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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2021年6月の記事一覧

短歌 きみ 十首

短歌 きみ 十首

1
眠りからさめてまもなく迷子だと気づいたきみの見事なターン

2
風呂上がり湯気たつきみのくちびるがオペラをなぞる夏至の夜更けは

3
きみと手を繋ぐスクランブル 卵は手軽に割れるいのちだ

4
きみの目に映る私が笑っててエンドロールに嘘ばかり載る

5
半開くきみのまぶたに黒蝶がとまる夜更けに消える独言

6
親指の大きさ比べきみ少し本音が過ぎると諌めてくれる

7
ビスケット叩いて真っ二つに

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短歌 連鎖 十首

短歌 連鎖 十首

1
ホームドアのない通過駅で固める決意ありデートに遅れるひとが増える

2
ホームドアのない駅に街宣車突っ込むみんなのことを守るためだと

3
猿から進化したにせよずいぶんと生きづらい形を選んだものだ

4
神さまがおつくりになった説もありそれにしたって五月蝿い種族

5
やめなさいあてつけいやみひがいしゃづら夜になっても美しくない

6
やめなさいそういわれるとやめられず結局高いビールを買った

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短歌 呼吸 十首

短歌 呼吸 十首

1
かさぶたを剥がし呼吸を止めるときにだけ生まれ変わりを信じる

2
首を振る扇風機のごと拒否権があるのかそうかもう泣きそうだ

3
角砂糖溶けてゆくのを待っているそのあいだにも燃え尽きる星

4
あめ玉を転がす舌に憧れた夏の日噛み砕いてしまった夢

5
オルゴールアレンジされた流行歌にスーパーの肉売り場で気づく

6
眠れずに夢を見る夢を夢見て明日生まれる予定のわたし

7
伸びすぎた爪を眺めて

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短歌 雨 十首

短歌 雨 十首

1
雨に添う少女の影を庇うため紫陽花たちが深呼吸する

2
人知れず閉じた心を携えてただ梅雨明けを恐れて暮らす

3
怪物に食い破られたワンピースを雨がやんでも脱げずにいる

4
雨上がり叫んでいいと許可されて羽虫を潰すしかできなくて

5
認識が滲んでゆくと雨が降る未遂まみれの紫陽花の庭

6
雨を呼ぶICチップの妖精が午後昇天し便覧に載る

7
すぐ横で泣いているのにそれは雨ではないからと本を

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写真で短歌(と最近感じていること)

写真で短歌(と最近感じていること)



こんにちは、笹塚心琴です。フルネームで挨拶するのはラジオパーソナリティーをイメージしています。写真に文字を入れられるアプリを見つけたのでさっそくちょこちょこ遊んでみました。

これまで俳句や短歌、現代詩に小説とあらゆるジャンルにトライしてきましたが、ここへきて迷子になりました(不定期お家芸)。自分が何をしたいのか、またしてもわからなくなってしまったのです。

中途半端、なんだろうなぁ、認めるの

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短歌 待合室 十首

短歌 待合室 十首

1
剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る

2
看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ

3
金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう

4
癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい個室

5
金魚鉢ぷかり浮かべばさようなら掬い取る手の手遅れのこと

6
わたしから言葉を奪うためだけに被害者面を貫く道化

7
林立のカルテAIより先に神が見つかる土曜日の

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