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CIVILSESSION 12: KILL

開催日:2018年4月14日 開催場所:東京・渋谷ロフトワーク10F

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第12回目のキーワードは「KILL」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者5名の計8名で行いました。

・及川昇(アートディレクター)
・竹ノ谷浩樹(写真家)
・根子明里(アートディレクター)
・藤巻洋紀(グラフィックデザイナー)
・堀川隆弘(エンジニア)

グランプリは伊藤佑一郎に決定しました。

CIVILSESSION開始から一年以上が経過し、12回目となった今回は初めての公開イベントとして渋谷のロフトワークにて開催いたしました。参加者も最多の8名となり、合計3時間弱の長丁場なプレゼンテーションとなりましたが、30名を超える大勢の観客の方にお越しいただきました。過去11回の会場よりも大きなスペースでのプレゼンテーションでしたが、参加者それぞれがそれに備えたかたちで見事大盛況となりました。

格闘技から着想したカメラを使ったオリジナルの遊びを作品とした伊藤は、動画で披露した試合風景の滑稽さと写真の意外な仕上がりで会場を沸かせ、グランプリを受賞しました。
杉浦は人や動物が何かを直接/間接的に殺すことによって生存しているという点に着目し、本人が過去数日間で殺した生物たちの遺影40点を公開。根子敬生はKillを「自分を動けなくするもの」と捉え、可愛い子が優しい言葉をかけて自分のやる気を削ぐウェブサービスを提案。根子明里は、本人を萌え死にさせる猫を「自分を殺すもの」として、その猫が無限発生するゾートロープを発表しました。
及川はキーワードと相反する言葉に着目し、「kill」と文字を打ち込むと自動的に「love」に変換されるフォントを開発。藤巻はkillを「そのものの機能を停止させる」という言葉として捉え、自分の持ち込んだ3つのものをkillするパフォーマンスを披露。竹ノ谷は自分の写真作品に関するディスカッションを展開し、観客から質問を受け付けて対話形式のプレゼンテーションを展開。堀川はゲームで相手を倒すことを指す言葉「kill」と関連付けて、失われた時間を取り戻すアトラクションゲームを実演しました。

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①杉浦草介(デザイナー)/殺

殺す/止める/停止させる/抑える など、killには様々な意味がありますが、個人的にその単語を聞いて思い浮かぶのは「殺」という文字でした。
人は普段「殺す」という行動からかけ離れて生活しているように見えます。でも実際には米/肉/野菜などの食べ物、普段使う紙や木材など、身の回りの多くのものは元々生き物であり、生存するためにはそれらを自分の都合に合わせて殺す必要があります。これは人間に限らず、特に食物という点ではおそらくほぼ全ての動物が同じく「他の生物を(何らかの形で)殺す」ことによって生き永らえていると思います。
過去数日間の自分が生き残るために、いつか殺された生物の遺影を作りました。自分が使ったものや、食べるものの原材料をリストアップした結果、四十点の遺影ができました。自分は犠牲になった生物に「常々日々感謝しながら犠牲を忘れず」生きてるわけではありませんが、自分の生存にはそれらの死を伴う、ということは知っておくべきだと思います。

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②伊藤佑一郎(写真家)/BATTLE SHOOTING

今回のキーワードである「kill」を作品にしようと考えていた時、人生で初めて格闘技を見に行く機会がありました。桜庭和志が立ち上げたQUINTETという寝技オンリーの団体戦です。それを観戦してきて、ちょっと気付きました。「kill」は決して一方的ではなく、「kill」されそうであればそれから逃れようとするものもいる。その殺そうとする者と殺されまいとする者の攻防を作品に出来ないか。

バトルシューティングという遊びを思いつきました。
ルールは
・打撃や寝技など相手の体にダメージを与えることは一切なし
・カメラで相手の顔をより多く撮影した方が勝ち
・1ラウンド3分/写ルンですを使用し、どちらかが撮り切ったら試合終了
・相手に触れながらでないと撮影してはいけない
・相手に自分のカメラを奪われたらその場を5秒間動けない。顔を手で覆うことも禁止

写真としても面白いものが撮れていたので、写真集を作ってきました。
ただいま対戦相手募集中です、ご興味あればお声がけください。

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③根子敬生(デザイナー)/KILLERS!〜殺しちゃうぞ♡

私の家にソファがありまして、自分はソファに座ると、仕事があったり、待ち合わせの時間があっても「もうちょいゴロゴロしていけば?」とかとか、ソファさんからの温かい言葉のせいで、どうにもそこから身動きが取れなくなってしまうことがあります。
いわゆるそれは「自分が殺された状態」だと思うんですが、だからと言ってソファを作って持って行くわけにもいかないので、可愛い女の子が優しい言葉をかけてくるWebサービスのデモを作成しました。女の子が「今日は会社休んじゃえば?」とか「今日はもう飲んじゃえば?」とか、ガンバルやら、努力やらがどうでもよくなるような言葉を語りかけてくれます。
殺したい!じゃなくて、殺されちゃれたい!かもしれない。

