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ドイツ・ブンデスリーガでの就活体験談。オファーを獲得するまでの話

今回はタイトルの通り、ドイツでの就活体験談を書こうと思います。最近書いたnoteを読んでいただけると、現在どこで何をしている者なのかがわかりやすいと思うので、貼っておきます!

長くなるので、早速イギリスとドイツでの就活 @プロサッカーチームの体験談をまとめていきます。


一般の応募


まず、イングランドのプロクラブは ”Vacancy”といういわゆる求人を、時期を問わず不定期で出しています。
LinkedIn やFacebook などのSNSで情報を集めて、自分が希望していたやポジションである ”Performance Analyst” に関する求人に片っ端から履歴書などを送って応募していきました。

ただ、誰でも応募できるので、それなりに応募の数もあるし、良い返信はまぁ帰ってこない。実際にフルタイムで働いた経験がない大卒はプレミアリーグや2部、3部、4部のクラブにとっては魅力的な人材ではないというのが現実です。

後は、あくまでも学生に向けた求人広告であって、SNSに上がっている役職はある程度、エリート候補者が決まっているという話も教授が言っていました。

※ 経験者として語らせてもらうと、計15~25個くらいのVacancy に履歴書などは送りましたが、面接に辿り着いたのはゼロ。代表選手の個人分析というユニークな経歴に、少しは自信を持って応募していましたが、このルートから席を獲るのはまぁ宝くじくらいだと思ってもらえれば…。

SNSでのダイレクトメッセージ

次に行ったのが、DM作戦です。自分が学生の時にどんな経験を積んだのか、分析官としてあなたのチームにどのような価値を提供できるのか、そして自分を信じるに値するスキルや理由、といったところを7,8ページくらいの書類に見やすくまとめて、デザインやメッセージも考えてすでにチームに所属している分析官に LinkedInでDMを送りまくる。

まずは直接、話を聞いてもらえるだけでも自分にとっては重要な突破口になり得たので、「Zoomで実際にプレゼンやスライドを見ていただけませんか…」「アドバイスやフィードバック頂けませんか…」といった感じで連絡をしました。

これはたまに返信をいただける。ただ、それで仕事が見つかるほど甘くはない。

返信は10件につき2、3件くらい。面接しようか、とかZoomで話を聞こうとか温かい返事をくれるのは20個送って1、2個くらい。

日本にいる方でも聞いたことあるであろうところで言うと、レスターやワトフォード、ブラックバーンなどの分析官の方が、「俺も大学生だった頃、仕事を見つけるのに苦労したから、境遇は分かるよ。Zoomで良ければ話を聞こうか…」など温かい返事をくださった。

長くなるので結論から言うと、DM作戦で仕事が見つかるほど、甘くはない…という感触。コネクションをつくったり、話を聞いてもらえたりで、自分を売り込む機会があれば、自分を売り込みスキルも磨かれていくっていうのはある。

※ リサーチとか準備とかメッセージを考えたりとかでかかる時間には見合ってないという側面もある。

選手やスタッフのコネクション

なので、次に、お会いさせていただいたことがある選手やスタッフの方に連絡して、所属チームのアナリストの方を繋げて頂けないでしょうか…とお願いをしたのが3つ目のアプローチ。

過去にプレーしていたチームの分析スタッフの方にまで連絡をして聞いてくださったり、選手を繋いで頂いたりで、本当に頭が上がらない…。

とは言え、先ほどと同じで、知らない大学生と1から信頼関係を築いてチームに迎え入れるまでの準備をしているほどの時間と余裕がない。

というのも、シーズンが終わり次第、休暇に入るし、すぐに新シーズンへの準備が始まる。その頃にはスタッフなども含めた”新体制”っていうのが決まっている。

そもそも分析官にコンタクトを取れても、人事権や予算はスポーツダイレクターなど他のお偉いさんが担っている。いくら分析と言う観点での戦力を示せたところでオファーに辿り着くにはまだまだ遠すぎたのを感じました。

ここまで書いた通り、イングランドのクラブでは就活をしようと思っても、チームや分析官の方に接近するだけでもある程度、時間と労力がかかるわけです。

コンタクトを取れても就労ビザの基準だったり、そもそもネイティブじゃない日本人を雇う特別な理由をつくるのが難しい。

大卒の場合はリーグや年代のカテゴリーを下げて、徐々にプロの環境にステップアップしていくと言うのが正攻法なので、自分はイングランドでの就活はいい意味で一旦諦め、他の環境を模索しました。

イングランドからドイツに目標を変更

ドイツでは、どのチームもサポーターに向けた公開練習があり、練習後にファンや子供たちが選手らと写真を撮ったり、サインをもらったりする場がある。日本でいう、握手会的な感じかな?

