見出し画像

私にとっては、あなたがこの病気の初めての患者です

このマガジンは、ある日指定難病と告げられた48歳母(僧侶)の日記です。
大半が、年増サザエさんのドタバタ放浪記となっておりますが、ご興味ある方は最初からお読みいただければ!


2023年5月24日 呼吸器内科の専門医に再診察してもらいに行く

健康診断後の再検査で「LAMという肺の難病かもしれない」というかなり強烈ワードを言われ、平静を装いつつも内心やっぱりビビりながら過ごす日々が始まった。LAMという病気についてはコチラ↓

さらに精密な検査が必要だからと別の病院への紹介状をもらった。

「呼吸器内科はいつも混んでるから、なかなか予約取れないかもなあ~。でも早く診てもらった方が安心だし、早めに見てほしい!って言っとくからねっ!」と、元気よくその再検査してくださった先生は言った。

その横で、とれるかなあ・・・と不安そうにつぶやいた看護師さんの声を私は聞き漏らさなかったが、その日のうちに電話があり、1週間後には専門医に診てもらえることになった。感謝感謝。

紹介状を握り締め、今日である程度はっきりするかな!?と意気込みつつ、その大病院へ向かった。夫もついてきてくれた。

が、その日分かったことは、指定難病というものは、なかなか指定されるまでに時間がかかるということと、レントゲンとCTの映像見る限り、やはりおそらくかなりの確率で

LAMなんじゃね?

ってことだけで、薬が出たわけでもなんでもなかった。

そしてLAMだと確定するためには、肺の生体検査をするしかないらしく、それはつまり脇の下を少し切り、そこから肺の細胞をちょっと取って、染色体を調べるってことで、検査入院しなきゃいけないらしい。ほう。なるほど。

しかも、染色体の検査はそもそも時間かかるものなので、結果が出るのはそこから約1月後!ながっ!!

「先生、この病気って一応薬あるんですよね?」
私はネットで得た情報をおそるおそる投げてみた。

「そうですね。治す薬ではないんですが、進行をゆっくりにできる薬が2014年に日本でも承認されています」
優しそうな、白髪交じりではあるけど顔の血色から見て思うに、きっと私より若いであろうその先生は答えてくれた。

そこで、それまで黙って聞いていた夫が先生に聞いた。

「そうなんですね。じゃあ、、、結果が出るまでに結構時間がかかるのなら、薬を先にもう飲み始めることはできないんでしょうか?」

私も同感だった。
進行がゆっくり進むことが多いと言われている病気だが、進行するには変わりない。それなら少しでも早く飲み始めてゆるやかにしてほしい。
すると、

「それはできません。確定していない病気の薬を飲むということは、ある意味、とも言えるんです。副作用もひとぞれぞれですが、ありますから」

優しい先生の口調がちょっとだけ強くなった。毒って言葉にもギュッとなった。

はい。すみません。ごめんなさい。そういうものなんですね。風邪薬とは違いますもんね。了解です。

「そうなんですね。分かりました。それでその、薬の副作用って結構強いんでしょうか?」
ドキドキ・・・。

「よく、分からないんですよね。私、この病気の患者さん担当するの実は初めてで。この薬、処方したことないんです」

・・・え。ちょっと待って。

固まる私たちに先生は続けた。
「とりあえず、次の受診日には呼吸器外科の先生にも診てもらい、必要な検査もいくつかして、検査入院のことも進めていきましょう。手術はその外科医が担当し、診療は内科の私が行っていきますが、100万人に数人しかない指定難病なので、経験のある先生がおられる大学病院とも連携してやっていきますので、ご安心ください」

そ、そうなんだね・・・。先生まだお若そうだし、初めてで当然だよね。そりゃそうか、ここ、田舎だし。県内全部合わせてやっと130万弱くらいだったかな確か。ほんと確率スゲーな。なんで宝くじじゃないの。とはいえさ、ちょっといろいろ不安よね。。。などと脳内では再生されていたが、

「はい、分かりました。どうぞよろしくお願いいたします」
と、冷静に頭を下げた。
ほんとに、よろしく、お願い、します・・・。

薬の内容や副作用についてはコチラ↓

なるほど。そうか。副作用。。。私は今まで副作用を気にするほどの薬を飲んだことは、なかった。結構こわいものだな。
今まで恵まれていたのだとも言えるが。

そしてまずは検査入院か。
実は私はこれまで結構入院はしたことがある。そして命に関わらない手術を何度かしたこともあるので、検査入院くらいは余裕に思えた。

直近では4年前、子宮筋腫と内膜症があったため、この同じ病院で子宮全摘手術をした。その時ついでに卵巣もひとつ摘出した。
卵巣自体は何も問題はなかったが、その時担当してくれた女医さんが、

「もう出産を考えていないなら、卵巣は2つあるから1つ取ったらどう?卵巣は1つ残せば十分女性ホルモンは分泌されるし、卵巣ガンのリスクを半分にできるよ!」

と提案してくださった。さらに

「大丈夫!追加料金とかいらないから!」
と元気におっしゃった。あ、ありがとうございます。それじゃあ、卵巣もよろしくお願いします。

そのまた数年前は、長年悩みのタネだった痔をとった。4個もあった!
子供は二人とも帝王切開だったし、高校生の頃は先天性耳瘻孔という耳の病気になり、ダンボのように片耳が前に向いてしまうほど、耳の後ろが腫れてしまい手術した。

全然余裕。肺の細胞とるくらい。まかせて。

その日の私は、何だか妙に肝が据わって落ち着いてさえいた。

もう既にそれまでに、ある程度はネット検索もしちゃってたし(結局した)、自分のCT画像が、この病気のお見本画像とそっくりすぎて、もはや「何かの間違いよ!難病のはずないわっ!」とか目をそらすレベルではなかった体とも思う。

きっと私、LAMなんだろうな。と確信に近く思っていた。

ただ、そんなに落ち込んでないつもりだったのに、娘が修学旅行でいなかった間に一度だけ、夫の前で本気で泣いてしまった。
そのとき夫は言葉は少なく、泣いている私をただ抱きしめてくれていた。そして彼もまた静かに泣いていた。

そのとき、初めての精神的山場をひとつ通り越した気がする。乗り越えた、のではなく、ただ通り過ぎた感じ。

だから再診してもらったこのときは、覚悟に近いものがある程度できていたのだろう。
とはいえ、病気というものはおそろしい。病気そのものとは別に、精神的な浮き沈みを生む。

そして、肺の生体検査ってそんな甘いものじゃないってことも、これから味わっていくことになるのだった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?