岩手なす

岩手県在住のライターです。 美味しい食べものと日本酒、温泉をこよなく愛しています。 I…

岩手なす

岩手県在住のライターです。 美味しい食べものと日本酒、温泉をこよなく愛しています。 Instagramで飯テロ展開しています。https://www.instagram.com/kaji_23/

最近の記事

()の中にある本音

文章は短いほうが美しい。 日本には、空気を読む文化がある。それを象徴しているのが、枕詞である。 たとえば、味の感想を聞かれたとき「すごくおいしいです」とだけ伝えればいいのに、気の利いたことを言わなきゃ……と思い、「隠し味のコーヒーがカレーを引き立ててますね」とか「今までに食べたことがないくらい、スパイシーです」とか、枕詞で本音をぼやかしたり、言い換えたりしたことのある人は少なくないだろう。 味の感想を伝えるだけなら、「とても美味しいです」で十分なのに。 生活していると、

    • 前向きの「前」はポジティブじゃなくてもいい

      弱音を吐かないで粛々と日々を過ごしている=前向き。 泣きながら仕事をしたり、毎日を過ごしたりする=精神的に不安。 社会にはそんな風潮があるように感じる。 まぁ、不安定なときに泣くのは間違いではないのかもしれない。 とは言え、実際には誰もが自分のできることをやって、自分のペースで今を懸命に過ごしている。 泣く、泣かないなんて日々の生活にまったく関係ないのだ。 にも関わらず、どうして「前向き」「不安定」というレッテルだけが1人歩きするのだろう。これじゃあ、「泣く人はダメ」と

      • 時間が止まった、けれど、進む

        失恋、離婚、友人同士、親族間のトラブル……。 精神的にダメージを受ける経験をしたとき、それを第3者に話してこう言われた経験がある人は、少なくないだろう。 「前を向いて頑張ってね」 「生きてればいいことあるよ」 仲の良い人から、相談を受けたとき、「チカラになりたい」と思う人は少なくないだろう。言うか言わないかは別にして「まず励ましたい」と思って上述の言葉がよぎった人は少なくないと思う。 僕もその言葉を幾人にかけられてきたうちの1人だ。 2021年、婚約者と死別して以降、何

        • 勇気になるのも言葉、刃物になるのも言葉

          “大人”と呼ばれるカテゴリに入って17年が過ぎた。 自分では17歳くらいから何も変わっていない気がするけれど、ふと目にしたWikipediaで、当時19歳だった女優さんが、39歳を迎えていたのを知って、ときの流れを実感させられる。 学生時代、不登校が長かった僕は大人になるのが待ち遠しかった。 いや……、厳密に言えば楽しみに思っていたのではない。「義務教育」の名の下、同じ価値観を強制するような学校に気持ちわるさを覚えて、そこから逃れたかった。そんな学生生活だったので「大人にな

        ()の中にある本音

          「死にたい」の裏側にあることばたち

          『なんでも聞くよ』と言われたので、「死にたい」と本音を漏らせば『それはダメだよ』と言われる。 僕が死んでも世の中は滞りなく回るし、困る人なんていない。 僕が死ねば、喪主はおそらく実親になる。 親は、なんてことをしたんだ……と思うかもしれないけど、それは一瞬だ。 きっと1週間後には、何事もなかったように日常が繰り返される。 葬儀は自分がこの世に残せる最後のイベントなのだから、迷惑なんて最大限にかければいい。 死ぬのはダメと言うけれど、医者もリア友も……誰一人その責任を取ってく

          「死にたい」の裏側にあることばたち

          自己紹介兼ポートフォリオサイト 2024年8月更新

          はじめに 2014年よりライター・編集者として活動しております。 1987年4月3日生まれ。先天性の身体障害があり、いわゆる「車椅子ユーザー」です。 高校〜大学まで車椅子の陸上競技をやっており、大学時代にはパラリンピックの予選など、多くの大会に出ました。 このほか、大学在学中に「身障者がいろんな経験をできる場所を作りたい」と考えレクリエーションインストラクターとして学生団体を設立。障害児向けに放課後デイみたいな活動をやっていました。 その後、民間・行政への勤務を経て201

          自己紹介兼ポートフォリオサイト 2024年8月更新

          揺れる心の真ん中で

          サイコーにキュートな彼女と死別して、もうすぐ2年9ヵ月になる。 彼女とは高校のときに出会い、そこからほぼ毎日顔を合わせ、たわいもない会話、ときには真面目な話もしてきた。そんな僕たちが2年9ヵ月も会わないのだから、これは大事件と言える。 「時間が薬になる」 死別後、周りからそんなことばを何度も何度もかけられた。ところが僕の場合、その逆だった。時間が経てば経つほど彼女に会いたくなるし、死のうにも死にきれず、ただ漠然と毎日を過ごしている。 朝は「今日も目覚めてしまった....

