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外資Country Managerから起業へ。"インテリム人材"事業を立ち上げた理由

こんにちは、クラレザパートナーズの馬場 一士です。

新卒でアクチュアリーとして日系生保に入社した後、
外資コンサルファームの部門責任者を務め、
外資人材会社のカントリーマネージャーを経て、
40代で起業するという異色(?)のキャリアを歩んできました。

昨年6月に立ち上げたクラレザパートナーズ合同会社では、
主に外資企業にインテリム人材を提供する事業を行っています。

今回の投稿では「インテリム人材ビジネスで起業した理由」をご紹介します。自分で読み返してみて、少々自分語りが過ぎる気もしますが、何か少しでも参考になる部分があれば幸いです。

なお「インテリム人材とは何なのか」については、前回の記事で紹介していますので、よかったらこちらも合わせてご覧ください。

それでは始めていきます!まず起業した理由から。


なぜ起業したのか?

先日、コンサル時代に知り合った方から、
「馬場さんのことだから長年のプランがあって周到に準備してきて起業したんでしょ?」というお言葉をいただきました。

確かに元コンサルの習性なのか、ゴールから逆算して筋道を立てたり突っ込みどころが無いように理屈や根拠を固めたりする思考の傾向があることは私自身も自覚するところです。

しかしながら今回の起業に関しては、特に前々から起業を志していたわけでもなく、論理の帰結としての選択というよりは感性によるものが大きかったように思います。

一言でまとめてしまうと「フィーリング」です。

…が、それだけだと読んでくださっている方からも渋々ながら起業を認めてくれた妻からもお叱りを受けてしまいそうですので、もう少しそのフィーリングの裏側にあったものを掘り下げて言語化してみようと思います。

これまで私がキャリアを大きく変えてきた際に、そのきっかけとなったのは「このままだと同じ仕事の繰り返しになってしまう」という思いでした。

例えば5年前にコンサル会社を退職することを決めた当時、事業責任者としての任期は6年目になっていました。任期中は色々と大変な思いもしましたが、事業は順調に成長を続け、チームメンバーも就任当初の3名から10名超へと増員することができました。

それぞれに異なるスキルや個性を持つ優れたメンバーに恵まれ、しかも毎年安定的な売上が得られるリカーリングビジネス(Recurring Business)の割合が多い事業だったこともあり、なぜそのポジションを自ら手放すのか疑問に思われる方も多かったようです。

ただ実際のところ、その居心地の良さや安定こそが転職の要因でした。

世の中が変わっていく中で、自分も新たな環境に身を置いてチャレンジを続けなくてはいけないルーティン的な仕事の仕方に陥ってはいけないという危機感がキャリアを変える原動力だったのだと思います。

今回、起業という道を選んだのも同じような理由だったように感じます。自分のスキルや経験から考えると、もう一度コンサルの部門ヘッドや、事業会社のカントリーマネージャーをやるのも良い選択肢なのでしょうけれど、それだと進歩がない気がしてしまう

振り返ってみると、日本事業の責任者という形で経営を担い成果を上げてきた自負はあるものの、本当の意味で自分は経営者の仕事をしたと言えるだろうかという疑念がありました。

外資の場合、戦略や商品・サービスの大枠は本社が決めるため、どうしてもそれを基準に日本市場へのアプローチを検討せざるを得ません。日本市場に合わせてカスタマイズしたり本社を説得して例外を認めてもらったりすることはあるものの、本社が決める大筋が土台になっていることには変わりません。

自分がフリーハンドで大きな戦略を描き実行したことはないのではないか?一度、本社やリージョンがいない状態で経営をやってみたら何ができるだろうという気持ちが自分の中にあったように思います。

また、もう一つ理由として思い当たるのが企業組織のあり方です。私は元々フラットな組織で一人ひとりが主体的に働き価値創造にベストを尽くしている状態が望ましいと思っています。しかし、このような価値観を持ち、かつそれを本気で実現しようとしている企業は必ずしも多くないように感じています。

