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【読書記録】辛夷の花(葉室麟)

 どーも、筑前助広です。
 拙作「谷中の用心棒萩尾大楽」も店頭に並び、やっとこさ本日肉眼で確認する事が出来ました。
 現代小説のつもりで書いた、時代小説です。馴染みのない方でも読めると思うので是非、お手に取ってくださいまし!

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 さて、このタイミングで、葉室麟(敬称略)「辛夷こぶしの花」を読み終えましたので、ご紹介します。

<あらすじ>

九州豊前の小藩、小竹藩の勘定奉行・澤井家の志桜里は近習の船曳栄之進に嫁いで三年、子供が出来ず、実家に戻されている。近頃、藩士の不審死が続いていた。現藩主の小竹頼近は養子として迎えられていたが、藩主と家老三家の間に藩政の主導権争いの暗闘が火を噴きつつあった。藩主が襲われた時、命を救った木暮半五郎が志桜里の隣家に越してきた。剣を紐で縛り”抜かずの半五郎”と呼ばれてきた男が剣を抜く時! 小藩の藩政を巡る攻防と志桜里の思い。

装画/村田涼平先生

 まず、装画が素晴らしいですね。
 辛夷の花を見つめる女性は、志桜里でしょう。そして、手には物語のキーアイテムとなる紐。ああ、これだけで胸に迫るものがあります。

<感想>

「これは教科書だ」
 それが読み終えて、まず思った事です。
 時代小説、中でも架空藩の武家モノは「こう書くのだぞ」という、葉室先生からの指南書でした。
 僕と葉室先生との関係はもはや語りませんが、デビューしたこのタイミングで、この作品を読めた事は僕にとって大きなものになったのだと思う。
 というのも文壇で生き残る為には、これほどのクオリティが必要で、こんな作品を読んでいる読者さんを相手にしなきゃいけない。
 つまり、葉室先生は僕に対して、
「調子に乗るな。現状に満足するな。常に上を目指し続けろ」
 と、伝えたのではないかと、思えてならないほどの名作でした。

 物語は豊前の小藩が舞台。
 バツイチで気が強い主人公・志桜里の隣家に引っ越してきた男、木暮半五郎との交流を描くのが本作。
 気が強い志桜里と、飄々としながらも優しい半五郎。この二人の掛け合いが本当に素晴らしく、そして小気味いい。読んでいると、思わずこちらがニヤけて温かい気持ちになるほどです。
 ですがこの二人が政争に巻き込まれ、窮地に立たされます。その流れが見事という他にありません。
 手に汗握る展開に、ページをめくる手が止まりませんでした。
 また、脇を固めるキャラも魅力的で、まさに「教科書!」なんですよね。
 しかし、やはり小暮半五郎が素晴らしい。この一作で終わらせるのが勿体ないほどキャラが立っていました。葉室作品でもベスト5には入る男性主人公ではないでしょうか。

 素晴らしい葉室作品は色々とありますが、先生の直球どストレートな作風の「辛夷の花」はお勧めです。

読了日 2022/02/04


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