ハイカットローテンション
ハイカットのスニーカーは足がスルッと入っていかないから、毎度のように靴紐を解いて、2つ前の穴までたるみをつけてから、足を慎重に入れて左右に震わせて深重に最深部まで伸ばす。
縦のサイズにはちょうどよくても、横が細くて硬い。
縦のサイズ感と横のサイズ感が一致しない。これあるあるだよね。
一度そこに足を踏み入れると身動きは取らせてもらえない。
中指と薬指が狭い空間でぶつかって、地につくごとに衝突する。仮に力んで地を蹴るようなことがあれば、ひとたまりもなく倒れるだろう。違和感には気づかないふりをして歩き進めていたのも、そろそろ限界を感じた。
長すぎる靴紐は履き口を一周させてから結んで、解けずに硬く結んでいたのだけれど、緊張感が解けないままでは本末転倒だ。気持ち結び目を軽くしてあげた。そんな変わらない。
気分で選んだこのハイカット。今日履くべきじゃなかったな。
地面を蹴る前に痛みを噛みしめるようにのそのそと歩く。点検作業をするように痛みを確認する。
お洒落は我慢の文字が浮かぶ。
もともとは季節感を無視してまで好きなアイテムを身に纏うための謳い文句みたいなものだったような気がするけど、言い回しが似ていてこの瞬間脳に浮かぶ。
ごめんって。我慢しようと思った私がいけなかった。もっと気楽でゆるくあるべきだ。もうしないから。
いや、我慢っていうか、靴選びのときにもっとちゃんとサイズ比べておけば。急いでいたのかな。閉店間際だったっけ?
まあどっちでもいいや。次は我慢して履くよ。
自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。