全ての映画好きの原点。コロナの今だからこそ映画館に思いを馳せる、郷愁と愛の「ニューシネマパラダイス」
1作目のレビューはnoteのURLにも埋め込まれている、私の大好きな作品「ニューシネマパラダイス」(原題:nuovo cinema paradiso)を。
1988年公開のイタリア映画。ジュゼッペ・トルナーレ監督作。
郷愁 nostalgiaと愛 amore。
この2つが作品の初めから終わりまで一貫して描かれ続ける作品。
そして、いつの時代においても存在する娯楽としての‘‘映画’’というものが人々に与える役割をしっかりと感じさせてくれる本作。
映画が好きな私にとって人生を通しても大切な、象徴的な作品です。
ストーリーは
映画監督として名を馳せたある男性が、自分の幼少期や青年時代の恋愛模様を懐古し、故郷に帰還するお話。
幼少期より‘‘映画’’というものにとにかく魅了され続けた少年トトと、村で唯一の娯楽である映画館で映写技師を務める老人アルフレッドのやり取りが主軸となって物語は展開します。
物語の起承転結(トトとアルフレッドの関係性やトトの恋愛模様等)に焦点をあえて当てずに、レビューします。笑
特徴であり、魅力としても挙げられますが、本作は冒頭から終盤までシチリア島のアドリアーノ島を舞台にとにかく村の住人や広場での描写が多く登場します。
(鑑賞前の方は以下を参照ください)
(wikipediaより)
村人、街の様子、村人全員で村の唯一の娯楽である映画館に集うシーン。
それぞれのシーンがトトの視点として、幼少時代のもの・青年期・年を重ね老いてからの視点へと移ろって行くのが特徴的です。
幼少期のトト
青年期のトト
歳を重ねたトト(現代)
トトが年を重ねる中で、その時代の移ろいに併せて登場人物も年齢を重ね、人生を歩んでいく様子を、私たち観客は見守って行く事になります。
とにかくイタリアの街の様子が美しく、なぜかどこか懐かしく、新しさも感じられ…
また、エンリオ・モリコーニの手がける映画サントラはあまりにも美しく、日本でも度々バラエティ番組等のBGMで用いられているので、耳にしたことのある方も多いかもしれません。
ストーリー自体も非常に魅力的な作品ではありますが、以下であえて‘‘映画’’というテーマにフォーカスして、それ自体が担う役割についてお話ししてみます。
かつて、娯楽の代名詞であった映画。
その場にいる人々全員が同じ空間、同じ時間を共有する。
それとは裏腹に、作中でも表現されている通り、観ている側の鑑賞方法は様々で、鑑賞後に飛び交う感想や意見も多様性に満ち溢れる。
娯楽と言えばその可能性が無限に広がっている現代とは全くもって対照的な世界が描き出されています。
とにかく多様な選択肢の中で、それを享受するだけでなく、誰もが手軽に発信ができ、その発信の範囲もボーダレス化され、皆自分にあった娯楽を選択できる時代に私たちは生きています。
あるいは、自由を与えられすぎてしまい、溢れすぎてしまった選択肢から自分の熱中できるものを選択することが出来ずに、日々を淡々とこなす人も少なくはないくらいに。
そんな世の中を生きる私たちですが、私にとっての熱中出来るものは改めて映画鑑賞だと声高く叫びたくなる、そんな映画です。
映画鑑賞と一口に言っても、ストリーミング配信が主流になった今、オンラインでの鑑賞も増えているのが現状です。
実際に私も利用しているひとりではありますが、改めて映画館に行くことの意味やその喜びを思い出すことの出来る作品だと感じています。
作品の鑑賞スタイルとしてどちらか一方に偏るのではなく、映画館に足を運ぶこと、オンラインでの鑑賞が共存する世の中になっていけたらと密かに思ってはいます笑
オンラインで今日は観るぞ!と意気込む日には、いつも自宅のソファーをクッションで埋め、ポップコーンを用意し、自分だけの特別空間を演出して観ている私(笑)。
オンラインで作品を再生するその瞬間。
自分だけの空間、時間が展開する瞬間です。
けれど、もしかしたら今後2度と出会えないかもしれない、あるいはこの作品の様に、自分の住む地域に存在する映画館で、言葉を交わすことはなくても同じ時間を何度も共有しているかもしれない誰かの存在を感じるだけで、これからの映画館で過ごす時間が変わってくるかもしれないですよね。
長くなりましたが初めての寄稿にドキドキしています。
これを読んでくださった方にとって、映画でも何でも良い。
忙殺される日常から、この時間は自分にとってparadisoだと感じることの出来る何かが存在しているといいなぁ、と。
余談ですが、山田洋次監督が手がけ、菅田将暉さん、永野芽衣さん出演で実写化予定である、原田マハさん著の「キネマの神様」という小説内においても本作は重要なキーとなっているので気になった方はこちらも併せて読んでみてはいかがでしょうか。
現在、新型コロナウイルスの影響で、閉館している映画館も多くあります。
ポストコロナにおいても、存続が危ぶまれる劇場はきっとこれから多く出てくるでしょう。
映画業界に身をおいている訳でも何でもないですが、そんな映画館に1人でも多くの人が足を運ぶきっかけになればと願いを込めて。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?