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④根子明里(アートディレクター)/nyanfinity

かわいすぎて悶え死ぬ(萌え死ぬ)をコンセプトに、猫が無限発生する装置を作りました。

「悶え死ぬ(萌え死ぬ)」とは何か。もちろん比喩ではありますが…
心が1つの感情の許容量を超えてしまった時に発生する「気持ち悪い・不思議な」感覚。
その得体のしれない感情が、悶え死ぬ(萌え死ぬ)に近い状態だと仮定します。
作品中で、暗闇に次々と湧き出てくるのは、白い「可愛い」とされているもの。
ずっと見ていると「可愛い」と「気持ち悪い・不思議」の境が曖昧に溶けていく。

また、裏テーマとして「現実の固形物体を動かす」という実験作でもあります。
CADでデザインしたCG猫を、PC内でアニメーション制作した上で、
固形物体として3Dプリンターで32体(32コマ分)を出力。
そして、その固形物体としての猫を数列に基づいた波形上にならべ、
高速回転させることで、錯覚と残像を使って表現しています。
動かないはずの物体が動く。動くだけでなく増殖していくように錯覚する。
(ロゴもこの錯覚と残像の間に見える物体をテーマに制作しています。)

耳に張り付くループ音楽と合わせ、トリップ感ある作品に仕上げました。


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⑤及川昇(アートディレクター)/Killvetica 殺意を愛に変えるフォント

KILL(殺す)という単語は、普段の日常では使ったり使われたりすることのないとても強い言葉です。それゆえに非常に悩んだ今回のキーワードは、考えれば考えるほど凄惨な光景が脳に浮かび、だんだんと暗いイメージが頭の中を支配する様になってきました。できれば逆のことを考えたい、KILL(殺意)をLOVE(愛)に変られたら幸せなのにと思い、カタチにしたのが今回の作品Killveticaというフォントです。
フォントファイルのリガチャ(合字)を利用し、KILLと打ち込むと勝手にLOVEに変換されるフォント。でもこのフォント、取り扱いに注意が必要です。殺意と愛は表裏一体。愛と打ち込むと…


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⑥藤巻洋紀(グラフィックデザイナー)/モノを殺す

大勢の方が見ている前でさすがに人は殺せないので、モノを殺してみました。
対象は「本」「コーラ」「ぬいぐるみ」。できるかぎり捻りの利いた方法で、スマートな殺し方を目指しました。本は小口に糊を塗りたくり、コーラは何度も振った挙げ句にプルタブを切断。ぬいぐるみには三角頭巾を被ってもらい、可愛く死んでもらいました。
ただ、一見死んだように見える彼らも、蘇生させる方法はいくらでもあります。
人間は生き返らないけど、モノは生き返るんだなぁ、と。

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⑦竹ノ谷浩樹(写真家)/撮る側と撮られる側(搾取する側と搾取される側)についての考察

16年間、写真家・荒木経惟氏のモデルを務めてきたダンサーのKaoRiさんがnoteにて告発した件を受けて、私自身がこの5年間続けてきたポートレートシリーズ「#newmodernity」を、私自身のことも私の作品のことも知らない観客の皆様にみていただき、撮影者と被写体側の関係について思うこと、疑問などを質疑応答を交えながらディスカッションしていただく。

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⑧堀川隆弘(エンジニア)/Kill Time

ゲーム用語における「Kill」=「相手を倒すこと」と、英語の慣用句である「Kill Time」=「時間をつぶす」という連想と、自身が得意としているソフトウェアやハードウェアなどのテクノロジーを掛け合わせて、時間つぶし系体感アトラクション「Kill Time」を開発しました。これは文字通り「時間をつぶす」アトラクションで、時間を象徴するターゲットが地面に照射され、それを体験者が「踏みつぶし」ていくことで「時間を取り戻していく」ことを目的としています。ターゲットは「Killしてもよい時間」と「大切にしたほうがよい時間」の2種類があり、「Killしてもよい時間」をつぶすとその分の時間を取り戻し、「大切にしたほうがよい時間」をつぶしてしまうとその分の時間を失います。また、このアトラクションは目覚まし時計の裏にセットされたモーターと連動しており、時間を取り戻すと時計の針が戻り、時間を失ってしまうと逆に進んでいきます。時間の使い方に関する啓蒙を含んだ作品のように見せかけて、実際のところ時計をソフトウェアから動かすアトラクションを作りたかっただけかもしれません。

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