          揺れる心の真ん中で

          人の体は賢いけれど、燃料は作れない

          2021年3月20日。彼女が亡くなって1ヵ月半が過ぎたころ僕はODをした。 だが、これは「意図的に過剰摂取しよう」と思ってやったのではない。水分も食事も摂れず、流れ作業のように薬を飲み続けていたら、何かの拍子に薬が効き過ぎてしまいODと似たような状態に陥ってしまったのだ。 なので、表現としては「ODをした」よりも「ODになってしまっていた」が近しい。 断っておくとODする簡単じゃない。人間の体には防御反応が備わっていて、処理しきれない薬が入ってくると、神経と全身の臓器が「こ

          人の体は賢いけれど、燃料は作れない

          「たられば」がある人生もうつくしい

          僕は興味の移り変わりが速いタイプだ。陸上の大会に出て大会記録を更新したときも、2〜3時間後には次の大会で優勝するためのメニューを考えていたし、パラリンピックの予選で日本記録を出したときも、4日後には次の大会準備を始めた。それが良いかわるいかは分からないが、過去への関心が薄いのだ。記録なんていつか破られるし、たとえ僕が世界記録を出したとしても、10年後にそれを覚えている人はいないだろう。「過去より今が大切」、僕はそういうタイプだ。 しかし、それが”人の命”であれば話しは変わる

          「たられば」がある人生もうつくしい

          【2/18】死別経験者限定「zoomの会」を開催します

          もうド頭のタイトルですべて要件を言ってしまっているのですが、これは2月18日に「zoomで話せる人、話しませんか?」という告知noteです。僕としては参加してくれる方に少しでも『来てよかった』と思ってもらえるような会にしたいので、そう思ってもらえるよう、会の詳細と「これだけは守ってほしい」というルールを書き記しておきます(そんなに堅苦しいものではありません)。 「zoomの会」詳細18日の会は死別経験者限定とさせていただきます。顔を出さなくて良いTwitter(スペース)で

          【2/18】死別経験者限定「zoomの会」を開催します

          いつもキミとともに

          人にはいつか死がおとずれる。その「いつか」は50年後かもしれないし、明日……いや、もっと踏み込んで言うならば、今から2〜3時間後かもしれない。 ⁡ 2021年の2月、僕は高校2年から17年の歳月を共にしたパートナーを見送った。具体的な死因は彼女のプライバシーを守るため、ここには書かないが、あえて言うなら「病死」である。 ⁡ それは僕と義実家、彼女自身にとっても晴天の霹靂だった。 前月、会社の健康診断でほぼA判定だった彼女が、その1ヵ月後には病院のベッドで青白い顔をし、横たわっ

          いつもキミとともに

          「障害者スポーツ」から「障害者」を取り払うには何をすべきか

          「2022年4月ごろまでに、障害者スポーツを軸としたメディアを創りたい」 ライティングコミュニティーsentence(2022年7月末で閉鎖)や、フリーライター時代にお仕事でごいっしょしたことのある方には、僕は上記のように宣言していました。 目的は、2つ。 1つめは、いわゆる「障害者スポーツ」とくくられるものの認知度向上のため。 2つめは、現在会社員として人材系の企業でライター・編集者をしていますが、近い将来「フリーランスとして働きたい」と考えており、そのときに僕の名刺代

          「障害者スポーツ」から「障害者」を取り払うには何をすべきか

          キミと過ごした8ヵ月間

          僕には先天性の肢体不自由障害がある。肢体不自由というと聞き慣れないと思うが、いわゆる「車椅子ユーザー」だ。そのため3歳〜15歳まで3回の手術を受け、7回の入退院を経験してきた。 より正確に言えば、僕が2歳のときに手を開かない僕を不審に思い、病院へいったところ、医師から「この子には障害がある」と告げられたらしい。 とは言え、順番で言えば先に旅立つのは親。くわえて僕は2人姉弟の末っ子。 つまり大人になったら、是が非でも自分のチカラで生きていかなければならない。 そんな事情を僕の

          キミと過ごした8ヵ月間

          皿洗いを終えた心境を「総理のぶらさがり会見風」に書いてみた

          Q.法案(皿洗い)の成立を受けて、まずは今の心境をお聞かせください。 懸案となっていました法案を成立させられ「ホッとした」というのが正直なところです。この法案は、私自身の政治生命をかけて、不退転の決意で進めてきた法案です。それが無事に可決・成立できたことは素直に嬉しく、言葉では言い表すのが難しいですが「万感の思い」であります。 Q.法案成立のためには、野党との協力が不可欠だと思われますが、各党の党首に対し、どのように協力を申し出たのでしょうか? おっしゃる通りでございま

          皿洗いを終えた心境を「総理のぶらさがり会見風」に書いてみた

          良い文章の構成は「ONE PIECE」に似ている

          「どうすれば良い文章を書けますか?」 ライター・編集者という肩書で世に文章を出すようになって、今年で5年目。最近、こんな相談を受ける機会が増えてきた。 正直、「僕は必ず良い文章を書けます」と胸を張れるほどのキャリアもないが5年目にして見えてきたものもある。このnoteにはそれを備忘録として書いておきたい。 「良い文章」ってなに?まずは、ここからだ。よく書籍やウェブ媒体では「心を掴む記事」とか「読者の心を動かす記事」なんて言われるが、僕はその本質は『伝わる記事』だと思って

          良い文章の構成は「ONE PIECE」に似ている

          ライターもブロガーも「記事をつくる」という感覚で執筆したほうが良い

          こんにちは、岩手なすと申します。 ご覧のとおりふざけた名前ですが、普段はこの名前でライターとしてメディア運営などに携わっております。(会社員です) 土日も祝日もパソコンに向かって何かを書いていることが多いので、近所の人からは「(ろくに仕事もせずに)無職で物書きを目指している人」と認識されているかもしれません。 さて、僕は個人ブログを書いていたことをきっかけに、ライターへとキャリアチェンジした人間なのですが、ライターになって以来、友人から「なすは長い文章書けるから良いよね

          ライターもブロガーも「記事をつくる」という感覚で執筆したほうが良い