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あえて削る

私はデザイン系の仕事をしていたことがあります。
仕事なので全力で取り組んでいたのですが
仕事を初めて数か月は苦しい思いばかりでした。

なぜなら、ダサいモノしか作れなかったからです。

デザインの仕事でダサいモノを作り上げるのは
一番やってはいけないことのはずなのに
どうやってもカッコいいものは作れなくて
ダサいものを量産する日々。
どうしてこうなった。

先輩のデザインは洗練されているのに
私が作ると途端にイモっぽくなってしまう。
これには営業部長も苦笑いです。

もしや私の右手は呪われているのだろうか?
ダサいモノしか作れない呪いにかかっているのか?

今ならハッキリと分かりますが
当時の私はセンスのかけらもありませんでした。
しかしやる気だけは人一倍持っている男。
何度でも立ち直る鋼のメンタルを持つ男でした。

トライ&エラーを繰り返していくうちに
ふと気付いたことがあります。

(もしや、ダサいものしか作れないのは
そもそも俺の私服がダサいからではないか?)

そうなんです。私の服装はダサかった。
ジーンズにジージャンを平気で合わせる男。
ファッションセンスなんて微塵もありません。
そんな奴がカッコいいものを作りたいだなんて
おこがましいにもほどがあります。

原因は私のファッションセンス!
だから、ファッションセンスが改善されれば
カッコいいモノが作れるはずだ!

今考えれば謎理論にもほどがあるんですけど
当時の私は思い立ったら一直線。
ここから全力でファッションの勉強開始です。

・・・一朝一夕でファッションセンスが
劇的に改善されることなんてありえません。
すなわちファッション特訓編が始まるのですが
さすがに長くなりすぎるので割愛。
とにかく、人並みのファッションセンスを
手に入れたんだなと思ってください。

これがどうしてどうして
私の自信につながりました。

(そうか!これがカッコいいってことか!)

妙な自信がモリモリ湧いてくるんです。
ウソみたいですけどこの時から
“ちょっと良いモノ”が作れるようになりました。
営業部長もニッコリです。

ファッションとデザインは似ています。
「あれもこれも!」と詰め込むのは基本NG。
何を一番目立たせるのか。
いわゆるコンセプトを決めて
余計な部分はあえて削る覚悟が必要です。

そしてこれは、文章にも応用ができます。

たとえば、こんな文章。
「基本的には、先に述べたように
僕とあなたの力が必要なんです。分かりますよね。
だからcooperationが求められるんです」

ちょっと回りくどくて、野暮ったい文章です。
これを添削してみましょう。

・「基本的には」→不要
・「先に述べたように」→不要
・「分かりますよね」→不要
・「cooperation」→「協力」と簡潔に。

こうして出来上がった文章がこちら。
「僕とあなたの力が必要です。協力しましょう」

無意味に長い言い回しよりも
よっぽど伝わりやすい文章になりました。

このように、あえて削るというのは
デザインやファッション、文章など
あらゆるジャンルでとても有効な方法。
たまには立ち止まって、よく観察して
不要なところを見てみるのもいいのかも。


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