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【読書】君のクイズ 小川哲

今回はゆるい読書感想文です。
具体的なネタバレはしていませんが、読む予定の方はぜひ小説を先に読んでください!

本屋大賞ノミネート作品

2023年の本屋大賞のノミネート作品が書店に並んだ時に一番気になっていました。クイズは得意でもないですし、クイズ番組をわざわざ見るほどの熱量でもありませんでした。しかしあらすじに惹かれたこととYouTubeでカプリティオチャンネルを気になった時にみていた、というような薄ーい理由でしたが私の意思決定には十分でした。

あらすじ
生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。

読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 

「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント!

TOEICに似ているのでは?

まずこの小説で題材になったのは『早押しクイズ』でした。
恐らく一番見かけるスタイルなのではないでしょうか。

YouTubeで見たときに、技術の凄さに感心した記憶がありました。
問題のここまで読まれたら答えが確定するというタイミングがあったり、文法的に自然になるように後の順番から回答を搾っていく方法であったり。
そこにはコツがあり、練習が必要なのだと感じました。

なんとなくですが、これはTOEICみたいだなと感じました。
クイズには〈知識〉が必要で回答のための〈技術〉がないと早押しに勝って点はもらえません。
TOEICは〈英語力〉がまず必要ですが、あの出題形式に必要な〈技術〉も必須です。
*補足:TOEICで問われるのは主にリスニング、語彙、文法などです。しかし、それだけではスコアは取れず、解答にかけられる時間は限られており出題傾向やセットで出てくる単語などから答えを導いていきます。一応私はTOEICスコアのベストは920なのでそれなりに経験者かなと思いここに補足しています。

臨場感

この物語の臨場感が心地よく感じました。
冒頭には問題となった決勝戦の最終盤。
そして終了後の関係者の慌ただしさやツイッターでの炎上。
それから主人公玲央は謎を解くために決勝戦の映像を見返しながら様々な記憶を思い起こしていく。一問ごとに記憶が蘇っていき物語は進行していきます。
タイムラインを把握しやすくとてもスムーズに読めました。

尊敬

主人公玲央の素晴らしいと感じた描写はこの「尊敬」でした。
直接的に相手に態度で示していたわけではありません。
ただただ自分がクイズに正面から向き合うことで、過去の自分を認め対戦相手を認め人間として成長をしていくのです。
そこには偏見もなく、クイズへの愛とそれを愛する自分を認める素直さしかありません。この気持ちになんだか感動しました。。。

現実

そして最後のシーンです。
謎を解明した玲央は相手から真相の答え合わせをします。
ほぼ正解でしたが、相手にはクイズへの愛はなく自分が稼ぐことしかありませんでした。
何とも皮肉でそして現代における趣味や仕事への向き合い方の脆弱さをしめしているようで玲央には同情していました。

まとめ

クイズの知識が全くない私でも分かりやすく楽しむことが出来ました。
知的好奇心を全力で肯定してくれる物語でもありました。

自分を認めきれない人、素直に物事に向き合うことを恥ずかしく思っている人、ぜひ読んでみて下さい。




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