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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2019年11月の記事一覧

短歌 沈黙 十首

短歌 沈黙 十首

1
にんげんは黙るべきときくちびるをめだかのようにぱくぱくさせる

2
大切なものなんだけどみんなして黙って捨てるひとのやさしさ

3
待合の水槽に棲むグッピーは具合の悪い顔しか知らない

4
シューゲイザー? いいえスマホの虜たち情報過多の遭難者たち

5
凪がきたとたん泣き出すあの人はとても器用な生き方をする

6
カップ麺って結局美味しいし悲しいところも人生みたい

7
なんだまた

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短歌 おとな 十首

短歌 おとな 十首

1
われさきにひかりを浴びるこどもたち それが闇だと教えぬ大人

2
他人事はなんて甘美な響きだろう何が起きてもあくびができる

3
魔法などすでに使っているじゃないその心臓はなんで動くの

4
とぼとぼと歩いてみても快活に笑ってみても死に向かってる

5
「許さない」それがなによりの愛であり人間という種族の嗜好

6
人は皆こころをひらけと言うけれどからだとつながっているから怖い

7

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短歌 弱さ 十首

短歌 弱さ 十首


傷ついてしまえ私のせいにしてずっと頭の隅に居させろ


「優しいね」。ぽつぽつ雨が降る音はあなたの咳払いと違って


おままごとみたいな恋と言いました 確かにとても面倒でした


風切り羽だけを選んで焼き尽くすような生きかたしかできないか


歩幅まで揃わなくなる夜があり涙のしょっぱいわけまで解せた


雨を描くときにどうして水色のクレヨンばかり殺されるんだ


当たり前みたいに心

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短歌 数 十首

短歌 数 十首

1
ホームにて響いた声が懐かしく父によく似た咳をしていた

2
数学が苦手なことを言い訳に砂糖まみれの弁解をする

3
孤独たち足し算できない孤独たちそれぞれの意味それぞれの日々

4
素数だけ数えてましたあなただけ絶望するとわかってたから

5
苦しいか悲しいかやりきれないか安心しろ全部まぼろしだ

6
いうことをきいたぶんだけ莫迦として愛される仕組みを試す

7
夜空から掬

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短歌 花 十首

短歌 花 十首


花を急く心によく似た焦燥は秋月にだけ赦されている


夏の日に見たあの花火は今どこで誰の心に咲いてるのだろ


恋人よ 口を開ければ花びらの数だけ嘘が漏れてしまうね


過ちを認めぬ細胞を切り捨て誰の機嫌も窺わぬ花


まだここで生きていきます いずこかに花の咲く意味がまだあるなら


まっさらな雪原を一番最初に汚した人が花として往ね


なぞなぞがとけないまんま大人ってやつになっ

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短歌 挨拶 十首

短歌 挨拶 十首

1
死にたさは生きたさですと教科書に載っていたから絶対に嘘

2
階段が天国にまで続いててああよかったなって一歩踏み出す

3
目の前を通過列車が過ぎてってあたしのこころだけ轢いてった

4
帰り道赤信号だけを選んで歩いたけれどまだ生きてるし

5
頭痛薬だけでいいですもう少し幻たちと遊んでいたい

6
物差しで値踏みをされた僕たちの放牧場所に映えるオリオン

7
手袋を失くした君は本当に失くした

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短歌 優しさ 十首

短歌 優しさ 十首

1
ふりこって誰がどうあれあるがままふれているから羨ましいな

2
心臓の奥の奥より奥のほう 君が粗末に捨てたまごころ

3
優しさは流行らないから味のないガムを選んで渋谷を歩く

4
ふたりして爪を噛むからふたりしてひとりぼっちをディスプレイ済み

5
涙まで質に入れたか父母(ちちはは)よ フェイクパールが晴れがましいぞ

6
これは何という名前の動物でいつまで君として生きたのか

7
美しいも

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