高校時代はまだ近いか☆もう遠いか~『犬がいた季節』感想文
高校時代、交換ノートをしていたことを思い出しました。
クラスの男女4,5人でノートを回しては、創作やイラストを描いて回していました。
なつかしくてちょっと恥ずかしい思い出ですね。
高校時代に回した交換ノート
私の高校は3年間クラス替えがありませんでした。
大学付属で文理に分けることもなく、選択科目のみで対応をしていました。
2年生の後半くらいから家族のように仲が良くなっていき、マンガや本が好きな仲間と自然発生的にノートを回すようになりました。
みんな萩尾望都が好きで、どの作品が好きかランキングなどを書いていたら、いつの間にか「11人いる!」登場人物のスピンオフ的なストーリーに。
10年くらい前に引っ越したとき、段ボールを整理していたら何冊か出てきました。その時は忙しくて読み返さずにまたしまってしまいましたが、さてどこにしまったやら・・・。
読み直したくなりました。
話そのものよりも、そこに友人たちの個性が出ていておもしろかったことをおぼえています。
『犬がいた季節』のコーシロー日誌
『犬がいた季節』(伊吹有喜/双葉社)に出てくる「八高(八稜高校)」には「コーシロー日誌」があります。
高校で飼っている犬・コーシローについて書かれている日誌です。
卒業時に世話をしていた生徒はその年の一番心に残ったことを書くんです。
平成の時代を3年ごとに生徒が巡ります。
F1のセナ、安室奈美恵の結婚やジョホールバルの歓喜、ノストラダムスの予言・・・。
ノートに書かれることで時代を感じます。
あった、そんなこと! なつかしく思い出します。
私もF1ドライバーのアイルトン・セナが大好きでした!
コーシローは、3年ごとに卒業していく生徒、新しく入ってきた生徒たちを見つめ続けます。
誰かを好きだとその人の前で体から出るにおいが強くなるから、コーシローにはわかるんです。
応援するけれど、伝えられないいくつかの淡い恋・・・。
高校に残されたコーシロー日誌には、思いが詰まっています。
高校時代はなつかしいか、まだ生々しいか
読んでいて、胸がキューンとしました。
なつかしい、この感じ。
不器用で、うまくふるまえなくて、何気ない一言を家に帰っても悔やんだり、イライラしたり、悲しんだり。
「恵まれている」といわれても家族のことや進路のことで悩み、「誰にもわかってもらえない」とつぶやいた日々。
仲のいい友人や尊敬する先生がいても、モヤモヤする日々。
そんな高校時代が描き出されています。
ほかにも家庭のこと、友情や音楽活動など、多彩な高校生活。
3年ごとにちがう生徒たちが登場する短編集ですが、全体を通した大きな物語になっています。
読みやすくもあり、読みごたえもあります。
私は同世代のトップバッター、優花と光司郎の話が好きです。
お互いに好きだけど、伝えられずに踏み出せない二人。
せつない・・・!
でもこんな恋をしたかった・・・!
こちらも本屋大賞の候補作です。
候補作では、先ごろ紹介した加藤シゲアキの『オルタネート』も高校生が主役です。
どちらかというと、私は『犬がいた季節』が好きです。
これは世代の差ではないかと思います。
加藤シゲアキはまだ33歳。
しかもアイドルで若さがあふれています。
作品には疾走感があり、今という時代をとらえていて、まぶしいくらいです。
現役の学生から20代、30代にはこちらの方が惹きつけられるのではないかと思います。
対して伊吹有喜は1969年生まれ、51歳です。
もう大人で、高校時代は通り過ぎてきた過去。
その後の苦労や経験があり、高校時代を振り返ります。
でもノスタルジーではなく、そこから歩んだ人生を描いています。
世代だけでくっきり分けるわけではありませんが、あなたがどちらを好きになるか、ちょっと聞いてみたい気がします。
世代以外の要因も含めて。
現役高校生には、私も『オルタネート』を勧めますね。
息子は『オルタネート』に興味を示していました。
(今は『お探し物は図書室まで』を読んでいます。)
もし読んだら感想を聞きたいですね!
あなたはどちらが好きでしょう?
ねえ、登場人物のだれが好き?
誰かに聞きたくなる、誰かと話したくなる小説です。
こちらは「オルタネート」について書いた記事です。
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本屋大賞候補作の記事です。
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