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私が初めて自分で買った本 #わたしが一緒に育ったロングセラー絵本


この企画を目にしたときに、懐かしい思い出がよみがえりました。


私の幼い頃はまだ本屋さんの本にビニールや紐はかかっておらず、立ち読みする人をちょっと邪険に店主が咳払いするなんて、今では考えられない光景がありました。
あまり、いいことではないですけどね。

立ち読みすると思いがけず興味をひくものに出会えたりしますし。
でも、暇つぶしの人も多かったり、そして子供たちもその中に混じっていて、私も。

そんなある日、どうしてもどうしてもひきつけられ、何度も何度も読み返すもなぜか気になって仕方ない本に出会いました。
悩みに悩んだ、幼い頃…小学生の低学年位でしょうか。お金なんてほとんど持っていない歳でしたが、

初めて、自分の貯めたお小遣いで買おうと決めた本が

『赤い靴』

でした。有名なアンデルセン童話で、たくさん出版されています。

その結末は、今は様々に変えられているものが多いですね。
残酷なシーンのないものもあります。

私の選んだのは、たしか文庫よりは大きな正方形の、子供用にアニメのような絵が大きかったものでした。

そして、そのシーンのあるものでした。
本当はどんな話なのか、調べればすぐわかりますが、当時の私の記憶のままに書くと、欲しくてたまらなかった赤い靴をやっと手に入れた女の子。どこへ行くにも嬉しくてみんなに見せたくて、止められてもその赤い靴ばかり履いてダンスをしているうちに、靴は脱げなくなり勝手にステップを踏み続け、女の子が疲れ果てても止まることはなく、もう死んでしまうかもしれないとへとへとで思うほどになりました。そこへ木こりのおじいさんが来て、足を切断しなければいけないと言われ止まるならと、斧で切断します。女の子の足先と共に赤い靴はダンスしながら遠ざかっていきました。なくなってしまった足に、おじいさんが木で義足を作ってくれた、それが現在の私の記憶にある内容です。


何に衝撃を受けたか。
それはずっと意に反して動き続ける赤い靴と、切り取られてもピョンピョンと跳ねている赤い靴。怖い。
この絵が、まだかなり鮮明に頭に浮かびます。


わがままを言ったばかりに、足を奪われてしまうなんて。
そして、代わりが木だなんて。

幼い頃おとなしく、わがままなんて言えなかった私には教訓としてというか、罰は下るんだなという恐怖心のような感じでした。



この記事を書くにあたって、調べ直してみたのですが、女の子は『傲慢の罪』を犯したとあり、悔い改めれば再び人生は開かれる、という解釈のようです。

もう今は、赤い靴に衝撃を受けた私はいないなと思ってしまいました。
大人になって、社会に出て子供を育てるうちに言いたいことは言わねばならない立場を経験し、おとなしいとは全く言えない人間になってしまった私は、まさに傲慢の塊。
時に人を傷つけ、人に傷つけられてきた。
人には優しくありたいけれど、それをいいように利用されたこともありました。
それでも、悔い改めて聖人でいられるならばそうあるべきなんでしょう。


子供の頃の絵本を読む。
「赤い靴」を思い出したときに、大人になって懐かしむだけではない考えるべきことに思い当たりました。

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