アルマジロな逃亡劇
シリーズ化第4弾。アルマジロなオトコが繰り広げる、くだらなくも不思議で不条理な世界をどうぞ。世のオトコたちがココロに思い描く妄想を実現するアルマジロの雄姿?をお楽しみください。
↑前回のお話。公園でひとり全裸男と化したボク。絶対絶命です…
やはりボクは反省が苦手だ。
ボクは近くの多目的トイレへと一目散にダッシュした。以前不名誉な形で人気となったところだが、中は意外と広い。鍵をかけ、無理矢理にでも寝ようとした。興奮して中々寝られなかったが、前日は妄想を重ねて夜明け近くまで寝付けなかったのだ。意外と早くに眠りについた。
強くドアを叩く音でボクは目覚めた。ドアを開けると、屈強なお兄さん数名と警官が立っていた。ボクの姿を見て呆然としている。いや、彼らは中に全裸オトコがいないことに驚いていて、視線がボクには向いていない。ボクは人目を避けるようにそっと四足歩行の体制をとり、ネコかイヌでも歩いているようなフリをした。全裸男のインパクトはすさまじいようだ。アルマジロなんて目にも留まらないらしかった。
そしてボクは自由になった。良かった。もう少しで犯罪者になるところだ。浮気よりタチが悪い。きっと謝っても許してはもらえないのだろう。アルマジロが法廷で立たされる絵を想像して微妙な気分になったが、全裸で立たされるボクを想像したら身の毛がよだつ思いがした。変身すること自体信じてもらえないだろうし、そもそも動機が不純すぎて同情の余地はないだろう。
通りを渡れば家に着く。気づけば、それなりに注目されているようだ。大型犬まではいかないが、それなりのサイズの鎧をまとった動物が単独でノシノシ歩いてるんだ。ジロジロと視線を受けつつも、全裸男に戻る前にさっさと帰還しなくては。ボクは愛玩動物と変態野郎という両極端のキャラを持つ特殊な生き物なのだ。チヤホヤされるか捕まるか、ボクは我が身の不幸を嘆きつつも、今は危機を乗り切った安堵の方が優っていた。
エレベーターは人目につく、階段にしよう。そしてノソノソと移動し、2階の踊り場にたどり着いた。そしてボクは偶然にも3軒隣のキレイなお姉さんに会ってしまった。
…男なる生き物は、いつ何たる時にも浪漫の心を忘れないものだ。
そこには何の学習も、何の反省もなかった。気づけばボクは愛らしい仕草大作戦を再度決行していた。意外とウケた。良かった。そばに近寄ってゴロゴロ大作戦だ。撫でてくれた。胸に飛び込んでふんふん*した。お姉さんはきゃっと言って笑顔だった。
嬉しい。もう死んでも良い…最高だ…
突然お姉さんが悲鳴のような声を上げ、ボクは恍惚とした夢の世界から我にかえった。
多くは聞かないで欲しい。できれば何も、聞かないでほしい。
何が起こったかなんて、聞かなくたってきっとわかってるよね。
ボクは逃げるように部屋へと走り去った。
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