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2022年面白かった小説ベスト3

1位 自由研究には向かない殺人

高校生のピップは自由研究で、自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。犯人とされている少年と親しかったピップは彼の無実を証明するため、自由研究を口実に関係者にインタビューするが…。

評判が良かったので期待値高かったんだけど、見事に応えてくれた。フェイスブックやネットを駆使した捜査にくわえて、容疑者のもとに直接乗り込んでいく度胸。主人公のピップの冷静ながら情熱な行動は、見ていて気持ちがいい。そしてなによりタイトルがいい。自由研究には向かない殺人。続編もあるみたいなので楽しみ。

2位 黒牢城

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。

なるほどこうやってミステリーにしていくのか……と驚きの内容。牢につながれながらも抜群の存在感を放つ黒田官兵衛と、徐々におかしくなっていく城内の描写が素晴らしい。米澤穂信は本当に小説がうまいなあと感嘆しきりだった。最後はちょっと心温まるような感じで、一気に書き連ねられる登場人物たちのその後がまた味わい深い。とてもおもしろい作品だった。


3位 少年の名はジルベール

「マンガで革命を起こす!」とアパートで仲間と語り合った日々。現在のBLの礎を築く名作「風と木の詩」執筆秘話…。少女マンガの黎明期を第一線で駆け抜けた竹宮惠子が、「創作するということ」を余すことなく語った自伝。

なんの前情報もなしに読んでみたところ、売れっ子少女漫画家さんの自伝的エッセイでびっくり。文章はすごく読みやすいのにイメージしやすく、漫画家は絵だけでなくセリフも練って書いてるんだよなあと納得。天才と近すぎたがゆえの葛藤や、書きたいものをかけるようになるまでの苦悩に共感。ストーリーを自由に操れるようになるまで、どれほどの秀作を重ねたのだろうか。はたからみてると自由に描きたいものを描くんじゃなく、アンケートの結果を通してはじめて読者と本気で向き合うことができたのが大きかったのだろうと思う。


というわけで2022年の個人的ベスト3でした!3位はエッセイだから小説ではないかもしれないけど許してください。
去年は3位で「同士少女よ、敵を撃て」だったので、それに比べるとちょっと小粒だったかもしれない。来年も面白い本にたくさん出会えますように。


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