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インターネット物書きのはたらき方改善


九月も終わりますね。
気がつけば、ここ『視点』を始めて一年が経っていました。


取材記事ではなく、PR記事でもなく、オウンドメディアでも、情報商材でもなく、ただただ自分の視点を掘り下げてみたい……と始めてみた実験的な試み。さあ、ここだと存分に好きなことを書けるぞ、わたしはついに自由の身!! だなんて意気揚々と始めたものの、いざ書こうとすると、まぁ難しい。お題もないし、脳みそもない。あまりにも真っ白すぎて、自由ってほんっとうにむずかしい。


だから最初の頃は、輪郭のおぼろげな精神論ばかりになってしまって、正直、今読み返すと煮え切らないものも多々……。当然、読んでくれる方の数も伸び悩み。むしろ、当時から購読を続けてくださった方には、感謝しかありません。本当にありがとうございます。

それまでに発行していた『記憶に残るインターネットの使い方』と比べてしまうと、購読者の方はがくんと減少。つまりは収入激減。やっぱりそうですよね……と落ち込みつつも、悩んでは書く。悩んでは書くの繰り返しでした。


それでも「視点を、書かなければ……」というプレッシャーの中で過ごしていると、不思議と考える力も、書く力も育ってくれるもんでして。最近は、あぁ、良い文章が書けたなぁ!と満足できる回数もうんと増えて、それに比して、購読してくださる方もずいぶんと増えてきました。

そうして、最近ようやっと、受託仕事に頼らずとも、物書き一本で食っていけるようにもなりました。正直、めちゃくちゃ嬉しいです。受託仕事も好きだったけれども、それがあるとどうしても、「売上を伸ばすこと」=「大多数にとって正しいこと」を是として考えてしまう。今はそれよりも、まだ共感を得られなくても自分が信じることだけを書いて、それを世の中に出してみたいのです。道を作りたい。


そして道を作らにゃならんのは、はたらき方の部分も同じく。

私のはたらき方としては、たまにmilieuを書き、それはエントランスフリーで広く読んでもらいつつ、普段はnote『視点』を更新して、読者の方からお金をいただく……という二本柱。

いずれにしても、自分自身で内容やスケジュールをコントロールできるので、表現の規制もなく、過労を強いられることもなく、はたらき方としては、かなり良いバランスがとれているなぁ、と思っています。


さてさて、さて。今回は、いつもの『視点』とは少し毛色が異なりますが……私の思う、「これからの時代の物書き」に必要なスキルについて、あらためて考えておきたいな、と。「書く」スキルはもちろんですが、それ以外、その周辺の話です。



その1.
フリー物書きになる上で、あってよかった!スキルたち


・Webディレクション
・Web解析
・SEO対策
・SNS運用


……などなど。とはいえ、今となっては「スキルがあります!」と胸を張れないのですが、2015年に退職するまでの役職はWebディレクターでしたので、それなりに知識や実務経験があったのです。

どんなサイトだと離脱率が低いのか?
クリック率が高いバナーは?
シェア導線はどう設計すればいい?
リスティング広告はどう打つのが効果的?
ページランクを落とさないためには?


だなんてことばかり日夜ずっと考え続けていたので、フリーライターになってからも、「良い文章を書いたのに、広まらない!」というジレンマを抱えることがありませんでした。書くのも技術ですが、広めるのもまた技術。良い記事なのに広まっていない……というのは、運がないのでもなく、才能がないのでもなく、単純に技術不足なのです。

2017年頃には「WEBメディアでの情報発信をする前に、気をつけるべき26のポイント」みたいな記事も書いていたので、よければ参考にしてみてください……といいつつ、3年前の記事なので古いことも多いですが。



その2.
どんな空間に、自分の作品を置くのか


それに加えて、「どんな世界観の場所に自分の文章を置くのか」というのは、とっても大切なことなのに、案外おざなりになってしまいがち。

noteはカスタマイズ出来ないのが残念ですが、milieuは端から端までかなり細かく気を使って作りました。


ここで参考になるのが、アーティストの方々のはたらき方。

杉本博司さんや、名和晃平さんといった日本を代表するようなアーティストの方々は、自らの会社で建築家を雇っておられたり、建築家と合同で会社を立ち上げておられたり……


▼杉本博司さんと榊田倫之さんによる、新素材研究所

▼名和晃平さんが率いるSANDWICHが建築を手掛けた「洸庭」


作品を作るだけではなく、自らの作品をどんな空間に置くのか? というところまで、神経を張り巡らせているから、やっぱりすごい。作品だけをポンと置くのではなく、光の入り方や、人の動き方、音の響き方……さまざまな環境を自ら設計して、「鑑賞者にとって最高の環境」を用意するまでが、彼らの仕事。


デジタル空間においても、待機時間や、文字の色、幅、スクロール時の動き……さまざまな周辺要素が、文章の印象そのものを変えてしまう。アーティストには建築や音や光の専門家が、物書きにはWebやデザイン、UX分野の専門家が必要だよなぁ、と思うのです。



その3.
ここだけの話ですけれども……


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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。