純粋に顧客やチームのメンバーへの価値提供に注力できる環境はないものか?それならばいっそ「自分で企業を立ち上げてみよう」と思ったのも起業に至った要因として大きかったように感じます。

インテリム人材事業を選んだ理由

起業しようと思い立ってから、どういう事業をやるかの検討に入りました。散歩しながら、シャワーを浴びながら、何もせずぼーっとしながら...時間があれば事業案を考え、思いつくままにスマホのメモに書き留めました。

その日は良いアイデアと思っても次の日見たら「いやいやこれは無いな」と思うものだったり、調べてみたら似たものが世の中に既にあったり。そんなことを数週間繰り返して出てきたのがインテリム人材でした。

ちなみにこの時のメモは残してますが、今見ると安直だったり唐突すぎる案も混在し恥ずかしい内容なので、誰の目にも触れないようひっそりとお蔵入りさせようと思います。

インテリム人材は海外で既にあるサービスのため、思いついたというほどのことでは無いのですが、案として考えに至った時には「これだ!」という感触がありました。

その理由は主に次の3つです。

  1. 自分の経験やスキルを活かせること

  2. 企業にも人材側にも需要がありそうなこと

  3. 自分が心から意義を感じる事業であること

一つ一つの理由についてご紹介してまいります。

1. 自分の経験やスキルを活かせること

大規模な資金調達をすることなく起業する場合、資金や人員などのリソースが相当に限られる状態からスタートするわけですので、自分の経験やスキルが活かせることは事業選択にあたり必須の要件でした。

私のこれまでの経験やスキルが活かせそうな部分としては、人事や人材サービスの業界に馴染みがあること、外資系での経験が長くその中でも上位のポジションに求められる役割や特性を把握していること、日本国内だけでなく海外の意思決定者にも英語で対話ができること等が挙げられます。

これらは外資企業をターゲットとしたインテリム人材事業を行うにあたり重要度の高いスキルで、かつ簡単に身につけられるものでもありません。そのため、それだけである程度の差別化になり、より資金力のある企業にとっても参入しにくい事業領域と言えます。

自分自身の経験やスキルを資本として、その特性を活かすことが起業して事業を軌道に乗せるための重要な第一歩になると考えました。

2. 企業にも人材側にも需要がありそうなこと

企業側の需要に関しては、実際にコンサル時代にインテリム人材の依頼をいただくことが何度かありました。当時は自社の人事コンサルタントがHR Managerを代行する形でサポートさせていただき、とても価値を感じてくださいました。

ただ外資のコンサルタントは結構な単価がかかってしまいますし、専門知識はあっても事業会社で要職を担った経験は限られてしまいます。今行っているインテリム人材の仕組みであれば、よりリーズナブルな単価で、実務経験の豊富な人材がサポートでき、需要があるのではと考えました。

また私自身も事業責任者を務める中で「社員が産休・育休で不在となる期間だけ代わりに業務を担ってくれる人材がいたらいいのに」と思ったことがあります。不在となる社員のポジションが高ければ高いほど、代わりの正社員を雇ってしまうと、元の社員が戻ってきた際のコストが問題になります。

一方、人材側の需要については、前職の人材サービス会社での体験が根拠になっています。外資で要職を経験されてきた方々と今後のキャリアのお話をする機会があり、印象的だったのは、非常に多くの方がフリーランスのような柔軟な働き方を望んでおられたことです。ただこれまで培ってきたマネジメント経験や専門スキルを活かせるようなフリーランスの仕事が見つからないことを理由に、仕方なく断念される方も多いようでした。

実際インテリム事業を立ち上げてからは「まさにこのようなサービスを探していた」との声をフリーランス人材の方々からいただくことが多くなり、人材側の需要があることを改めて確信することとなりました。

