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2021年の推しラノベ

忘年の彼方へ

今年のラノベ界でいちばんビッグなニュースはなんだろうか。
ぱっと頭に浮かんだのは「涼宮ハルヒの直観」の発売だった。
青春を彩ったあの名作の、10年ぶりの新刊となれば間違いなくいちばんだろう。

検索してみると、発売は202011月だった。去年じゃん。
月日の経つのは早いものである。
「月日は百代の過客にして〜」と綴ったのは松尾芭蕉だっただろうか。
最近ちょっと(急速に?)衰えはじめている記憶力に不安を覚えながら検索してみると、こちらは正しかった。よかった。

というわけで、今年もあと10日を切った。
もうラノベを読む予定もないので、忘れないうちに記録を残しておこう。
テーマはずばり2021年の推しラノベ!
どれも最高なのでぜひ100冊ずつ買って応援しよう。

3位 楽園ノイズ(杉井光 電撃文庫)

 出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目に……
 無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち――ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音――によって騒がしく悩ましく彩られていく。
 恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

女装して動画配信をやったら人気が出てしまった主人公。
彼とバンドを組むことになるのは、それぞれなにかしらの問題をかかえた美少女たち。4つの才能が集まったとき、世界でいちばんアツい音楽が流れはじめる。

ラノベの七不思議の筆頭といえば、なぜか主人公のことを好きになってしまう美少女ヒロインだろう。
この物語の素晴らしいのは、彼らの関係性がきちんと音楽を通じて成り立っていくところだ。
『楽園ノイズ』に登場するバンドメンバーももれなく魅力的な女の子なのだが、みな高校生らしく内側に悩みをため込んでいる。

ふだん人にさらけ出すことのない想いを主人公は引き出していく。
音楽にかける情熱と、才能をぶつけ合うことによって。
天才が天才を魅了していくその様子は、まるでセッションが盛り上がっていくように、読者を熱狂へといざなってくれる。

一見、ラノベらしいフックにしか思えない女装要素も、また物語の大きなカギになっている。
彼もまた悩んでいる――自分に自信がないのだ。

そんな彼の音楽センスに惹かれ集まったメンバーの演奏を体感して、ようやくほんの少し、自分に自信が持てるのかもしれない。

ボーイミーツガールと成長譚。
青春小説にほしいものがたっぷりつまった最高のラノベだった。

最新3巻。
アニメ化するべき。


2位 魔女と猟犬(カミツキレイニー ガガガ文庫)


農園と鍛冶で栄える小国キャンパスフェロー。そこに暮らす人々は貧しくとも心豊かに暮らしていた。だが、その小国に侵略の戦火が迫りつつあった。闘争と魔法の王国アメリアは、女王アメリアの指揮のもと、多くの魔術師を独占し超常の力をもって領土を拡大し続けていたのだ。
このままではキャンパスフェローは滅びてしまう。そこで領主のバド・グレースは起死回生の奇策に出る。それは、大陸全土に散らばる凶悪な魔女たちを集め、王国アメリアに対抗するというものだった――。

まだ誰も見たことのない、壮大かつ凶悪なダークファンタジーがその幕を開ける。

あらすじが長いので要約すると、大国の魔術師に対抗するため、各地にいるヤバい魔女を集めて味方にしようというプロジェクトだ。

その使命を帯びたのは暗殺者ロロ。
先代は戦争で300人倒したというヤバい家系。

最近なろう系を読みすぎて主人公が無双するのかなと思ってたんだけど、そんなことはなかった。
むしろ弱い部類に入るんじゃないだろうか。

作者はたぶんHUNTER×HUNTERが好きなんだと思う。
魔術師の能力は”念”みたいに個性があって、特性を理解するまでに時間がかかる。
そのくせ大体が一発で致命傷なのでバトルの緊迫感がすさまじい。

その魔術師が束になっても勝てないのが魔女であり、その魔女を味方につけなければいけないという最高難度のミッションが課されている。

とにかく戦闘シーンが圧巻で、いままで読んだ作品のなかでもトップクラスに面白い。演出、描写、能力の内容、どれをとっても個性的かつ読みやすい。

それだけでも十分に良作なのだけど、キャラも良いし(とくに魔女)、そこまでやる!?ってくらいエグい方向に突き進んでいくストーリー展開も最高。
重たい設定のわりに文章は流れるようですっと頭に入ってくる。
ファンタジー好きなら読んでみて損はないと断言する。

あと、個人的にデザインがめっちゃ性癖に刺さる。
表紙絵の魔女はイカれた感じがして最高だし、章立ての切り絵チックなレイアウトがこれまた最高にクール。
編集者とデザイナーは天才だと思う。作家も天才なので、まさに天才集団の作品。

最新2巻。
アニメ化するべき。


1位 7つの魔剣が支配する


 春――。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。魔法使いの卵たちを迎えるのは、満開の桜と魔法生物のパレード。喧噪の中、周囲の新入生たちと交誼を結ぶオリバーは、一人の少女に目を留める。腰に日本刀を提げたサムライ少女、ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今始まる──。

魔法を使われるまえに剣で倒せばいい――そんな発想から、魔法使いたちは剣士としての技量も磨くようになった。

とまあとても心惹かれる設定なのだが、その実ほぼハリー・ポッターである。学校はマジでホグワーツ。

授業の様子に既視感しかなくてびっくりした。
そのうちハグリットが迎えに来そうな雰囲気がびんびんしている。

1巻はそんなふうにちょっと疑問をもちながら進んでいくのだが、ラストまで読んだとき、これは完結まで追いかけるしかないと決めた。とにかく最後までいってみてほしい。
ネタバレになるので伏せるが、メインストーリーの展開はバトルモノのなかでも屈指の難易度じゃないだろうか。

巻を追っていくごとに仲間たちも成長し、魔法学校という異常な場所で研鑽を積んでいく姿は危うくもあり、頼もしくもあり……。

先ほどの魔女と猟犬がHUNTER×HUNTERなら、こちらはワールドトリガーのような心理戦と集団戦がアツい。魔法というよりも剣技がメインで、意外と肉弾戦なのも良い。

王道バトルファンタジーのなかでもとくにオススメの作品である。

最新8巻。
アニメ化する。

アニメ化する!!!!
嬉しい!!!!!!!


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