドーナツEPを売っていたこと、警察を目の前にして素直に認めた。

やっと逃走中の犯人を捕まえた。だがしかし、その裏にはさらに黒幕がいた。

顔が見えない関西弁を話す謎の男、菅田将暉演じるクズを見捨てるの久住(クズミ)

追いかけても、捕まえても、まだ奥に、裏に、黒い人間がいたのだ。

お前はどうしたい? 返事はいらない

この最後のメッセージ性はどのフレーズよりも強く、どっしり胸に残る。

志摩のセリフにも聞こえるし、米津自身のメッセージとも読み取れる。

10話でようやくYouTuber・Recを通して志摩と伊吹が久住に間接的に接触。

直後、都内数カ所での爆発テロのフェイクの通報、メロンパン号で向かうと緊急通報が入り、右へ行けば久住、犯人逮捕への一歩、左へ行けば病院、爆発現場、の分岐点に立たされた。

"なあ志摩ちゃん、死んだ奴には勝てないって言ってたけどそれ違うよ。生きてりゃ何回でも勝つチャンスがある"

 "了解、相棒"

志摩はハンドルを左に回した。

久住からすれば、作戦は成功した。

志摩と伊吹は、久住の被害者をこれ以上増やさないようにすることでも、久住と言う卑怯な凶悪犯を逃したのではなく、一般市民の命を守る方を選んだのだ。

「お前はどうしたい?」とこの分岐で同時に志摩が伊吹に、伊吹が志摩に問いかけているように聞こえる。

「返事はいらない」けど、2人が出した答えは同じだった。

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もう1つの意味を考察したい。

伊吹は志摩に「刑事やめたりしないよな?」と何度か確認した。

伊吹の「刑事やめたりしないよな?」は、恋人同士の「私のこと好き?」と同じ意味合いだと思っている。

志摩は冷静さと着眼点の鋭さと頭の回転の速さを持っている。
伊吹は抜群の運動神経と野生の感の鋭さと足の速さを持っている。

自分にないものをお互いが持っていて、お互いの長所を最大限に活用して事件に尽力している。

志摩も伊吹も、きっと最高のバディだと思っているのだと思う。

最終回で「刑事やめたりしないよな?」の問いに答える間も無く、 舞台は2019年から2020年になる。

車中にいたのは運転席に志摩、助手席に伊吹。

2人とも、刑事を続けていた。

バディを組んだ当初はどうしても氷を溶かしたい太陽と絶対に解けない氷の絶壁だった2人が、2020年の志摩と伊吹の間には雪解け水のように柔らかい空気が流れていた。

あのシーンで伊吹が例え「返事はいらない」と言っても、志摩はキッパリ「やめない」と言うと思う。

0.スタート

ここからは米津玄師の「感電」から離れて、ドラマに関する話を。

綾野剛が凛として時雨のTKとのインタビューで「クリエイターは0から1、演者は1から、この0と1の差は大きい」と話していたことは印象的だ。

2020年、私たちはコロナウイルスの影響でほとんどをリセットした。

コロナで失ったものや延期になったもの、人と会う時間、命、仕事、旅行、イベント、善と悪の区別、オリンピック。

最終回11話ののサブタイトルが「ゼロ」。

スイッチで間違えた方へ進んでしまった人たちが再生する意味も含めればリセットの0、「終わりは始まり」を意味するかもしれない。

1.SNSの拡散力

「みんなやってるから、匿名だしバレないと思った」と誹謗中傷をした人間の言い訳はどれも聞き苦しい。

最終回目前、都内爆破テロのフェイクニュースと虚偽通報に振り回され、志摩と伊吹が現場に到着すれば、無傷な病院。そして同時にSNSでは都内爆破テロのトレンド入りと、愛車のメロンパン号がテロ首謀者とデマの拡散が止まらない。

確かに警視庁宛に爆破予告のメールが入ったが、実際に何も出来ない。

何も起きていないのに「爆発テロに関する110番通報」が相次いだ。

このご時世、事件や事故が目の前で起こったとして、真っ先に110番通報するよりも動画や写真を撮ってSNSにアップするモラルの欠如が問われているなかで、起こってもないのに110番通報をするのは非常に不自然な話だ。

こんなことをやるのは久住のグルだ。

久住はネットの「恐ろしい方」の特性を利用した。

SNSと同じくらいに、久住という男の影響力は計り知れない。

2.スイッチ

3話で志摩はルーブ・ゴールドバーグ・マシン、通称NHKでお馴染みのピタゴラ装置を使い、プライドが高く責任感が人一倍強いチームメイトの九重をこう諭した。

"辿る道は真っ直ぐじゃない。障害物があったり、それをうまくよけたと思ったら横から押されて違う道に入ったり、そうこうしているうちに罪を犯してしまう。人によって障害物の数が違う。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しが付かなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わない"

