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【陸前高田体験記 1日目】デンマーク人と火を囲む

Change Makers' Collegeに遊びに来てくれた森山 寛菜さんが、カレッジの体験談を書いてくれました!
全3回の超大作です。広田町での暮らしをとっても楽しんでもらえたようで、嬉しいです。

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陸前高田に来る前、北海道の東川町で8日間のワーケーションコースに参加してきた。東川~陸前高田~気仙沼、と旅した2週間のうち、陸前高田で過ごした3日間をここに記す。
東川から陸前高田へ移っても、気持ちがあっちにいったり、こっちにいったりしていたので、東川と陸前高田の話が混ざっているのは許してほしい。

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書き手:森山 寛菜(もりやま・かんな)
北海道で感性大爆発中の自分。旭岳にて。茨城県水戸市で育つ。9歳のとき山奥の村で1年過ごしてから、どういうわけか色んなところへ移り住む人生がはじまった。中高は韓国、大学はアメリカへ。ちょこっと横浜に住んで秋からは島根へ。今は仕事をやめて寛ぎ中。

1年半前。今回参加したワーケーションコースをつくっているCompathインターンをした。そこで出会った学生インターンの仲間であり、愛しき対話相手であるゆりちゃんから勧められたのが、陸前高田に足を運んだ理由だ。

普段の私は、旅行となればスケジュールをきちきちに入れがちだ。
観光名所を調べて、食べるものまで下調べしておく。
だけど、今回の旅は何も決めないことにしていた。
行き先と泊まる場所とレンタカーは確保したけど、そこで何をやるかは決めないでおく。
Serendipity ー偶然の産物ー を大事にしたいと思った。

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コロナですべてがオンラインに移行して、便利だけど、人との繋がりを感じづらくなった2年間。オンラインミーティングでは、目的をもった人たちが向かい合って話す。
でも偶然か、必然か、旅先で出会った人たちとの間には、ドライブとか、料理とか、畑作業とか。向かい合わない対話が自然と生まれて、黙っていても同じ空気を感じてほっとできる、そんな「リアル」があった。

1日目。札幌から花巻空港へ。

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飛行機からの景色

レンタカーの兄さんと姉さんに、聞いたことのないトーンで話しかけられて戸惑う。車の場所を教えてもらって取りに行くが、車種を聞いてわかってないのに、「はい、わかりました」と答えてしまった上に、壊滅的に方向音痴なために、空港の前をさまよっていたら、
「車の場所わかりませんでしたかー」とさっきの兄さんが案内してくれた。

「岩手、はじめてなんです。前に一本松まで行ったことはあるけど、通っただけという感じで」
「あぁ、はじめてなんですかー」
「いいところですね」
「なぁんもないですけどね」

ドラマの1話の東京からきた人と地元の人みたいな会話をしている自分に笑えてくる。私も全然都会の人間じゃないのに笑
「飛行機から見える景色がきれいで写真撮りまくってましたよ」と話して、レンタカーに乗り込んだ。

さあ、ここから陸前高田の広田町へ。2時間のドライブ。
空港を出てすぐ、宮沢賢治記念館という文字が目に飛び込んでくる。
へえ、けんじさんは岩手の人なのかー、と思って寄ってみた。
気ままな旅だ。

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注文の多い料理点をモチーフにした売店。このセンス好き。

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宮沢賢治記念館のテラスから見える銀河大橋と花巻のまちなみ

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ヤマユリがきれいだった

気を取り直して、陸前高田へ向かう。
そもそも、陸前高田に何があるか分かっていない。
ゆりちゃんが4ヶ月を暮らしたまちであること、陸前高田でFolkehøjskole(フォルケホイスコーレ)をしている人たちがいること以外何も知っていない。

