見出し画像

2021年面白かった小説ベスト3

私の読書傾向

趣味は読書といえるのは、年間何冊くらい読んでからなのだろう。
なんとなく100冊という区切りがあるような気がして、とはいえ毎年50冊くらいというのがアベレージだった。

もちろん年に1冊でも趣味は趣味なんだけど、たくさん読んでる人のほうが説得力があるだろう。

今年は在宅の時間が多かったこともあって、なんとかぴったり100冊になりそうだ!

ということで、せっかくなので今年のベスト3を記録しておきたいと思う。
どれも素晴らしい作品なので、ぜひ手にとってみてほしい。

私の読書傾向として、推理、SF、ファンタジーというエンタメ要素の強い小説が好きだ。
あまり恋愛要素のある作品は読まないかもしれない。嫌いじゃないけど。

ちなみに、2019年のベストは三体Ⅰで、2020年ベストは三体Ⅱだ。
そして三体最終巻であるⅢは2021年発売……。


第3位 同志少女よ、敵を撃て(早川書房)

新人ながら直木賞にもノミネートされ、シンデレラ街道を駆け上っている。

主人公はドイツ軍に故郷の村を滅ぼされた少女。
ソ連の凄腕スナイパーに拾われ、自身もまた女性スナイパーとして訓練を受けることになる。

ソ連には実際に数多くの女性兵士が投入されていたそうで、そのなかにはスナイパーの部隊も存在していたらしい。
虚実ないまぜになった描写は、スナイパーと戦争という難しい関係性をじつにリアルに届けてくれる。

一撃にすべてをかける心理戦もさることながら、最後の戦いで気持ちいいほどに回収されていく伏線が圧巻。
なぜ推理小説でないのにアガサ・クリスティ賞に満場一致で選ばれたのか、その理由が痛感できるクライマックスだった。

主人公のもとに伝えられた「戦争は女の顔をしていない」という言葉が、彼女がこの物語の主人公であることを美しく証明してみせる。

とにかく新人とは思えない、計算しつくされたエンターテイメントの妙に触れてみてほしい。

第2位 三体Ⅲ(早川書房)

盤石かと思われた三体最終巻がなんとここでランクイン。
2位ではあるけれど、シリーズを通してみれば間違いなくSFの最高傑作だ。

巻を追うごとにスケール感を増していく世界観は、3で私の想像力を超えてしまった。
最後はなぜか文字なのに映画を観せられているような、脳の理解力がオーバーフローして直接映像となって流れ込んでくるような、そんな不思議な体験だった。

3はもはや量子論的なストーリー展開で、とにかく作者の頭の良さに感嘆するばかりである。日本は中国に勝てない。というか中国にはだれも勝てない。たぶん作家じゃなくて科学者になってたらホーキング博士にも負けないすごい偉業を成し遂げていたのではないだろうか。

とはいえ、1の奈落に落とされたような終わり方も、2の頭脳頂上決戦も、最高にドキドキするエンターテイメントだった。

会社では上司がめっちゃハマって、すさまじい速度でネタバレしてくるのでなる早で読み終わらないといけないというリアルな緊迫感もあった。

第1位 ザリガニの鳴くところ(早川書房)

優勝確実かと思われた三体をおさえて栄光に輝いたのは、2021年本屋大賞翻訳小説部門の大賞に選ばれた『ザリガニの鳴くところ』

作者のディーリア・オーウェンズはアメリカの動物学者で、なんと70歳での処女作である。
2019年のニューヨーク・タイムズのフィクションのベストセラーのトップに25週間ランキングという記録を達成したというだけあって、本当に素晴らしい作品だった。

タイトルの「ザリガニの鳴くところ」というのは、ザリガニの鳴き声さえ聞こえてきそうな、大自然に囲まれた静かな湿地帯のことだ。
そんな場所で暮らしているのが、家族に見捨てられてしまった少女。
街の人々からは異端視され、貧乏ながら必死に生きようとするが、運命がそれを許さない。

物語は街の人気者だった青年が死亡しているところから始まる。
少女と青年の間になにがあったのか。
長年、生き物に寄りそってきた作者によって描かれる自然は、まさに主人公の少女が見ている世界そのものだ。美しいだけではとても言い表せない豊かな感動を与えてくれる。

その一方で殺人事件はすこしずつその真相を明らかにしていく。
最後の一行まで、私はこの本を祈るように読んだ。そんなふうにして読んだ小説ははじめてだった。

極上のミステリ体験と、小説ならではの感情移入に、身を委ねてみてほしい。


早川書房の躍進

というわけで、なんと3作とも早川書房が占めるという結果になった。
もともと推理・SFやファンタジーが好きなので相性は良いのだが、これほどまでに良質な作品を立て続けに刊行している早川書房には、感謝しかない。

海外のベストセラーで売上を稼ぎながら、新人作家を発掘してドカンと売り出す。そんな好循環に入っていければ、出版界の未来はまだまだ明るいだろう。
来年もぜひ、マンガ一強のパワーバランスを崩す小説が出てきてほしいものである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?