こういった企業と人材の潜在的な需要を満たすことができれば双方に価値をもたらすことができ、事業として成り立つのではないかと考えました。

そしてこの価値は、3点目の心から意義を感じる事業であることにもつながります。

3. 自分が心から意義を感じる事業であること

ここまでコンサルの定石に従い理由を3つ並べてはみたものの、比重としてはこの3点目が大部分を占める気がします。

今まで携わってきた事業でも意義はもちろん感じてきましたが、自ら資金を出し、リスクを取って事業を一から立ち上げるとなると、やはり思い入れは一段も二段も強くなるものです。

私がインテリム人材事業に意義を感じるのは、人材がその能力を発揮する場を広げることができると思うからです。

これまで企業の要職を担う人材は、ほぼフルタイムの正社員でした。これは逆の言い方をすれば、重要なポジションを担うにはフルタイムの正社員という働き方を選ばざるを得なかったということです。

平均寿命が男女共に80歳を超え、人生100年時代とも言われる中で、今後一人の人が働く年数は50年を超えることが当たり前になっていくでしょう。働く期間が長くなればなるほど、その間に病気や怪我、親の介護、所属企業の倒産など想定外なことが起こる可能性は高まり、フルタイムの正社員ではない働き方が必要になる状況も増えていくはずです。

インテリム人材として働く場を提供することによって、フルタイムの正社員でなくてもマネジメント経験や専門能力を活かす道を作ることができます。経験と能力のある人材にとって活躍できる場が広がれば、本人にとっての働きがいはもちろん、人口減少社会にある日本経済の発展にもつながります。

そしてインテリム人材は、企業に所属する正社員にとってもメリットがある仕組みと考えています。

要職のポジションが前任者の退職等により空席になった際、後任が採用できるまでには通常早くても3か月、場合によっては半年以上の時間がかかることも珍しくありません

その間、当ポジションの部下や同僚として働くメンバーには大きな負荷がかかります。自身の責任範囲を超えた業務や意思決定を代わりにしなくてはならない等、単純な業務量の増加に留まらず、精神的な負担も大きくなります。当然、自身のこれまでの業務は変わらず行う必要があり、それをよく理解し相談に乗ってくれる上司もいません。ポジション不在の状況が長く続けば、心身の不調に陥る者が出てきたり、退職が連鎖することにもなりかねません

後任が採用できるまでの間、経験豊富なインテリム人材がそのポジションを担ってくれれば、どれほどメンバーにとって心強いことでしょうか。企業としても、退職連鎖等のリスクを避けつつ、焦らずに後任を探すことができるようになります。

また別のケースとして「休職の期間中だけ代わりに業務を担う」形でインテリム人材を使うことにもメリットがあります。管理職や経営幹部のようなポジションであっても長期間の休職を取りやすくなり、休職から戻る際も徐々に勤務日数や時間を増やすといったこともできるようになります。ワークライフバランス面での懸念を理由に管理職になることをためらう人材が減り、多様性の推進にもつながります

出産育児や介護等に伴う休職以外にも、スキルアップのための時間を確保したり、海外のストレッチアサインメントへの挑戦もしやすくなるなど、人材の能力向上を促す効果も期待できます。

このように、インテリム人材という仕組みが世の中に広がっていくことで、様々な面で人材の活躍を後押しできると感じています。起業して約7か月、まだまだ種から芽が出始めたくらいの段階ですが、多くの方に価値を感じてもらえるような事業に育つよう尽力していきたいと思います。

まとめ

今回は「インテリム人材ビジネスで起業した理由」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

冗長にならないよう内容を絞って書き始めたはずなのですが、あふれる想いが止められず、結果的に当初考えていた文字数の2倍近くの分量となってしまいました。

テーマ的に仕方ない面もあると自分に言い聞かせつつも、反省を活かして、次回はもう少し読みやすいものをお届けできるようにしたいと思います。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。


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