クリス

某出版社の編集・営業。 創作論が好き。 小説や映画、ゲームなど、エンタメに関するいろ…

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某出版社の編集・営業。 創作論が好き。 小説や映画、ゲームなど、エンタメに関するいろんなことを発信していきます!

最近の記事

2023年面白かった小説ベスト3

1位 プロジェクト・ヘイル・メアリー『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。 三体に続き、間違いなくSF史の名作ランキングに刻まれるであろう傑作。 設定が明かされていく最初のシーンから最高なので、できる限りストーリーに関する情報はなにも知らない状態で読みはじめてほしい。 私は面白いというウワサだけ聞いて読んだので、マジで人生史上でもトップクラスの読書感を楽し

    • 【感想】犯罪捜査ゲーム DETECTIVE X

      直木賞作家が手がける犯罪捜査ゲーム 今ならイベント割で20%オフで買える!?これはやるしかないでしょ! ということで師走の忙しさも極まる年末に、新宿のTOKYO MYSTERY CIRCUSの店舗にいって話題のゲーム”DETECTIVE X CASE FILE #1 御仏の殺人”を購入してきました! (リアル店舗で買わないとイベント割は適用されないのでご注意ください) 事前に在庫があるかどうか聞いたら「少ないですけどあります」とのことだったので売り切れてないことを祈りつ

      • 2022年面白かった小説ベスト3

        1位 自由研究には向かない殺人高校生のピップは自由研究で、自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。犯人とされている少年と親しかったピップは彼の無実を証明するため、自由研究を口実に関係者にインタビューするが…。 評判が良かったので期待値高かったんだけど、見事に応えてくれた。フェイスブックやネットを駆使した捜査にくわえて、容疑者のもとに直接乗り込んでいく度胸。主人公のピップの冷静ながら情熱な行動は、見ていて気持ちがいい。そしてなによりタイトルがいい。自由研究には

        • 【まとめ】SAVE THE CATの法則

          いちばん役に立つ脚本術 エンターテイメントに関わる人間として、いままでたくさんのシナリオライティングの本を読んできた。小説家が書いたものと脚本家が書くものでちょっと内容が違ったりするので面白いのだが、問題はどれもこれも小難しいこと。 とくに、いわゆる「三幕構成」を取り扱っている本は多い。 けどミッドポイントだとかサブプロットだとか、よくわからないカタカナにごまかされて、本質がわかりづらいものがほとんどだった。 本書は私がこれまで読んだ中でいちばん明快で、しかも実践的だと

        2023年面白かった小説ベスト3

          2022年の抱負

          2021年のふりかえり去年の記事を読み直してみたところ、散々な結果だった。 もっとクリエイティブな年に! と意気込みながら、さほど大したことはできなかった……。 たぶんLIFE SHIFTという本を読んですごく意識が高かったものと思われる。 1.小説を書く 一文字も書いてないな……。 今年は書きたい……。 2.マダミスを作る 最低でも3作はと書いてある。 リリースしたのは2作だけ……。 3.アプリをリリースする Swiftは途中で挫折……。 再開できる気がしない……。

          2022年の抱負

          2021年面白かった小説ベスト3

          私の読書傾向趣味は読書といえるのは、年間何冊くらい読んでからなのだろう。 なんとなく100冊という区切りがあるような気がして、とはいえ毎年50冊くらいというのがアベレージだった。 もちろん年に1冊でも趣味は趣味なんだけど、たくさん読んでる人のほうが説得力があるだろう。 今年は在宅の時間が多かったこともあって、なんとかぴったり100冊になりそうだ! ということで、せっかくなので今年のベスト3を記録しておきたいと思う。 どれも素晴らしい作品なので、ぜひ手にとってみてほしい。

          2021年面白かった小説ベスト3

          BestAnswersのご紹介

          BestAnswersとは?主にマーダーミステリーの制作・販売をしているサークルです。 プロのデザイナーが手がけているので、イラストやレイアウトがとってもお洒落なのが特徴です。 もともとはスプラトゥーンというゲームを通じて知り合った仲間なのですが、オフでも集まってボードゲームを遊んでいるうちにマダミスに出会い、いっちょ作ってみるか! と動きはじめたのが結成のきっかけでした。 サークル名の由来はちょっと特殊で、同じくスプラトゥーン仲間が以前ゲームマーケットで販売していたBE

          BestAnswersのご紹介

          2021年の推しラノベ

          忘年の彼方へ 今年のラノベ界でいちばんビッグなニュースはなんだろうか。 ぱっと頭に浮かんだのは「涼宮ハルヒの直観」の発売だった。 青春を彩ったあの名作の、10年ぶりの新刊となれば間違いなくいちばんだろう。 検索してみると、発売は202011月だった。去年じゃん。 月日の経つのは早いものである。 「月日は百代の過客にして〜」と綴ったのは松尾芭蕉だっただろうか。 最近ちょっと(急速に?)衰えはじめている記憶力に不安を覚えながら検索してみると、こちらは正しかった。よかった。

