息子だけの特製スパイスをどうぞ
大人がかけている、おいしそうなもの、ちょうだい!
強いお願いがあった。
息子・スポッ太(スポーツを見るのが大好き)が1歳半くらい。
離乳食を終えて、保育園へ通い始めて、慣れたとき。
言葉はまだ少なくて、「ん、ん」と指さして訴えていたころのことだ。
毎日のご飯を作るのは戦争だった。
普通のごはんを作るだけなんだけど、足元に息子、短い時間、限られたメニュー。繰り返される「抱っこ~」の泣き声。
大変であまり記憶にないけれど、覚えていることがある。
夫はもともと辛いものが大好きで、タイ人の現地料理と同じ辛さのものを食べていた。
「お前はタイ人だ」と握手を求められたと自慢していた。
でも、おかずは子どもと同じ味付けになる。
薄味で、もちろんスパイス抜き。
物足りない夫はしょっちゅうコショウや七味唐辛子、山椒やラー油をかけていた。私もコショウや七味をかけていた。
それをじっと見ていたスポッ太。
ある日「ん! ん!」とスパイス瓶を指さす。
かけたい、ということらしい。
”お父さんもお母さんもかけていて、おいしそう、ずるい! ぼくも!”
という感じ。
繰り返し、かなり強く主張している。
しかし、これは渡せない。
かけたら、からくてわんわん泣くのは目に見えている。
困った私たちはあわてて台所へ走った。
数歩だけど。
そこで空の瓶を探す。
ガチャガチャガチャ・・・
あった~!
空いたスパイス瓶。
新たに何か入れようと、取っておいてよかった!
それを渡すと、スポッ太はうれしそうにこちらを見ながら
サッサッ✨
とかける。
何も出ていないんだけど。
うれしそう~に、ニコニコ😊
満足そうに小首をかしげて。
サッサッ✨
そしておいしそう~に食べる。
きっとあの瓶からは、スポッ太専用の特別スパイスが出ていたに違いない。
ほっとして、私たちも食事を再開した。
私たちのスパイス瓶はそっと隠しながら。
でもスポッ太のスパイス、美味しそうに見えた、な✨
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