[小説:紹介] スティーヴン・キングの小説 (1) [70年代]
小説の紹介もしていきたいと思います。
私はスティーヴン・キング中毒です。
彼のライフワーク『ダーク・タワー』が完結するまでに出された物語はほぼ読んでいますが、その後のはまだ読んでないです。
一冊ずつ記事にすると大変な量になるので、年代で区切って複数同時に紹介していきたいと思います。
まずは70年代から。
キング作品には作品間のリンクも多々あるので、それもネタバレしない程度に紹介したいです。
◎スティーヴン・キングについて
ホラーの帝王と呼ばれるアメリカの作家。
ホラー作家として有名だけど、ジャンルはファンタジー、SF、青春、児童文学などなども、多岐に渡ります。
映画化作品も多いので、知らずにキング作品に触れている人も多いかも。
有名な作品としては『スタンド・バイ・ミー』『シャイニング』『ショーシャンクの空に』など。
ただ、映像化失敗するケースも多い。
稀代の語り部とも言われることもあり、文章の中で炸裂する物語なのだ。
だから映像化が難しい物語なのかもしれないな、なんて。
映画とかドラマの中にちょいちょい本人が隠れキャラ的に出て来ることあるので顔は覚えておいた方が面白いよ。
◎リチャード・バックマンについて
キングの別名です。
キングは一時期、正体を隠してこの名前で本を出してました。
途中でバレちゃったんだけどね。
70年代に発表された作品紹介
キャリー
1974年発表。
キングのデビュー作です。
家では恐ろしく狂信的な母親に束縛され、学校では同級生にいじめられ、ついに限界に達した少女が文字通り爆発するお話。
思春期の始まりと特殊な能力の発動が重なり、なんとも切ないホラーなんだ。
新聞の切り抜き記事から徐々に何が起こったのか見えてきたり、バラバラの時系列をつなぎ合わせていく楽しみがあったりして、常に好奇心を刺激される作りになっています。
翌年、ブライアン・デ・パルマ によって映画化されヒットしたので映画を知ってる人も多いかな。
映画、ほんとに素晴らしい。ホラー寄りに仕立てないで、思春期を迎えたキャリーにフォーカスしてる感じがエモいのだ。
主演のシシー・スペイセクめっちゃかわいいし、若きジョン・トラボルタがイケメンすぎる。
呪われた町
1975年発表。
吸血鬼ものである。現代の感覚ではどっちかというゾンビものに近いかも。
街中が化物でいっぱいになる展開が定着する過程のひとつにこの物語がある。
今読むとちょっとありがちな感じしちゃうかもだけど、そのありがちはこれらの物語によって造られたものなのだ。
B級ホラーが好きな人にもおすすめ。
それから、この物語はキング作品にとっても重要な位置づけとなる。
なぜなら、キャラハン神父が出てくるから!!
キングの他の作品を読んでて、誰?このおっさん…と思った人!!!
ここに出て来るよ。
ハイスクール・パニック
1977年発表。
リチャード・バックマン名義で出された本です。高校生くらいの時に構想を始めたと言われています。
この本は内容的にキング本人の意思によって世界中で絶版になっています。高校の銃乱射事件とか思い浮かべちゃうからね。
だからそのうち読めなくなっちゃうだろう。
なので、少しだけネタバレで内容を書かせてもらいます。
これから読む予定のある人は飛ばしてください。
このお話はとにかく不気味。
多くのキング作品の特徴のひとつとして、やりすぎなくらいの人物描写が挙げられると思うんだけど、この物語では著しくそれが欠落してる感じがある。
キングによって造られた舞台に、登場人物が並べられて、それぞれが、自分の役割をやってる感じ。
仮想現実のシミュレーションみたいに、本物の魂は宿ってない…。設定として喋ってる。
それだけだったら怖くもなんともないはずなんだけど、めっちゃ心にグリグリめり込んでくるんだよ。
単なる設定の甘い薄っぺらな小説ではないのだ。
この物語のメインテーマはたぶん、ホームルーム。
冒頭の展開によりいろいろあって、死体がころがった状態で淡々と話が進んでいく。
大人が排除された教室の中で、これまで本音で語らなかったクラスメイトが、自己解放していく。
彼らは自分たちで深い話し合いができている気分になっている。
…いやいや、でも、そこ、死体が転がってるんですけど…。
という異様な状態がずっと続くんだよ。すげー怖いわけですよ。
日本語のタイトルから内容を誤解されそうだけど、パニックはない。
原作のタイトルは『Rage』、激怒なんだ。
