珈琲は唐突に夢を叶える魔法を映し出す～伯爵～

夢が叶った。
それは、数年間心の片隅で大切にしていた小さくて大きな夢。

これまでnoteで600以上の投稿をしてきた中で最も反応をいただいた記事といえば、やはりコレが圧倒的。

偶然にもこんな素敵な写真を撮れてしまって以来、美しい漆黒の鏡が揺らめく珈琲を注文すると、それが何かを映し出さないかとじっと覗き込むようになった。

偶然は求めるほどに、案外起こらないものだ。
いつだって黒い珈琲は黒いまま、静かにコーヒーの香りを運んでくる。

ん～～～、美味ぁ。

いいんだ、大事なのは味だから。
でも、私の愛しい黒が別世界に繋がった時の、あの感動をどうしても忘れられなかった。

そうして続けているうちに、何度かそれらしいのは撮れることも出てきた。

非常口……。

よく分からん天井だけれど、凄くハッキリ映ったのでこれはアリでは。

紅茶だけど…色が濃いめのだと映るんだね。

これは……惜しいんじゃない？
ちょい良い感じ♪

そして秘めていた憧れ。
それはステンドグラスを映す珈琲。
SNSで見たことがあって、いいなあ、綺麗だなあと思っていた。

帰る前にどこかで珈琲でも飲んで一息つきたい。
そう思って入ったお店で、私は見た。

天井が、ステンドグラスなのを。

「お好きな席にどうぞ～」
迷わずその天井の真下の席に。
空席で良かった。

期待を込めて、ブレンド珈琲を注文した。

伯爵

あぁ、あああ!!!遂に。
これは「映え写真を撮らせる為に生み出された映えスイーツ」ではない。
美味しさを提供するために作られた普通に美味しい普通のブラックコーヒーが、偶然にも条件が一致して勝手に美しく輝きだしたのである。

ああぁ！？！？？？
凄い！！！綺麗！！！！

いいなと思ったSNSで見たあの写真は、しかし知らない誰かのもの。
著作権とか、そういう問題だけじゃなくて。
もしもその写真を盗んだって、その感動は決して私のものにはならないのだ。

だから、リアルな出会いを願っていた。
憧れていた。
まさかそんな、それが叶うなんて思うはずもなく入ったお店だったのに。
届いた。

その美しさは、まぎれもなく私自身の思い出になった。

美し過ぎて、嬉し過ぎて色々な角度から撮ってしまう。
その度、どんどん姿を変えていくよ。

叶うならばずっと眺めていたいけれど、やっぱり美味しいうちに飲まなくちゃ。カップを傾ける瞬間にもしっかりレインボーは黒い海を泳いでいて、美しかった。何か、神々しいものを飲んでいるような高揚した感覚を抱いてしまうが、普通に珈琲としても美味しい。
いや、ほんと美味しくて驚いた。

あ…ああぁ、スイーツと共に。
尊い、可愛い、綺麗、凄い………語彙力大丈夫か？
次こんな出会いがあった時の為に、女友達を言葉巧みに褒める練習でもしておこう。

モンブランタルト

大好きなチョコレートケーキもあるというのに、モンブランタルトを選んだ。なんでだろう。それは唯一メニューに「人気の」とか書いてあったから。

私みたいに信じて注文する単純なお客さんもいるんだから「人気の」は本当に「人気の」商品に書いてくれよな！！「利益率が高いからできるだけ買ってほしい商品」「他に書くアピールポイントないからとりあえず…」とか、そんなことはないと私は信じている。

さて。
大丈夫、これはちゃんと美味しい。

クリームはたっぷりながらフワフワ軽く、スポンジはそれ以上にフワッフワ。食べるのに全然力がかからない。

マロンクリームはもっとクッキリ濃厚な甘さだけれど薄い層なので、軽い生クリームとのバランスが非常によくとれている。

斜めに入った線が超美しや。
大きく潤いに満ちた栗がまた、大変良い。
そうそう、クリームの中にも栗が潜んでいるけれど、凄く柔らかくて。クリームの味わいのひとつとしてそのまま溶けていくんだ。恥ずかしがり屋だけど、マロンの風味をより広げる役割を立派に果たしている。

そしてアクセントは、さっくりのタルト！！
そういえばスポンジも使ってるのに、あくまでも土台はタルトなんだな。

クリームの軽さに少し添える、でも柔らかな印象を邪魔しないくらいのサックサクが良い感じ♪

珈琲ともよく合うし。
これなら「人気メニュー」として十分納得。

ふうぅ～～～、さて。

夢は叶った。
でも、これが最後の到達点だとは思ってない。
また異なる「綺麗」「素敵」に出会えるかもしれない。

私はこれからもきっと、その漆黒の鏡を覗き込む。
次はどんな世界に繋いでくれますか？