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83.ポコズカフェ

某日。ボクは奥さんと近くで開催された「ポコズカフェ」に初めて参加しました。

「ポコズカフェ」は流産・死産経験者による遺族会である、「ポコズママの会」さんが主宰されるおはなし会。とても有名な会なので、このブログをご覧のみなさまの中にもご参加されたことがある方もおられるのでは。

結論から言うと、やっぱり参加してよかった。参加してみないとわからない、いろんな気づきがあった。

その日のポコズカフェは、まずスタッフさんたちの自己紹介から始まりました。
そのスタッフさんの中の1人が、「私自身も○年前に死産を経験して…」と話し始めた時、その人は感極まって少し涙声になった。すると会場のあちこちから、いろんな人のすすり泣きが聞こえ始めました。

その人はまだ、その死産がいかにつらかったかを話したわけではない。聞いていて泣き出した人も、その人のエピソードに涙したわけではない。
でもそのスタッフさんの心の震えは、確かにあの時あの部屋中を波動のように広がっていって、参加した人たちの心も震わせた。そして部屋中があたたかい、お互いをいたわりたいという空気に変わっていくように感じた。

産まれてくる前の我が子を亡くした痛み。その痛みを知っている人にしかできない共感が、確かにある。

もちろんポコズカフェはお互いの経験を打ち明け合う場。自分の経験を話すことはとても強力な心のケアになる一方、参加者同士の「違い」が見えてしまうという部分もある。たとえば初期流産なのか、後期死産なのか。不妊治療か、自然妊娠か。1人目か、2人目か、3人目を亡くした人なのか。それが違っても共感しあえるものなのかと思う人もいるだろう。

でもそんなの全然関係なくて。

どんな経緯であれ我が子を亡くした人にしか感じられない心の震え、そこから生まれる空気感、一体感。それを感じるだけでもその場にいる意味があるような気がしました。

もっと言えば(そんなの当たり前みたいな話だけど)、一緒に参加した人たちは全くもって「普通」の人たちに見えました。多分街ですれ違っても、電車で向かいに座っても、その存在すら意識しないごくごく普通の人。この場で会わなければ、お互いが流産死産経験者なんて思いもよらないだろう。

ココの死産。終わらない痛み。もちろんそれはとても特別なこと。決してありふれたことなんかじゃない。でもその痛みを知っている人はボクたち以外にも確かにいて、気づかないだけでボクたちと同じような場所で同じような生活をしている。

そうだよな。ボクたちだけじゃないんだよな。

そう思えるだけで少し楽になる気がしました。

「ポコズカフェ」はおはなし会ではありますが、自分の話はしたくないという人でも参加可能です。もしまだ他の人に打ち明けたいという気にはならない、あるいは他の人と深く交流はしたくないという人でも、自分と同じ痛みを知っている人たちに会って、同じ時間、同じ空気を共有するだけでも何か感じるものがあるのではと思います。お近くで開催の機会があれば、ぜひ勇気を出して参加してみてください。

またこの日参加させていただいたことは、その後のボクたち夫婦の心のケアにとって大きな助けとなりました。匿名で恐縮ですが「ポコズママの会」運営スタッフの方々には心より感謝申し上げます。
また他にも天使ママパパのおはなし会はいろんな団体が主催して開催されているようですので、興味のある方はぜひ情報収集してみてください。

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