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農業の楽しさを見つけて:ハラシモベース細川貴司さん

※こちらは雑誌「1番近いイタリア2022年春号」の生産者取材記事になります。

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農業の楽しさを見つけて:ハラシモベース細川貴司さん

ご紹介を受けて、イタリアから香川にZoomを繋ぐ。聞きたいことが沢山ある。ホームページから農業の楽しさが伝わってくるからだ。「すみません、直前まで作業をしてまして」と爽やかな笑顔で入ってきたのが、今回インタビューをさせて頂く細川貴司さん。農家の4代目として農業はもちろん、地域の酒蔵を使ったコミュニティ運営など、山の地域を担う活動を幅広く行っている。そんな彼が見つけた農業の楽しさとは。これからの農業のライフスタイルとは。彼の等身大の想いに迫る。

なぜ農業を?

自分は農家の長男として生まれました。幼い頃は祖父が先代から受け継いだ農地を耕していて、父はサラリーマンとして働いていたので、娘の母が手伝っていました。父の転勤で香川以外を転々としていることも多く、自分はあまり土を触らずに育ちました。学校を卒業してからは、自動車の整備士の仕事に就き、8年ほど働いていました。

しかし、自分が整備士として働いている間、だんだんと歳を重ねた祖父が農業を行うことが難しくなり、母が作業を行い、土日は自分も手伝ったりしていました。母も無茶をしていたので、怪我をして収穫が間に合わないことが2年続きました。そんな様子を見て、もともと農業に戻ってくる予定を早めて、29歳の時に就農しました。

そこからどんな農業人生を?

自分は今農業をはじめて7年目ですが、はじめは新規就農者として、5年間の売上目標を立て、その目標達成に向けてがむしゃらに働いていました。ところが、3年経った時に、自分が目指していた農業ライフと現状の生活がかけ離れていたのですね。売上のために面積を広げる。広い面積を耕すために時間に追われる。これが自分の目指す農業ライフなのだろうか。一度、売上目標にがむしゃらになりすぎず、自分のスタイルを見つけようと思ったのです。自然の中に生きることに正直になってみたい、そう思いました。

そこで、自分がどうやって農業を楽しみながら生きていけるかを考えました。農業従事者の中には自分と同じ境遇で辞めていく人々も多いと思い、自分が出来るライフスタイルの提案をしたいと思ったのです。農業は伝統的な慣わしに沿ったルールが多いのですね。人と違うことをしていると、真面目にやっていないと思われたりする。だからあえて人がやっていないことをしてみようと思いました。「何か面白いことやりたいです」そう人に言ってまわっていました。4年目の1年間は異業種交流会に多く参加し、新しい学びと出会いを得ることが出来ました。

4年目の終わりくらいに、そんな異業種交流会の縁で、地域をより良くしたいという人々と出会いました。その仲間5人で地域に残る酒蔵「三豊鶴」を買い取り、そこで地域のイベントを開催したりゲストハウスを運営するコミュニティスペースを立ち上げました。私たちはお酒を作ることは出来ないけれど、ここに集う人々の出会いで人が「醸造」される場を作りたい。そんな想いで活動しています。農家なのにこんな活動までしていたりする。保守的な部分が多い農業の分野で、チャレンジしていける環境を作って、後輩たちが困った時に「あ、こんなことやっても良いんだ」と思ってもらえたら良いなと思っています。

農業の楽しさを見つけて

そうして自分なりの農家としてのライフスタイルを見つけていくうちに、農業にも楽しさを見つけられるようになってきました。今まで農協出荷をしていたので、売上目標のために効率を重視していたのですが、人との出会いが広がり、直接お客様と繋がる販路を作れたことで、お客様の喜んで下さる声を聞いたり、自分の作ったものの美味しさを直接伝えることが出来るようになりました。

キャベツは8年前、就農直前に知り合いの農家さんから余った苗をもらったので、初めて栽培してみました。気温などの条件も違い、最初は上手く育たなかったのですが、師匠に教えてもらいながら、植え付けの時期を変えてみたり、3年目からようやくまともに収穫出来るようになりました。今では寒暖差が激しいことを逆に甘いキャベツを作ることに活かせるようになってきました。こうして農業の楽しさを見つけている日々です。

これからの挑戦とは

今から農業を始めようと思っている方、今なにか違うなと思っている方々に、農業って楽しそうって思ってもらえるような、自分なりの農業のライフスタイルを提案したいです。

地域を守り地域と一緒に生きていったり、自分の時間を確保しつつ、自然を感じながら仕事をしていく。そういうことを伝えていける立場になりたいと思っています。バックグラウンドや考え方は違って良い。それぞれが身につけている知識を使いながら農業に関わっていける、そんな山の地域を作りたいと思います。

食べてに向けて

今や農産物は溢れていますよね。でも、その中に愛が詰まった農産物があります。生産者のこだわり、伝えたいストーリーがある。そんなことを感じながら、より美味しく食べて頂けたら嬉しいです!


ありがとうございました

いきいきと話す彼の話を聞くインタビューの時間はあっという間だった。農家の枠にとらわれず、挑戦を続ける彼は、今がとても楽しそうだった。そんな彼の想いが詰まった野菜や果物を味わうのが今から楽しみで仕方がない。

雑誌「1番近いイタリア」とは

日本の食材でイタリア家庭料理を楽しむ通信。

遠い地の高級食材を使うのではない。
地元の恵みをたっぷりと頂く。

美味しい部分だけ食べるのではない。
皮も茎も全部美味しく食べる知恵がある。

お金をかけるのではない。
手間をかけ、愛情を込める。

そんな自然体なマンマの料理の美味しいこと、美味しいこと。

何を食べてもしっかりとした味があって、温かくて、これを’豊かさ’というのだと、ハッとしました。

そんな愛するイタリアの、各地のマンマに教わった知恵と文化を、日本の皆様に日本の食材でお送りします。

ご購読はこちらより。


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