絶版になってしまうのは仕方ないかと思うけれど、この本は決してむやみやたらに人を殺すような、ただのパニック小説ではない、ということをここに明記しておきたい。
シャイニング
1977年発表。
映画が有名ですね。
映画と原作で全く違うのも特徴です。ちなみに私はどっちも好きです。
キングの小説でどれが一番怖い?と聞かれたら私はこの本をあげると思います。
めっちゃ怖い。ダントツで怖い。
映画はどちらかという視覚的で不可解さの恐怖って感じになっていて、小説の方は自我が徐々に崩壊していくことを自覚しつつも制御できない恐怖って感じなのだ。
この小説を映画化するにあたって、その小説のメインである内面描写をバッサリ削ったキューブリックはマジで天才…と思うのであります。
映画『シャイニング』の恐ろしさが何なのか、よくわからん…て人はぜひ原作を読んでみてほしいです。
“シャイニング” の意味もわかります。感情移入するのは、幼き息子のダニーです。
超絶恐ろしい物語。そして最後に号泣させられる。浄化作用のある物語でもあります。
ちなみに、この物語の舞台のホテルがある山のふもとには、『ミザリー』 の舞台の町がある。
深夜勤務
トウモロコシ畑の子供たち
1978年発表。
短編集です。
日本語版では二冊になってるけど、元は一冊です。
どれもこれも奇抜なお話で面白いです。
『トウモロコシ畑の子供たち』は単品で映画化しているのかな?
短編なのに原作と違ってるらしい。キング作品の映像化はどうしてこうなるのかw
さらに、キングの短編は他の長編のスピンオフ的なやつが時々あるので要チェックなのです。
『波が砕ける夜の海辺で』は、殺人ウイルスが猛威を振るう長編『ザ・スタンド』と同じ世界っぽい。
『呪れた村〈ジェルサレムズ・ロット〉』は吸血鬼ものの長編『呪われた町』の過去の話。
『〈ジェルサレムズ・ロット〉の怪』は『呪われた町』の後日談。
他にも繋がりあるかもだけど忘れた…。
デッド・ゾーン
1979年発表。
もしかして絶版なのかなこれ。
予知能力を持ってしまったがために苦しむ孤高の男 ジョン・スミスを描く。
背景描写がものすごいんだ。70年代、激動のアメリカ。ニクソンが史上初めての辞任した大統領になり、ベトナム戦争が終わったころ。
ストーリーの端々に実名のアイテムや人物がふんだんに盛り込まれ、当時を知る人が読めばそれらの名前がリアリティを生み出す効果になるだろうし、私のような世代にとっては70年代を疑似体験できてとても興味深い。
物語の重要な要素として、選挙のシーンなどあるんだけど、日本と全然違ってて面白い。
ちなみに、“ジョン・スミス” は最もありふれた名前の代名詞的なもので、佐藤さんみたいな感じかな。
そんな平凡を望む男が未来を見る能力を持ってしまう…。
なお、キングの作品の中で、“フランク・ドッドの事件” という猟奇的な事件のことが語られることが時々あるんだけど、それの出所はこの小説です。
さらにさらに、数々のキング作品の舞台となる町 《キャッスルロック》 もここで初めて出て来る。
映画化してますが、見てないです。
ドラマもあるけど別物です。
死のロングウォーク
1979年発表。
リチャード・バックマン名義で出された本です。キングが大学生くらいのころに書いたものとされ、事実上の処女作となる。
上記で書いた『ハイスクール・パニック』でも触れた不気味さがこの作品にもある。
用意された舞台に登場人物が運ばれてきて、はいスタート!ってされてるような。
タイトルどおり、ただひたすら歩くだけ、止まったら射殺…という物語。
恐ろしいほどに淡々としている。
社会背景も時代設定もよくわからない。
ただ、競技のルールだけが我々に告げられて、参加する少年たちは憧れを持ってこのデスゲームに挑んでいる。
まるでディズニーランドのアトラクションのように整備されてコントロールされた極限状態。
その極限状態で繰り広げられる少年たちの交流…。
カリブの海賊に乗ってたら本当に撃たれて死んだ!!! みたいな恐怖が突然襲ってくる。
なんかちょっと感動したりもしちゃうんだけど、何のためにこんなことしてるの?? という根本的な疑問が置き去りのまま、我々はゴールへと運ばれて行くんだ。
以上です。
この中での私のイチオシは『シャイニング』です☆
▽第一弾 70年代はこちら
▽第二段 80~85年はこちら
▽第三弾 86~89年はこちら
▽第四弾 90~95年はこちら
▽第五弾 96~99年はこちら
▽第六弾 2000年代はこちら
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