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書評

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2022年5月の記事一覧

塩野七生(2010)『日本人へ リーダー篇』文春新書

世界がテロと闘っていた米ブッシュ政権当時の国際政治環境下にあって、古代ローマを扱う歴史家がその含蓄とともに国際情勢と日本の置かれた環境を分析するエッセー集。驚くべきことは、現在のウクライナ侵略を巡る国際政治の有り様と世界が何ら変わっていないように思えること。

賢者は歴史に学ぶというが、ローマの歴史に学んだ著者の、今の我々からしたら一昔前を論評する本書に、また我々も学ぶところが多いというのは感じ入

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清水晴木(2021)『さよならの向こう側』マイクロマガジン社

死者が最後に会いたい人に会いに行く物語。でも会えるのは自分の死を知らない人だけ。そのような条件の下で、頭を悩ませながら最後のひと時を過ごす人々を描いた生と死をテーマにした作品の一つ。

本書に特徴的なことと言うならば、悔いなく死ぬとはどういうことなのか考えさせられるということだろうか。最後に会ってみたとしても死という結末は変わらない。でも会うことで世界の何かが変わる。一人一人が持つ世界を変える力が

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