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鳥獣戯画

7
今年に入って何となく書きなぐってみました。 今まで、龍とか鬼とか書かなかったのですが それはそれでおかしなものだろうと思って 書いてみたのがこれでした。 1部は終わりましたが又タ…
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2023年4月の記事一覧

鳥獣戯画 7

 
7       最初の終末
 
夜半過ぎに暴風雨はピークになるとラジオが教えてくれる。
希望でいけば何事もなく過ぎ去ってくれればそれに越したことはないのだけれど、こればっかりはそうもいっていられない。ただこれが気象現象で良かったのだけれど、戦争だ、大戦争だと、人間が余計なことをしたために、余計なものが余計なことが起こったのだとしたら。何かのどうでこうでと、心配は次から次へとやってくるのだ。もし

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鳥獣戯画6

 
6     紳士
 
夜の闇に乗じてそういうモノはやってくると言われがちだが。
みすぼらしい格好の紳士は、頭を深々と下げながら名刺を渡してくる。
事の始まりは、誰かが私の家のドア口をしつこくノックしてくるものだから、また隣の石系の人間が醤油を借りたいだとか、ラジオの音が少し大きいだとか言ってきたものかと思ったんだ。
『すみません。あたくしこういうモノです』名刺には死神だとか、ドラキュラだとかか

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鳥獣戯画 5

 
5    カタカナ
 
ご存じのとおり緑山猫は魔法を使うので有名ですが。
その緑山猫の信雄は昨日の晩から私の家に泊まりに来ていた。
「おはよう」信雄が起きた気配を感じて、私はそちらに声をかけてみる。
『んみゃあ』彼はオス猫特有の野太い声を私に放り込んでくる。
「んで、それはそうと君が拾ってきたそれは何だい」
埃まみれの人型ロボットが台所に座っている。
眠そうな目をゆるゆるそちらの方に向け、私へ

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鳥獣戯画4

 
 
4       コン
 
それを見つけたのは本当の本当に偶然で。
誰かが捨てたであろうガムの包み紙を拾ってごみ箱に捨てようとして気が付いたのさ。
ゴミ箱の後ろ側にちょこんとした、小さな小さな半透明のピンク色の立方体が二つ重なっている。言葉にして例えるなら、そうとしか言い表しようがないもの。目が一つ。目だというのも瞼のようなものが上の段に付いているので、目だと思ったのだが果たしてそれも目なの

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