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79.メモリアルベア

メモリアルベア、というものがあります。身長や体重を指定して作ってもらう、オーダーメイドのテディベア。赤ちゃんが産まれたときのサイズで作って、いずれ我が子の成長した姿と見比べたりだとか、産まれた時の感動を忘れないためにとか。

死産を経験された天使ママさんたちのブログなんかでもよく拝見します。みなさんとても満足されているご様子。

ボクたちも欲しい。ココサイズの熊。

ただし問題が一つ。オーダーメイドということは、注文して届くまで実物を見ることができない。ではもし万が一届いた実物が、イマイチかわいくなかった場合にどうすればいいのか?

ぬいぐるみの顔なんて相当にシンプルな作りで、それゆえにほんのわずかな違いで印象が変わってくる。ちょっとした目の離れ方だとか、口元の角度だとかで。

人間の顔認識能力というものは本当に驚異的なものだと、あるロボット工学者が言っていた。
ボクたち人間の目(というか脳)は、「そっくりさん」といわれるような顔の特徴が似通った人でも、それが違う人物であることはすぐにわかる。でも例えば同じ人が違う表情をしたり、メガネをかけてたり、髪型が変わったりしても、それが同一人物であることは間違えない。特徴が似ていても違う人だと分かるし、特徴が違っても同じ人だとわかる。この不思議な能力が、コンピュータに人間の顔認識をさせるときの大きな壁になるんだそうな。

あっ、違う。熊の話だった。

そんな訳だから、せっかくオーダーしても実物みたらなんか微妙にかわいくない、ということが万が一にもあったらどうすればいいのか。そうだとしても大きさはバッチリ、ココサイズではあるんだろうから、あまり邪険に扱うわけにもいくまい。

めったにそんなことなんだろうけど…なにせココの替わりだ。完璧にかわいいものでなければいけない。ここは慎重に行こう。

というわけなので奥さんとお互いに、ゆるゆると情報収集することにしました。

そんな折にたまたま一緒に見ていたTV番組。タイトルは「マツ〇の知らないテディベアの世界」。

おっ、タイムリー。2人とも興味津々。

テディベア、というもののことをボクはよく知らなかったけど、まぁとりあえず熊のぬいぐるみのことを全般にそう呼ぶそうなので、世界中にテディベアメーカーというものは存在する(有名なのはドイツのシュタイフ社)。それとは別で、メーカーではなくて個人で作ってる作家さんというのもたくさんおられるのだそう。プロフェッショナルもアマチュアも。

番組ではたくさんのメーカーや作家さんの熊が紹介されていたのだけど、その中である一人の日本人作家さんの熊が気になった。

なんというかシンプルで、
なんというかとぼけていて、
なんというかかわいらしい。とても。

奥さんも全く同じことを考えていたみたい。ボクたちは早速リサーチを始めました。

オフィシャルHPを見てみると過去の作品がいくつも載っている。どれもかわいい。
しかし、肝心の入手方法が見つからない。オンラインショップもない。オーダーフォームもない。どこかのショップで取り扱ってますという雰囲気でもない。

むむむ?どういうことだ?

しつこく調べてみると、どうもこの作家さんの熊はすべてハンドメイドの1点もので、しかもいわゆる展示即売会でしか手に入らないらしい。とはいえ、それがいつどこで開催されるのかもわからないし、あまり遠い場所だと行くこともできない。

ん~結構ハードル高いなぁ。ちょっと様子見かなぁ。

しかしそのまま検索を続けていくと、1枚の画像を発見しました。その作家さんの過去の作品なのであろう、その画像に写っていたのは熊ではなくウサギ。それを見たボクたちの反応は2人全く同じものでした。

ココそっくりだ!!!

その作家さんの作るテディベアならぬテディラビットは、驚くほどココに似ていたのです。

もうハードル高いなんて言ってられない。欲しい。何がなんでも。

それからボクたちは毎日HPをチェックし続けました。即売会の告知が出たのはその数週間後のことでした。

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