ここトト

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理系男子のボクと奥さんの不妊治療のこと

はじめまして、ご訪問いただきありがとうございます。管理人の「ここトト」と申します。このブログはボクたち夫婦の5年間にわたる、不妊・不育治療の記録を夫目線、男目線からまとめたものです。 ボクたちはこの5年間に不妊治療(タイミング法、人工授精、体外受精)、3度の流産と不育症診断、臨月帝王切開の末の死産など、たくさんのことを経験してきました。 ボクが思うに「夫」には2種類あります。 「子供がほしい夫」と 「そうでもない夫」。 ボクは間違いなく「子供がほしい」夫です。 だ

    • 88. ただの空想だけど

      空の上で、ココは神さまと話します。 「ココ。ココはあの人たちの子どもになりたいんだね?」 「うん、神さま。あたし、あの人たちが好き」 「そうかい。でもね、ココ。かわいそうだけど、ココはあまり長くは生きられないよ。産まれてくる前に、またこの空に帰ってこなければいけない。きっとあの人たちをとても悲しませるよ。それでもいいのかい?」 うつむいて、じっと考えて、ココは言いました。 「うん、神さま。あたしはそれでもあの人たちの子どもになりたい。あの人たちはあたしが空に帰ってか

      • 87.レモン

        夢を見ました。 ココの夢です。 夢の中のココはまだ赤ちゃんで、両手で自分の顔の大きさほどもある、大きなレモンを抱えて遊んでいました。 においをかいだり、ほっぺたをくっつけてヒンヤリした感触を楽しんだりしていました。 ボクがレモンを二つに切って中を見せてやると、ココは不思議そうにのぞきこんでから、その切り口にチュッと口をつけました。 きっとすごく酸っぱかったんだと思うけど、ココは酸っぱいなんて言葉をまだ知らないから、かわりにボクに変てこなしかめっ面をしてみせました。 そ

        • 86.それから

          仕事中のボクに奥さんからのLINE。添付された画像に写っていたのは、陽性反応の出た妊娠検査薬でした。 あ、奥さんめ!勝手にフライングしたな! すぐに電話。 「ボクが帰ってから検査するっていったじゃん”(-“”-)”」 「ごめ~ん、ガマンできなかったの。ね、陽性でたね!」 うん、ほんとだ。陽性だ。 うれしかった。でも不思議と驚きはありませんでした。 ココが産まれてちょうど1年が経つころ、ボクたちは5度目の胚盤胞移植に臨みました。 その頃のボクたちはごく自然に、こう考

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        理系男子のボクと奥さんの不妊治療のこと

          85.ありがたいね

          ボクの奥さんにはとてもステキな口癖がある。 「ありがたいね」 父は亡くなる前に、ココの桜を植えてくれていた。 母はココのためにいつもたくさんのお花を飾ってくれている。 兄は携帯の待ち受けをココの写真にしてくれていた。 姉は連絡をよこさないことが、姉なりの気遣いだ(きっとココと同い年の娘の話になってしまうから) 弟はココの大事な日をちゃんと覚えてくれている。 妹はココのことを話すときの一番の相談相手だ。 姪っ子は毎朝ココの写真におはようを言ってくれるらしい。 叔母はいつも季

          85.ありがたいね

          84.ブログはじめました

          奥さんと知り合ってからそれなりに長い年月が過ぎているけど、それでもまだ予測不可能な発言が飛び出すことはある。 「ここトト、ブログやってみなよ」 「…はぁ!?」 「不妊治療のこととか、ココのこととか。不妊で天使パパのブログってあんまりないから、読みたがる人絶対いると思うよ」 ハードブログウォッチャーの奥さんが言うんだから、市場ニーズとしては確かにそうなのかもしれない。 いやいや、しかし… ボクは自他ともに認めるバリバリの理系男子で、入試の時だっていつも国語が足を引っ張

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          83.ポコズカフェ

          某日。ボクは奥さんと近くで開催された「ポコズカフェ」に初めて参加しました。 「ポコズカフェ」は流産・死産経験者による遺族会である、「ポコズママの会」さんが主宰されるおはなし会。とても有名な会なので、このブログをご覧のみなさまの中にもご参加されたことがある方もおられるのでは。 結論から言うと、やっぱり参加してよかった。参加してみないとわからない、いろんな気づきがあった。 その日のポコズカフェは、まずスタッフさんたちの自己紹介から始まりました。 そのスタッフさんの中の1人が

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          82.さくら

          ある日、離れて暮らす義母から1通のメールが来ました。 「裏庭に、ココの桜を見つけたよ!きっとジィジが植えたんだね」 そっかお義父さん、そんなことしてくれてたんだな。お義父さんらしいな。 義父はココが奥さんのおなかにいるとき、妊娠7ヶ月の時に亡くなりました。 聡明で、読書家で、とても優しい人だった。少し皮肉屋なところもボクは大好きだった。 1年ほど前から患っていた難病はみるみる進行していって、会うたびに悪化していっているのがわかりました。でも妊娠中の奥さんの身体をおもんば