そして、イタリア、スペイン、フランスなどの5大リーグの他の国に比べて、英語が伝わる率が高い。

と言うことで、DMで送りまくっていた資料を大量にプリントして、履歴書10枚くらいを準備し、ドイツに乗り込みました。

ドイツでの就活は至ってシンプル。

  1. クラブのホームページやSNSで公開練習の情報を集めて、練習を観に行く。

  2. 練習が終わり次第、サインをもらったり写真を撮ったりしている子供たちに紛れて、事前に調べておいた分析官の方に突撃。

選手や監督とサポーターらの交流の場なので、分析官に話しかける人は皆無だし、「え、俺?」みたいな感じで驚かれるんだけど、「そうです、あなたと話したい笑」という感じで、挨拶をし、「3分だけ俺の話を聞いてくれ」と…

「リバプールの大学を卒業して、就活をしにドイツにきてます。昨シーズンは日本人選手のもとで分析の仕事をしていました。このチームに入ったらこのような仕事ができます。実際にスライドをつくってきたので、プレゼンさせてくれませんか」

みたいな感じ。

とにかくファンの人混みでの立ち話では埒が明かないので、なんとか興味を持ってもらい、クラブハウスの中に入れてもらうことが第一の壁。

英語が上手くないから、他のコーチを呼んでくるよ!っていうパターンもあるし、やべぇ奴がきた。とりあえず話を聞いてやろう…というパターンもある。(これがほとんど)

時間をいただけたら、事前に準備したプレゼンや、そのチームの改善できそうな点、その課題に対してどのように自分が貢献していけるのか、などなどを自分なりの言葉で伝えていく。わかりやすく言うと、このチームで働かせてくれ。仕事をくれ、と。

まずはドイツ1部、2部の日本人選手がいるチーム、過去に在籍していたチームなどを中心にひたすら足を運びました。

初日に行ったチームでは、自分の価値とかスキルとか、伝えたかったことを上手く伝えられずに、”オファーは出せないよ”、とすぐに言われてしまう始末。

次の日に行く予定のチームの街への電車移動でひとり反省会…。

どういう順番で、何を伝えて、どのように自分のメッセージを届けるのか。
どうやったら”自分”を売り込むのに最適な営業になるか。

自己紹介はどんな感じでとか、ポジティブなオーラが足りてなかったな、とか
明日は張り切っていこう、とか振り返りながら次の街へ。笑

デュッセルドルフからハンブルクは片道3時間くらいかかった気がする。
”自分” を売り込む営業は上手く行かずに、30分くらいで帰されたり。

「大学を卒業したばかりの実績もない、知らない子に、その場でオファー出せるほど余裕はないよ」と言われたり。めっちゃ正論だ。笑

”予算がないよ”と言われれば、「選手と俺の希望しているサラリーを考えてみてくれ。分析1つで減らせる失点もあるんだ」と食い下がってみたり、「3分だけで良いから監督と話させてくれ」と頭を下げて粘ってみたりするんだけど、なかなか上手くいかない。

スポーツダイレクターの方から直接、「この方法は賢明じゃない、諦めてくれ」とか「今の時期は忙しいんだ、他を当たってくれ」と言われたことも。

”私たちのクラブは必要としていません”というメッセージを、”あなたはチームに必要なピースとしてカウントされていません”という当時の現実を、毎日毎日、行く先のチームで突きつけられ、折れそうになる。(就活あるあるなのかな…。)

信念を失わないようにするだけで精一杯だったので、稀に話をゆっくり聞いてくれたチームがあると、心の底から感謝。応援したくなる。

持っていったスライドを2日間に渡ってコーチや監督など他のスタッフまでプレゼンする機会を与えてくれたチーム。U23のチームならオファーを出せると温かい案を考えてくださったチームもあった。

