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家族はもっと自由でいい✨本屋大賞で2年連続考えた

少し前だが、本屋大賞が選ばれた。2年連続「新しい家族の形」を提示した作品だ。ストーリーは語る。もっと自由な家族を、と。


昨年の本屋大賞は『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)、今年は『流浪の月』(凪良ゆう)だ。2作ともいわゆる政府が推し進めたい「普通の家族」ではない家族を描いている。

普通の家族、とは男女が結婚して子どもがいて(それもできれば二人以上)、祖父母が近くにいるか田舎にいるというような。そんな家族は実はすでに少数派だ。いまだにそう言われることに辟易する。

ネタバレになるが、2作のストーリーを紹介する。お許しいただきたい。

昨年本屋大賞を受賞したのは『そして、バトンは渡された』で、優子という高校生が主人公だ。優子は幼いときに母がなくなり、父が梨花と再婚する。その父が海外赴任するときに梨花とは離婚することになるが、梨花は優子を引き取りたがり、二人で日本に残る。その後、梨花は別の男性と再婚を二度繰り返すが、必ず優子を連れていく。そして優子はいつの間にか再婚相手の男性と二人暮らしをしている。時を経て、優子自身が結婚することになる。

ここで強調されているのは、優子が誰のもとにいても幸せだったということ。二人の母と三人の父、その誰からもいつも愛されていた、と。

こういうことがあったらいいと思う。

誰かに愛を注ぐこと。人の愛を信じられること。

血がつながっていなくても、経験がなくても(親は誰でもはじめは初めてだ)、若くても、年が行っていても、男でも女でも性別不詳でも、大切にしようという気持ちが一番大切だ。その優しさが描かれていたから大賞に選ばれたのだろう。

ただ私はこの作品は少々無理もあるし、説得力に欠けると思っていた。

まず、父親が娘を置いていき、その父親から必死に娘を遠ざける梨花の設定、梨花が優子を預けるなら父親に戻すのが自然なのに、無理やり3度目の結婚をして、病気とは言え優子から離れるということ。

そのうえで優子が「私はいつも幸せだった」というのも不思議だった。愛されてはいるが、よくわからないままにあちこちに行かされ、頼みの綱の梨花には置いてきぼりにされる。本人の思いや葛藤が実に淡い。

確かにとても愛情にあふれた小説だ。でもある種のファンタジーのような感じだった。ただ家族の形は一つではないということを伝えてくれる。

それに比べると『流浪の月』はかなり複雑だ。

自由で仲のいい父と母のもと、愛されていた更紗は、父の死でショックを受けた母から放置される。親戚に預けられるが、今までと違う窮屈な生活の上、その家の息子に性的虐待を受ける。帰りたくなくて公園にいたら青年・文に声をかけられ、ついていく。二人は仲良く暮らすが、見つかって幼児誘拐と虐待事件として大きく報道される。大人になってからふとしたことで再開する二人は離れがたい気持ちを持つが、周囲からは決して理解されない。

二人は離れがたいが、決して世間からは理解されない。でもその中で二人は手を取り合って、何とか生きていこうとする。断っておくが二人には性的関係はない。

どうしようもなく相手を必要とする、それが恋愛ではない場合、どうしたらいいのか。それを突き付けられ、考えさせられる。

男と女が一緒にいたいと思う。一緒に暮らそうとする。普通は恋愛関係とされるし、結婚を求められる。求めるのは両親・親戚・会社などの組織・不動産屋・近所などなどだ。

でも恋愛以外でも、そういう関係があっていいはずだ。

気の合う男女がシェアハウスをするように。

でも一時ではなく、お互いになくてはならない、離れがたい関係の場合は難しい。

男と男、女と女でもいいはずだ。LBGTであろうとそうでなかろうと、いろいろな関係があるはずだ。

一緒にいなくても、どんなに不仲でも籍が入っていたら家族で、仲睦まじくともにいても籍が入っていなければ家族ではない。それが今の日本の現実だ。

しかし、なぜ夫婦ならいいのだろう。もともとは他人だ。籍を入れた途端に「家族」という名のもと、世間に受け入れられる。昔は顔も知らない相手に嫁ぐこともあったわけだ。

家族という殻から抜け出してもいい。自分が心地いいという関係の中で暮らしたい。

私は夫と息子と暮らしているし、一緒にいて心地がいい。ただ結婚が遅かったので、長いシングル時代にいろいろ言われることも多かったし、面倒なこともあった。

実家とも関係がいいとは言えない。

たまたま私は恋愛して結婚して子どもを産んで、世間の言う「家族という形」に入った。しかし、だから何なんだろう。そうじゃない場合もある。それでもいい。一人の時も心地よかった。

だから考え続けたい。

家族。形。自由になること。

自由な思考をすること。あっという間に「世間」や「普通」や「一般」にからめとられそうになる。でも踏みとどまって考えたい。

『流浪の月』もなぜあの愛情深かった母親が急に不在になるのかは解せない。娘が「誘拐」されても、帰ってこないものなのか。

でもそれは置いておこう。

ここまで深く、一緒にいたい人と人の関係性について描いたことに拍手を送りたい。そして主人公の二人が、その相手の手を離さなかったことに心から安堵している。

2作はともに新しい家族の形を示してくれた。

今、家族についてもっと考える時が来ている。自分の家族は、だれか。

友人、近所の人、親戚、仕事相手、好きな人。もしかしたら遠くに住む誰か。

もしも自由に家族を選べたら、どうだろう。私も考える。次世代につなぐために。









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