スイッチが正常に働くなった人間もいる。

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8話、伊吹が刑事を目指したきっかけである小日向文世演じる蒲郡、ガマさんが、指3本が切られた変死体で発見された連続殺人犯堀内を殺した犯人だった。

動機は、最愛の妻を目の前で轢き殺したから。

不良だった伊吹はガマさんに出会って刑事を目指し、真っ直ぐな道を歩き始めた。
なのにガマさんは元刑事にも関わらず、妻を殺害した殺人犯をガマさんは殺した。

"人を殺しちゃいけなかった。全警察官と、伊吹のために"

"あの子に、伊吹に伝えてくれ、お前にできることは何もなかった、何もだ"

名前が思い出せないのだが、無愛想でクソが口癖の法医解剖医の先生が「殺すやつは殺される覚悟をすべきだ」とか、そんなような事を言っていた気がする。

その思想に基けば、ガマさんは自分が殺される覚悟を持ってほど、自分が死んでも構わないほど犯人を殺したかった。そもそも刑事のプライドを捨てても赦さないと言っていた、相当な殺意である。

ガマさんのスイッチは取り返しがつかない以前に、スイッチ自体が壊れてしまったのだ。

例え何かのスイッチで道を間違えてエラー表示が出るとすれば、加賀美も、青池も、成川も、香坂も、ガマさんも、出会った人間に間違った方にスイッチを押されたこと、やろうとしていたことが間違いだということに気がつけて、普通に、素朴に、幸せに、汚れなく、生きていけたのかもしれない。

3.間に合わなかった

香坂の本心を無視し続けた結果、間に合わなかった。
久しく会えてなかったガマさんの異変に気づけず、間に合わなかった。
せっかくエトリを発見したのに、あと一歩で間に合わなかった。

もっと話せばよかった、あのときああすればよかった、人が死んでしまえば、余計に後悔は尽きない。

9話でハムちゃんを助けたとき、志摩と伊吹が抱き合ったアドリブの演技は大きな話題を呼んだ。

”機捜って、いいな。誰かが最悪の事態になる前に、止められるんだよ。超いい仕事じゃん”

初回、異動当初の伊吹が志摩に行った言葉だ。スイッチが壊れてしまったガマさん、恩人が去ってしまった伊吹は、自分が発したこの言葉に、重みを感じたに違いない。

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相棒を亡くした、恩人が殺人を犯してしまった、そばにいた人が死んでしまっても、生きていても、今まで「間に合わなかった」2人が、やっと間に合った瞬間、久住を捕まえた時だ。

"誰かが最悪の事態になる前"の誰かは久住、"最悪の事態"は、久住が逃げる、久住が死ぬ、久住がまた新たに被害者を増やすなど、様々なパターンが考えられた。

その様々なパターン全てが食い止められたのだ。

志摩も、伊吹も、4機捜は"超いい仕事"をしている。

4.04 not found

今作を通しての最重要キーワード、'お探しのページは存在しませんでした'を意味する「404 Not Found」。

今作では大きく2つのエラーが起きた。

1つは、メロンパン号。

テロ爆破の車両だというSNSのデマ拡散により、しばらく使用禁止となってしまった。

2つ目、2人目、久住。

伊吹「名前は?本当の名前。」

「久住、五味、トラッシュ、バスラー、スレイキー」

志摩「どこで育った?」

「何がいい、不幸な生い立ち、歪んだ幼少期の思い出、虐められた過去、ん、どれがいい?俺は、お前たちの物語にはならない」

久住は五味、トラッシュだけでなく、他にも複数の名前を持っていた。どこで育ったと聞かれて出身地ではなく、過去の出来事や環境で答えた。そして志摩は久住の戸籍を自ら消去した可能性も見ている。

本当に、久住という男の正体は存在しなかった。

久住逮捕の瞬間、久住が屋形船で橋を通過するときに橋に頭をぶつけ、咄嗟に伊吹に殴られたことにしようとしたが、久住の薬物仲間が屋形船内でドーナツEPを使用していたため、全員ラリってた。

きっと久住はお仲間から「大丈夫ですか!?」と言ってくれると思ったのだろうが「お前、どうしたの、真っ赤じゃん」と真実そのまま仲間に言われてしまった。

散々弄んでいた久住が、裏切られた瞬間だった。

志摩に止血された時の久住の表情。心から絶望していた顔だった。

自分のことを神のように慕ってくれて仲間だと思っていた人間に裏切られた瞬間、「神ではなく人間」だったという現実を突きつけられた上に、自分という人間は自分で消去したため存在しなかった、だから本当の自分は誰なのか自分で分からなかったから、目の焦点が合わないほど絶望という虚無に支配されていた。