          81.テディベア争奪戦

          そしてついに即売会がはじまりました。 「整理番号1番の方~」 1番のはがきを持った女性が前に出る。 選んだのは…なんといきなり小さいほうのウサギ!! 「あぁ…ココ…」 思わず声が漏れたボクを奥さんが制する。 「大丈夫、まだもう1体残ってるよ」 それでも敵(違うけど)はまだ6人もいる。誰か1人でも残り1体を選んでしまったら終わりだ。 2番、3番。やっぱりかわいい熊から売れていく。意中の熊が売れてしまった人のため息が、あちこちから聞こえる。 4番目はちょっと変わった

          81.テディベア争奪戦

          80.ジャパンテディベアフェスティバル

          数週間後、HPでついに展示即売会が告知されました。場所も十分いける距離。スケジュールも空いてる。よし、絶対行こう! 展示即売会は「ジャパンテディベアフェスティバル」という、国内の熊作家さんたちが集まるフェス形式のもの。会場は作家さんごとにたくさんのブースに分かれていて、それぞれ作品を展示したり、その場で製作していたりする。アレルギー体質のボクは早速、埃で目がシパシパする(ノД`)・゜・。 ボクたちのお目当ての作家さんのブースは既に人だかり。思った通り、かなり人気のある作家

          80.ジャパンテディベアフェスティバル

          79.メモリアルベア

          メモリアルベア、というものがあります。身長や体重を指定して作ってもらう、オーダーメイドのテディベア。赤ちゃんが産まれたときのサイズで作って、いずれ我が子の成長した姿と見比べたりだとか、産まれた時の感動を忘れないためにとか。 死産を経験された天使ママさんたちのブログなんかでもよく拝見します。みなさんとても満足されているご様子。 ボクたちも欲しい。ココサイズの熊。 ただし問題が一つ。オーダーメイドということは、注文して届くまで実物を見ることができない。ではもし万が一届いた実

          79.メモリアルベア

          78.移植なき採卵でも

          ココの死産から半年後、奥さんの女性周期が整うのを待って、ボクたちは再び採卵に臨む決心をしました。 気持ちの整理がついたわけではない。 ココのことを取り返そうとしたわけではない。 後ろめたい気持ちが、少しもないわけではない。 ただボクたちはこの時、何か“具体的に”前に進むことがしたいと考えていました。たとえすぐには妊娠することができなくても、それまでの期間をムダに過ごしてはなかったという、確かな結果を求めていました。 前回の採卵は約2年前。その時は13個採卵して全て受精、

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          77.みたび、不妊クリニック

          ボクたちはまた、あの不妊クリニックを受診しました。ココのことの報告と、また再開するかもしれない不妊治療の相談のためでした。 クリニックにはすでに産院から報告が行っていて、クリニックの先生も事情を把握してくれているはずでした。約1年ぶりに訪れるクリニックは前と何も変わらず、患者さんはむしろ前より増えているように感じられました。 待合で待つボクたちを診察室に呼んでくれたのは、奥さんのカウンセリングをしてくれたあの看護師さんでした。 懐かしい見慣れた診察室。寝ぐせの先生は悲し

          77.みたび、不妊クリニック

          76.終診

          退院して3か月後、奥さんの最後の診察の日がやってきました。 奥さんの術後の経過は順調で、身体的にはもう何も問題はなかった。 でもココの死因は、結局わからずじまいでした。 病理解剖では大きな異常は見つからず、考えられるのは陣痛中にココの身体のどこかがへその緒を押さえつけてしまい、血流が途絶してしまったか、あるいはSIDS(乳幼児突然死症候群)のようなものか…。いずれにせよ、今となっては何も断定できないとのことでした。 そっか、せっかく解剖までしたのにな。 それでも、ちゃん

          75.おひなさま

          3月のはじめ、叔母からの小包が届きました。中には小さなかわいい雛人形が入っていました。 添えられていた手紙にはお悔やみの言葉と一緒に、こんなことを書いていてくれました。 「かわいい雛人形を見つけたからココちゃんに贈ります。差し出がましいことだったらごめんなさいね。でも、ココちゃんがいるようにしてあげられたらと思って」 とても、うれしかった。 ココと過ごす時間。 ココとつくる思い出。 ココのためのイベント。 それらはすべて、ボクたちがもう失ったものだと思っていた。心に

          75.おひなさま

          74.希望と絶望

          奥さんは、お葬式でココのお棺を包んでいた布で小さなかわいいぬいぐるみを作り、ボクたちはそれを肌身離さず持ち歩くようになりました。最後にココを守っていてくれた布には何か特別な力が残っているような気がしていました。 他にも奥さんはココの骨壺のカバーを作ったり、もらったお花をドライフラワーに加工したりもしていました。 ボクもしばらく離れていた趣味をまた始めました。 写真立てをたくさん買って、家じゅうにココの写真を飾りました。その写真に毎日話しかけました。 「ココに会いたいな

          74.希望と絶望