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散歩(ハードモード)

ここ最近食べ過ぎなので
散歩強化月間にしたいと思う。

我に秘策あり。

ノスタルジーに浸りながら
全身運動を余すことなく行えて
それでいて楽しい散歩が行えるのだ。

そんなわけで嫁ちゃん
K公園へ行こうじゃないか。

「K公園?あのだだっぴろい公園?」

ふふふ。ただ広いだけじゃないんだ。
K公園は目測で東京ドーム二個分ほど。
春には桜が咲いてピクニックにも最適よ。
キャンプ場だって完備している優れモノだ。

そしてアスレチックコースもあるんだよ。

「アスレチックコース?そんなのあった?」

K公園は多種多様なアスレチックができるよう
大規模事業として作られたすごい公園なんだ。
しかも、アスレチックは全部無料なんだよね。

「へぇ・・・無料なのはいいね」

だろう?私が小学生のころは無料なもんで
アスレチックコースを何週も周ったもんさ。
地上2メートルの不安定足場を渡るヤツとか
落っこちて大怪我する同級生もちらほらいた。
そんな少し危険なアスレチックを制覇するのが
私たち子供同士ではステータスだったんだよ。

「よくわかんなけど、危ない所っぽいね」

とにかく、このなまった身体に気合を入れるべく
アスレチックコースへ散歩がてら行ってみよう!
っていうのが今日の散歩なわけだ。

「いいけど、私はただ歩くだけだよ」

もちろん構わない。公園というより大自然。
大自然というより山道を歩くようなものだから
むしろ歩くだけで充分な運動になるよ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

車をスイスイ走らせてK公園へ到着。
時刻は午前10時。日差しも薄い。
壊すといけないのでスマホは車に置いておく。
財布すら持たずに公園へ繰り出す私たち。

目当てのアスレチックコースへ到着すると
ほぼ垂直の壁が私たちを出迎えてくれた。
この壁をロープを使って登るのだ。
命綱なんて気の利いたものはない。
手が滑ろうものなら大怪我必至だ。
入口なのにいきなりハードすぎる。

小学生のころはうおー楽しい!って
感想しかなかったけど、大人になると
ガチで危険なヤツって思えるなぁ。

「え、何これ、こんなの登るの??」

ああ、大丈夫。一応横に階段があるから。
登る自信がない人はそれで登るんだよね。
私はロープで登ってみるよ。よいしょ。

おおよそ三階建てアパートの高さを登り
ハァハァとめちゃめちゃに疲れた私。
これが年をとったということか・・・。

「大丈夫?もうフラフラしてるけど」

嫁ちゃんが心配している。なんと情けない。
あれだけ張り切ってきたというのに
もう私の残りHP(体力)は少ししかない。

気を取り直して山道を進んでいくと…あれ?
なんだろう、なにかおかしい。
私の記憶となにかが違う。なんだろう?

「なんだか草ボーボーだね。荒れてない?」

そうなのである。アスレチックコースなのに
やたらと順路が荒れているのである。
道が消えかかっているじゃないか。

「なんか見たことのないキノコ生えてるよ」

私毒あります!みたいな見た目をしている
ヤバそうなキノコがちらほら見えてるし
肝心のアスレチック遊具は数が激減してるし
使えるものがあったかと思えば苔生えてるし
いったいどうしてしまったというんだ!?

「人がこなくてつぶれたんじゃない?ここ」

思えば、これだけ広大な公園だというのに
アスレチックコースには他に人がいない。
冗談抜きで私たち二人しかいない。
でも、一応封鎖はされてなかった。一応は。

そうか。もうアスレチックコースは
とっくの昔に廃れてしまったんだな。

悲しい現実を受け止めて、とりあえず
コースを一周して帰ろうということになった。

草ボーボーの道をさらに進んでいくと・・・
あれ?おかしいな・・・
なんだかゴールに着かないような気がする。

山道で多少曲がることはあるものの
道なりに進めば迷うことなく
一周あたり10分くらいでゴールするはず。
それが、20分歩いてもゴールが見えない。
一体どうしてしまったというのか?

「これって迷ったんじゃない?」

OH!NO!まさか昔通いなれた遊び場所で
道に迷ってしまうなんて!
また一つ方向音痴伝説を更新してしまった。

そういえば道が消えかかっているし
やたら蜘蛛の巣がありデカい蜘蛛もいる。
地面に落ちていた長い木の枝を振って
道を掻き分けて進んでいる状態になってた。
人の声はまったくしないし雰囲気も変だ。
え、これって現実ですか。
もうこんなのもう異世界じゃん。

「むしろここで人に遭う方が怖いね」

そう言われてみればそうだ。
蜘蛛よりも異世界よりも怖いのは人かもしれん。

二人でハァハァと息が荒くなってきたころ
完全に道が草むらに覆われてしまった。
そう、道が無くなったのである。

だが、そこは大幅な上り坂になっていて
そこを登ればもしかして下りの道があるかも。
どうする?進むか?戻るか?

「いや戻ろうよ。道ないじゃん」

冷静な嫁ちゃんの判断によって即戻った私たち。
目を皿のようにして正式なルートを探していると
あった!草に覆われていて分かりにくいが
それっぽいルートがあったじゃないか。
よかったよかったと下り道を見つけた私たち。
無事にアスレチックコース(廃)から帰還成功。

「いやー、すごかったね。ここ」

思い出に浸ろうと思って来たのに
とんでもない散歩になってしまった。
車に戻ったら時刻は11時を周っていた。
およそ1時間、私たちは歩いていたのか。

ありがとうK公園。また来るかもしれないけど
アスレチックコースには二度と行かないよ!


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