Folkehøjskole フォルケホイスコーレ
フォルケ(人々)+ ホイ(高い)+ スコーレ(学校)
「人生の学校」とも呼ばれる。北欧独自の教育機関。特徴は試験や成績が一切ないこと、民主主義思考を育てる場であること、知の欲求を満たす場であること。全寮制となっており、先生も含めた全員が共に生活することなども代表的なフォルケホイスコーレの文化。― 一般社団法人IFAS

到着場所の外観も全然見てなかった。ナビのに案内されるままに高速を進んでいたが、なんか道が違う気がしてGoogle Mapに切り替えたら、すごい山道を通らされて陸前高田についたのが19時頃。
自転車に乗った人がこっちこっちと誘導してくれて無事到着した。陸前高田で行っている活動の運営団体であるSETの事務所の駐車場に、レンタルした黒い軽自動車をちょこんと止めた。

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SETの活動内容は4つ。
「色々やってる」とは聞いてたけど、本当にいろいろだった。
私が今回訪ねたのはゆりちゃんが参加した
Change Makers' Collegeの見学が目的。

到着

到着してすぐ施設を案内してもらう。
19時を過ぎると、どんどん暗くなっていく。

アトリエや音楽室、シェアハウスを見せてもらう。
外か中かわかんない感じの空間に通してもらう。
色んな人が思い思いに自分の痕跡を残している壁を見る。
薄暗い建物の中で、「いっつも電気のスイッチどこにあるかわかんないんですよねー」と言いながら、「あったあった」と電気をつけてくれる姉さん。なかなかディープだ。

陸前高田を勧めてくれたゆりちゃんが暮らしていた場所も見せてもらった。まあ、ゆりちゃん、ここで、暮らしていたの!た、たくましいわね。と思うと同時になんかわかんないけど勇気をもらった。

田んぼのあぜ道にはホタルがゆらゆらと飛ぶ。実家のある島根で5月のおわりにホタルをみた。岩手はずっとずっと涼しいんだな、と思った。

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音楽室

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ゆりちゃんが暮らしていた場所

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ゆりちゃんが仲間たちと生きた痕跡

焚き火

施設を一通り見せてもらった後、今日はデンマークの家族が海辺で焚き火をしているので行きますか?と聞かれた。なにそれ、面白そう、と私のおもしろセンサーが反応した。

北海道のど真ん中にいたので、久しぶりに見る海。
海の匂いがする。
その前で焚き火を囲んだ人たちがいる。

「だれですか~?」と聞かれて、「はじめまして、かんなです」と答えておしゃべりをする。
棒にぐるぐると生地を巻き付けてゆっくり焼く、Snobrød(スノーボゥッ)というデンマークのパンを一緒につくって食べる。

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海辺の焚き火

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Snobrød(スノーボゥッ)

パンを焼きながら、「デモクラシーは制度や社会の中にあるのではなくて、人と人の間にあるんだ」と話してくれる。デンマークだなーと思う。

「やっぱあれだね、ヒュッゲしなれてるねデンマーク人は。なんかしなくちゃって思っちゃうもんね。」と言っている日本人の女の子の言葉が面白くてくすりと笑った。

あっという間に日が暮れた。

Hygge ヒュッゲ
デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」を意味する。

陸前高田に来る前の8日間の北海道のプログラムで、1番印象的だったのが火起こしだった。ファイヤースターターという道具に石を打ち付けて、火花を散らせて火を起こす。
前日の朝釣って捌いた魚を、木の枝をナイフで削った棒に刺して、自分たちで起こした火で焼いて食したとき、猛烈に生きていると感じた。

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北海道でみんなで起こした火

北海道で8日間を暮らした人たちと火を囲んだ後、今度は知らない土地の海辺で、名前も知らない人たちとまた火を囲んでいる。

火が灯ると自然と周りに人が集まってくる。みんなが火を見て話している感じが好きだ。でも、今日の火はまだ思い出に昇華できていない、北海道の日々の恋しさを刺激してきたので、火を囲む楽しさに、寂しさが勝ってしまった。


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【陸前高田体験記 2日目】につづく...

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