見出し画像

【ふるさとTRIP】職人のイメージを覆された、木曽での出逢い<前編>

こんにちは。こくりなの神原です。

21年秋から、東京に住みながらも長野県に関わらせていただいてきたのですが、
その過程で、
自分らしさを表現できる余白
それをおもしろがって受け容れてくれる人に出逢い、気づけば心地のよさ、言い換えると「ふるさと」を感じるようになった昨今。

ふるさとって生まれた場所のようなイメージがあったけれど、
心で感じるふるさととのご縁は、こうやっていつからでも作れるんだ!
そう思い立ち、自分にあったふるさとを探す「ふるさとTRIP」を始めました。

そんなことを決めたタイミングで、偶然紹介でお会いしたのが木曽広域連合の戸前さん。

木曽をご案内いただいた戸前さん

戸前さんはもともと東京で働いていたのですが、伝統工芸に惹かれ長野県の木曽地域に移住されたパワフルな方。
そのエネルギーと想いに惹かれて、超弾丸で木曽を訪れることにしました!

日本の原風景が残る宿場町、木曽

木曽地域とは、長野県の南西に位置する地域のこと。
上松町、南木曽町、木曽町、木祖村、王滝村、大桑村という6つの町村から成り立っています。

木曽地域の地図:長野県ホームページより

かつての中山道(江戸時代における江戸―京都間の重要な街道)の宿場が、昔の姿をとどめた文化遺産として保存されており、雰囲気がとてもユニーク。そういった日本の原風景を求めてくる観光客からも魅力を集めています。

下の写真を見ても、パッと目に入るのは白と黒の江戸時代を思わせる建造物。こんな建物が連なっていて、タイムスリップした感覚になれる街です。

江戸時代を想起させられる、美しい街並み

トイレもしっかり風景に馴染むように作られていて、とってもかっこいい笑

町のトイレも素敵な作り

こうやって昔の風景が残る木曽地域ですが、他にも豊かな森林をはじめとした自然がしっかり残っており林業が盛ん。木材を活かした伝統工芸・木曽漆器・木桶・箸などもとっても有名です。

こんな風に、魅力が詰まった木曽地域ですが、
今回訪れたのは、木曽福島のエリア。東京から電車で3時間半〜4時間くらいで行けました。森林エリアなので車しか無理だと思っていましたが、意外と行けるもんですね笑

技術を持つのは全国で4社だけ!?こけら板を扱う栗山木工有限会社へ

今回の滞在では、早朝入り昼帰りだったので、たくさん魅力を見にいきたかったのですが、旅の目的である栗山木工有限会社さんにお伺い。

日本伝統の職人技で、日本史で誰もが習った法隆寺や鹿苑寺(金閣)などとても由緒ある神社仏閣の屋根に使われる、伝統「こけら板」を作っている企業さんです。
実際に栗山木工さんが手がけたこけら板を使ってできた屋根がこちら↓

栗山木工社のInstagram投稿より。他にも仕事風景のお写真がたくさんあります♪

美しすぎる・・・!!
板なのにこんな美しい曲線を描けるの!?と驚かされます。

これには板の原材料である木に秘密が。
このこけら板は、「椹(サワラ)」という、柔らかくて、水に強くて、軽い、屋根を作るのに最適な木から生まれているんです。

サワラは針葉樹で九州から東北地方まで分布していますが、市場に流通している天然サワラは木曽産がほぼ100%。厳しい自然の中で育った木は年輪が詰まって、とても美しいのが特徴です。 

そんな屋根にぴったりな木を探して、木曽の地に拠点を移してこられた栗山木工さん。
こけら板を扱う企業さんはなんと全国で4社のみ!
長野県では当社だけで、全国にある6~7割のこけら板を作っています。

このような企業さんたちが、江戸時代から何代にも渡って伝統を繋いでこられたからこそ、まだ日本に残っているわけですね。

会社の前に置かれた大木たち。木のいい匂いが漂います。

ではどのようにして残ってきたのか。
こけら板・こけら葺(こけら板を使った屋根のこと)にまつわるストーリーを聞かせていただきました。

木曽という地が生んだ木の恵みと、繋いできた歴史

こけら葺の手法は古くから伝わるものですが、
 良質な木材の産地であった木曽は、古くから城郭や神社仏閣用材として重宝されていました。 

代表的な木は「木曽五木(きそごぼく)」と言われ、
ひのき、あすなろ、さわら、ねずこ、こうやまき
という木々が大活躍。

木々が無くなってしまいそうになったため、江戸幕府は厳しい伐採制限をかけました。
その政策は 「木一本、首一つ」とまで言われ、間違って切ってしまったら大変なことになってしまいます。 その時落ちた種が 300年かけて成長し、現在木曽にある木々に成長しています。

天然資源は有限。
現在は年間の伐採量をコントロールしながら、出来るだけ長く皆さんの手に渡るよう管理されてい ます。厳冬期、全国の最低気温を記録することもある木曽。この厳しい自然の中で、し烈な生存競争を勝ち抜いた木々が人里離れた山奥で静かにその出番を待っています。 

この動画を見ると一目瞭然なのが木目の美しさ。
節がなく綺麗なので、こんなにまっすぐ割れるんです。

画像をクリックすると動画に飛びます

こうした木材がこけら板になっていくまでは、沢山の人が関わっています。

1)王滝村での木の伐採
2)木材を集める
3)上松町で木材のせり
4)買った木を持ち帰る
5)工房で暑さ3ミリほどの板に割る

長い歴史をまたいで、沢山の人の手で支えられ、今も残っている。

「伝統文化」「伝統技術」など言葉で聞いてもピンときませんが、こんなストーリーがあると思うと、目の前の板にとても愛着を感じちゃいます。

ちなみに、私たちも板に触れる経験をさせていただきました。

普段全くしない体制になって頑張っています笑

板を「へぐ(剥ぐと同じ意味の方言)」体験なのですが、見た目の何倍も難しい。

まず最初に、この木を足で支える体制が難しいし痛い。
そして1枚の薄い板をぴったり1/2にへぐわけなのですが、力が左右均等でないと途中で切れちゃったり、バランスが悪い。
シンプルに見えるこのプロセスだけ取っても職人技のすごさを感じます。

前編を読んでいただき、ありがとうございました!後編では栗山木工さんの「人」について書かせていただいています。読んでいただくことで、「職人」に対しての印象が変わるかもしれません。ぜひ読んでいただけたら幸いです!

執筆:神原沙耶

後編の記事も、ぜひ読んでいただけたら幸いです!


この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?