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【医療コラム】研修医が教授の代わりにバイトに行ってしまったら・・・。

これは、私が研修医の時の話です。

 ある月に、給料が2ヶ月遅れで振り込まれることになりました。大学側が、給料を銀行に預けて利息を得るための施策です。このことは医局会で伝えられたそうなのですが、私は居眠りをしていて、ちゃんと聞いていませんでした。

 当時の私は、もらった給料を、その月のうちに使い切るような生活をしていました。

 研修医のお金の使い道といえば、ほとんどが食費です。研修医にはとにかく時間がありませんから、あまり遊びに行くことができません。そのため、仕事の合間には当時の彼女とデートをし、高級なものを食べたりしていました。

 そんな生活をしていたのに、医局会での話を聞いていなかった私は、その後に大慌てすることになります。振り込みが遅れる事実に気づいたのは、給料日当日だったのです。

■何度見ても給料は振り込まれておらず…


 給料日。銀行へ行って口座を確認したのですが、当然ながら給料は振り込まれていません。その後何度もATMに足を運びましたが、結果は同じです。

 業を煮やした私は、小児医局の秘書に、給料が振り込まれていないことをキレ気味で伝えに行きました。すると、秘書は一瞬驚いた顔をしてから、笑いをこらえるような表情になったのです。そして、私へこう言い放ちます。

 「医局会での話を聞いていなかったんですか? いつも医局会で居眠りをしているから聞き逃してしまうんですよ。お給料は、再来月まで振り込まれないことになっています」

 秘書にそう言われ、私の怒りはあっという間に収まりました。言われてみれば、そんな話もあった気がすると思ったからです。

■困り果てた私は、医局へ相談することに


 ですが、そのことに給料日に気づいたのでは遅いのです。先ほどお話したとおり、私は貯金を一切していませんでした。それに加えて給料の一部は、両親への学費の返済に充てていたのです。

 両親に事情を話せば、きっとお金を貸してくれるでしょう。しかし当時27歳だった私は、親からの仕送りで生活をしていた学生時代が、ようやく終わったばかり。両親へお金の無心はしづらい境遇です。

 それでも、家賃や水道光熱費は毎月支払う必要があります。私は「このままでは本当に困ったことになる」と考え込みました。最終的に私が出した結論は、医局に事情を打ち明けて相談する、というものでした。

■アルバイト漬けで過ごした1ヶ月


 それから3日後の医局会。私が給料を使い切って今月厳しい状態になっているということが、名指しで発表されました。譲ることができるアルバイトを私に回すよう伝えるためです。はじめはその場がざわついていたものの、結局、みんなが協力をして私にアルバイトを回してくれることとなりました。

 それでも、アルバイト代は翌月にならないと入りません。そこで、あまり公にはできませんが、銀行から借り入れをすることに。アルバイト続きで休みもなく、デートもせず、小麦粉とキャベツだけを食べて1ヶ月を過ごしました。

■振り込まれたアルバイト代を見て驚愕


 そして、待ちに待った給料日。口座を見ると、予想を超える金額が振り込まれていました。原因は、私を見かねて教授が譲ってくださったアルバイトでした。どうやら、教授が勤務している時の金額で、私のところに振り込まれていたようなのです。

 その金額は、研修医の私のおよそ5倍。そのことを教授に伝えに行きましたが、「いいんじゃない、もらっておきなよ」と言われました。

 ですが私は、勤務先から返還を求められるのではないかと不安になり、アルバイト代に手を付けることができませんでした。他の医局員も知らない事実です。

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