自分が作った違法薬物によって仲間から裏切られた。ある種当たり前の結果だ。

私もSNSの考察と同じく"久住存在しない説"を仮定していたのだが、本当に久住という本名すらないとは予想外だった。

5.志摩、伊吹、陣馬、九重、桔梗

頭の回転が速い志摩、勘が鋭い伊吹、ベテラン陣馬さん、成長するルーキー九重、的確な指示で現場の指揮を取った桔梗隊長、4機捜の5人。

4機捜が発足してからすぐに暴行犯、いたずら通報、強盗犯、指名手配犯、殺人犯、数々の事件を解決したり、犯人を捕まえ数々の実績を残してきた。

そんな4機捜、ストーリーの途中から目的は一点集中する。

久住を逮捕すること。

海から救出された志摩と伊吹をメロンパン号で迎えに来たのは福岡出身2年目新人、九重

濡れた靴の変えとして伊吹のお気に入りシューズを持ってきたのは、伊吹が気に入っているランシューだと知っていたり普段から様子を見ていないと分からないことだ。このシーンで九重は伊吹を信頼したことと同時にチームワークが深くなったことを感じた。

一方班長の勤続35年ベテラン刑事、陣馬さんは久住の薬の工場から出たトラックに轢かれて重体。意識は回復したが、現場に行けるどころかベッドから動けやしない。

若手3人に取って陣馬さんの存在は久住逮捕の大きな力になった。

伊吹、志摩、そして陣馬さんの相棒の九重、元上司であった桔梗隊長、罪のない人間を巻き込む久住が許せなかったことに加えて、久住の手下によって陣馬さんが重症に=久住が陣馬さんを殺そうとした。

久住を捕まえる目的に陣馬さんのためにという理由も増え、陣馬さんの存在は4機捜隊員の心に大きな貢献をした。

6.刑事ドラマの最高峰「MIU404」

伊吹に電話で香坂のことを重く話を切り出した志摩、ハムちゃんがいなくなったと告げられた瞬間表情が一変した伊吹、ゆたか、ハムちゃん、部下、守るべきものを守ってきた桔梗隊長。どのシーンも、1言1言意味があったように思う。

出演した俳優陣の1人残らず確立した圧倒的存在感と、「美は細部に宿る」そのものの演技に何度も震えた。

そして制作陣の「作りたいもの懸命に作る」という当たり前の心意気とプロ根性の素晴らしさに、感銘を受けた。

どのスタッフも心から楽しんで撮影しているように見えた。脚本の野木先生、俳優、カメラマン、編集、音楽、広報、そしてエンドロールに乗らない名前、このドラマに携わった人間全てに拍手。

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実はこの記事は8話あたりから書き始めた。

ある程度「感電」の歌詞もリンクしたところで公開しようかと思ったが、次々と伏線が敷かれると、最後までみてしっかり「MIU404」という作品に向き合おうと思った。

最終回を見終わった後、思わず家で1人で拍手したぐらいに、素晴らしすぎる作品だった。

登場人物の心情を繊細に描き、演じ、ストーリーも徹底的に無駄を省き、迫力のアクションシーンなどは見応えがあり、一瞬一瞬見入ってしまった。

キャスティング、ファッション、社会背景を盛り込んだ脚本、主題歌、菅田将暉のサプライズ登場や伏線回収など、素晴らしいだけで終わらせず、最終回が終わっても考察や野木先生が伝えたいメッセージ性について、SNSはずっと盛り上がっている。

充実感が洪水を起こすほどに満足感に満ち溢れている刑事ドラマは初めてだ。

殺人や犯罪を題材にした作品の余韻は暗く重くなりがちだ。

でも「MIU404」は違った。軽やかで綺麗な心情のまま視聴者を夢中にさせファンを根こそぎ獲得した、後ろめたさを一切持たせなかった最高峰の刑事ドラマだと思う。

志摩と伊吹、そして署長になった桔梗さんに、いつかまた会いたいと祈る。

答え「  」

ある画家がドキュメンタリーで取材班の「この作品はどのような心境でかかれたのですか?」という問に対し「作った人に聞く前に自分で考えて欲しい。考えるのをサボるなって言いたい」ときっぱり答えていたことが、未だぐっさり刺さっている。

ただドラマで結末を知りカタルシスを得るのではなく、今ほとんどの人間が考える力と想像力が欠如した社会で、どうしてこうなってしまったのか自分で考えることに意味がある。

テストには必ず答えがあるのに対し、考察は小説、詩、エッセイ、題材は違えど、答えは全く同じなのだ。

だから私がどれだけ考察しても、携わった人間に私の考えが正解か不正解か答え合わせをしても、返ってくる答えは全て一緒だ。

それでも私は考えてしまう、志摩が刑事になった理由、伊吹がサングラスを手放さない理由、久住の過去。

答えは「存在しない」。

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