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ストーリーを語りだす 世界のデザイン・マップス

昨日、書店で一目惚れをして購入した。

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原書はドイツの出版社・ゲシュタルテンから出ているとのこと(表紙裏の内容紹介より)

実在する街町や国の地図ばかり集めた作品集なのだけれど、デザインに重点を置くことで、地図というものがこれほどに個性豊かで物語性にあふれた作品に仕上がるのだということに驚く。もう、一度開いたら夢中になってしまって、ページを繰る手が止まらない。一周見るだけでは止まらない。

緊急事態宣言発令以後、なんどかGoogleマップで世界を旅した。数年前からチェコをはじめとした東欧に興味を持っていて、チェコとポーランドへデジタルトリップした。はやく5Gが普及して、もっとVRが進歩してほしい。

地図というのは愛おしい。Googleマップは便利だし、ゼンリンの地図も結構な長時間、眺めて過ごせる。行ったことのない遠い国の地図はもちろん、住み慣れたつもりでいる地域の地図も、よくよく見ると発見がある。ここと、ここが、この道でつながっているのか! とか。(近道だと思って実際に行ってみたら、ジェットコースターのような峠道で、普段使いの道の1.5倍くらい時間がかかった)

地図があれば、どこにも行けなくても、どこへでも行ける。

使い慣れた地図は実用的だけれど、苦手意識がある人も多いんじゃないだろうか。「地図が読めない~」なんて言葉がタイトルの本も、あったみたいだし。(地図好きな女としては、あのタイトルは許さない。主語の大きなひとくくり、ダメ絶対)

本書で紹介されているようなデザイン・マップがくれるわくわく感は、地図に苦手意識がある人にこそ感じてほしい。
この本は、アートブックのくくりであって、実用地図ではないけれど、「地図は面白い!」という人間が、地図のどういうところを面白いと思っているのか、ちょっとわかってもらえる気がする。

と、ここまで地図好きっぽい感じで書いてきたけれど、私が本書を手に取ったのは地図に目が無いからではない。

実は、昨日本屋へ行ったのは、配色サンプルの書籍を見たかったからだ。いくつかの配色サンプル集を、デザイン書籍の棚で見ていた流れで、隣にあったアート書の棚で出会ったのだ。

ニューヨークも、ロンドンも、パリも、行き慣れた街ではないけれど、地図を見慣れた街ではある。パッと地図を出されたら、パリだ、ロンドンだ、と瞬時に判断できる人はままいるだろう。

そんな、見慣れた街も、地図のデザイン一つで全く違う顔を持つ街に変わる。観光地図、とひと言に言ったって、名産品に焦点を当てるのか、名所に焦点を当てるのかでその地図が語る物語は全く違うものになる。絵で表現するのか、文字で表現するのかでも印象は変わる。本書はそのことを楽しくお腹いっぱいに教えてくれる。

加えて、タイポグラフィとカラーデザインの宝庫にもなっている。地図なんだから、実用性よりデザインを重視しているといったって、それがどこの地図なのかは最低限の情報として伝わらないと意味がない。ページを開いた瞬間、ぱっと見ではごちゃっとして見えても、細かく見たいと興味がわくデザインになっている地図からは、目が離せない。そういうデザインが、200ページ以上、ぎゅっと一冊になっているのだ。

見やすいデザインの勉強になって、絵本のようにストーリーで遊ぶことが出来て、おしゃれな装丁が可愛くて癒されるし、ちょっとした各国の地理を知る事も出来る。

この一冊、優秀過ぎる。

次は、同じくグラフィック社から出ている『映画プロップ・グラフィックス ストーリーの中の小道具たち』を狙っている。こんなの絶対面白い。


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