          2021年の推しラノベ

          学歴フィルターのその先へ

          能力主義は正義なのか?学歴フィルターに取り残された人たち 「努力は報われる」 成功した人たちは、決まってそう口にする。 大勢の学生を前に講演してくれと頼まれたら、おそらく私も同じことを言うだろう。 きちんと勉強をして、有名大学に合格し、名のある企業に就職する――といいうレールに乗っていけるのは、実はほんの一握りの恵まれた人たちだけだ。 とくに、これから本格的に勉強していこうという大学に入学した時点で、未来が大きく制限されてしまう学歴フィルターの存在は、フィルターにかかっ

          学歴フィルターのその先へ

          サンタさんになった話

          サンタさんの話題になると、いつもこの小説の冒頭を思い出す。 「涼宮ハルヒの憂鬱」は当時、おそろしいほど流行した。 たぶんみんなハレ晴レユカイを踊れたんじゃないかと思う。 そんな私もいよいよサンタさんになる番がきたらしい。 といっても、直接子どもにプレゼントを渡すのではなく、本を寄付してサンタさんになろうという活動だ。 ブックサンタになろう経済的に厳しい状況におかれている子どもたちに本をとどけるという活動を知ったきっかけは、ツイッターだった。 ずいぶんステキな人たちがいるも

          サンタさんになった話

          初めてボドゲを作った日〜ゲムマ2021秋〜

          ゲムマ参戦16人。 11月20日、ゲームマーケット2021秋、初日の東京都におけるコロナ感染者数だ。 何千人という感染者がいたオリンピックのころから打って変わって、世の中は平穏を取り戻そうとしている。 2021春はさすがに参加をためらったが、ようやく落ち着いてきたこともあり、今回はあの熱狂の渦へと身を投じることにした。 ボードゲームの祭典、ゲームマーケットへと。 前回の思い出ゲムマに参加するのはこれが二回目だ。 前回はちょうど1年前、BestAnswers(というサーク

          初めてボドゲを作った日〜ゲムマ2021秋〜

          【まとめ】ゲームデザインプロフェッショナル

          ゲームデザインできてる?ゲームマーケット2021秋に向けて、マーダーミステリーゲームを作っていると、ふと心配になることがあった。 私はもっぱらシナリオ専門で、デザインやイラストは丸投げしている。 もちろん「こんな感じでお願いします〜」というようなことは伝えているが、私はそのへんちゃんとしたお願いができているのだろうか。 そんな疑問を解決すべく、手にとってみたのが本書である。 ゲームデザイナーのお仕事って?あまり耳慣れないこの職業。 端的にいってしまえば「ゲームを面白

          【まとめ】ゲームデザインプロフェッショナル

          遅すぎた、あるいは早すぎたオリンピック

          せつなすぎる開会式2021年7月23日午後8時。 静まりかえった国立競技場の中央に、ひとりのアスリートが浮かび上がった。そこから始まるプロジェクションマッピングの鮮やかさに心打たれながらも、私が感じていたのは、一抹の物悲しさだった。 もしも、コロナがなかったら。 2020年の夏、満員の国立競技場で、5人そろった嵐がこの日のために用意された歌で出迎えていたことだろう。 東日本大震災からおよそ10年。復興五輪と題されたこの祭典は日本国民のくじけない気持ちを象徴するはずだった

          遅すぎた、あるいは早すぎたオリンピック

          ゲーマーに勧める株式入門

          株、投資信託、仮想通貨、NISA、iDeCo、不動産―― 資産形成の必要性がさけばれるようになって久しい。 いまや金融商品は金持ちが資産を増やすためだけのものではなく、コツコツと節約にはげむような我々一般市民にも欠かせないものになってきている。 ただ、あまりに商品が多すぎるし、株とか仮想通貨ってリスクが高くて怖そうと思ってチャレンジできないでいる方もたくさんいるだろう。 そこで今回は、ゲーマーにおすすめの株に限って紹介してみようと思う。 じつは家電系の会社には株主優待が

          ゲーマーに勧める株式入門

          『世界標準の経営理論』で出版界を考える

          従業員も、経営者目線を持ってほしい。 最近そんな言葉をよく耳にする。 私は法学部出身なので、ほとんど経済学とか、経営学というものに触れたことがなかった。 世の中の大半の人が経営のことについて、きちんと理論立てて学んだことはないのではないだろうか。 サラリーマンとしての心意気を解説するビジネス本は山ほどあるし、読んだこともあったけど、良い機会なので評判になっていた『世界標準の経営理論』を手にとってみることにした。 価格もさることながら、800ページという重みに、最後まで

          『世界標準の経営理論』で出版界を考える

          【感想】ザリガニの鳴くところ

          2021年5月17日時点で、今年ベストの本にめぐり会うことができた。 アメリカの作家、ディーリア・オーウェンズによるミステリー。 帯には堂々と、本屋大賞翻訳小説部門第1位の文字がおどっている。 2020年にアメリカでいちばん売れた小説というふれこみだが、それだけの素晴らしさが光った傑作だった。 ずっと震えながら、耐えながら、祈るように呼んでいた。 小橋めぐみ氏(俳優) Amazonにいくつか上がっている書評としては、これがいちばん肌になじんだ。 主人公のカイアは、

          【感想】ザリガニの鳴くところ