食い下がって食い下がって断られた後には、”明日はどこのチームに行こうか”と途方に暮れながら、”諦めるしかないのか…”と一瞬だけ現実を見てしまったり。

”本当にこんな思いまでしてやりたい仕事なのか…”と自分との対話が延々に終わらない日も多々。というかほぼ毎晩。

結局、自分は”プロサッカー選手を支える仕事がしたい”という切実な想いと、小さい時から”サッカー選手”が自分にとっての”憧れ”であり”かっこいい存在”でいてくれたおかげで最後まで諦めずに続けることができたのだと今、振り返って思います。

就活中は色々な壁にぶつかったわけだけど、そのような試練というか、難しい状況を経験をさせてくれて有難う。大学の4年間で何度も感動した”ヨーロッパのサッカー”のおかげで、ヨーロッパに残りたいという信念を持ち続けることができた気もする。

話を聞いてくださったり、初対面にもかかわらず、”頑張れよ”と短くも、かっこよく声をかけてくださった、ドイツで戦う日本人の方々。直接スタジアムでお礼を言えるようになるまでは折れたらあかん…となんとか、やり通すことができました。

自分の近い将来すら全然見えないながらも、続けようか、諦めようか、揺らぎながらも情熱だけは伝えようと必死だったあの15日間はこれまでにないくらい充実していました。

結局2週間ドイツを転々として”何者でもない自分”を売り込んだのだけど、自分が働きたいと思える条件と環境で雇ってくれるチームが見つからなかった。
これが2週間の旅の終わり。リアル。笑

大学の卒業式の前日までドイツで粘ったけど、一旦は式に出るためにイギリスに帰国。仕事は見つからないどころか電車の中にiPad を失くし、ドイツ旅は無念のタイムアップ。

参考程度に、ドイツで回ったクラブの全て。
すぐ仕事見つかるやろ、くらいでドイツに乗り込んだけど、
結局15日間、全国を旅することになった。良い思い出や。

卒業式後はもう一度、学生ビザの期限が切れるまで、イギリスでの就活をしていたけど自分が納得のいく条件と環境での仕事は見つからず…。

リーグのレベルや待遇を妥協してイングランドに残ろうかなと決断を迫られていたある日、

”あなたが電車に忘れたiPad がミュンヘン中央駅に届きました”と1件のメール。

iPadは国外郵送できないので、取りに来てください、とのこと。

仕方なく、ミュンヘンにiPad を取りに行くついでに寄った1. FC Nürnberg が、「こいつ、ついこの前も来たな」「しつこいな笑」ということで2週間のトライアルの機会を与えてくださり、日本人選手も獲得したばかりだから、という運も味方してくれて、ニュルンベルクが就活旅の終点の街になりました。万歳。

FC St. Pauli のキットマネージャーの神原さんと
奥抜侃志選手。対戦した際に撮っていただいた!

まとめ

長くなってしまったので、就活を通して学んだことを少しだけまとめます。

ドイツでの就活は無謀な挑戦にも見えたし、そもそもヨーロッパの5大リーグで分析官としてのオファーを獲得することが、普通に考えれば無茶なことでした。

公開練習で分析官や監督、コーチに直接売り込みにいく方法がクレイジーだと言われたりもしましたが、今振り返ってみると、無謀そうな壁を越えようとして、無謀そうなアプローチに挑戦したことも悪くない選択だった気がします。

なんなら、無理そうなことへの挑戦をした先に、新しいステージが開けた感覚を味わうことができました。

出典:宇宙兄弟

2つ目。どれだけきつい出来事があっても、諦めたくなるような厳しい現実を突きつけられて折れそうになっても、心配する必要はない。

仕事が見つからなくても、自分が思い描いていたことを否定されることがあっても、iPad を電車に失くしても(笑)

”そこからまた始まるだけ”だと学びました。

どんな出来事も「ここからだな」と、また始める勇気さえもっておけば、旅はずっと終わらないとうことを就活を通して経験できました。

この気持ちを忘れずに頑張ります。

iPad も仕事も見つかって良かった(笑)

長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想いただけるとかなり嬉しいです。

拡散してもらえるともっと嬉しいです。笑

今後もよろしくお願いいたします。

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