見出し画像

こんな夢を見た。

 こんな夢を見た。

 宇宙地図を広げて、いつまでも眺めている少年がいた。
 「そんなに面白いのかい」
 王様が少年に尋ねると、
 「うん。面白いよ」
 彼は無邪気に答えた。
 「ここにね、ちきゅうって星があるんだけど。すごく面白いよ」
 少年は地球をズームにして、
 海、大地、川、森、空と指をさす。
 「それほど好きなら行ってみてはどうだね」
 王様は、少年の希望を叶えた。
 彼は一日だけ地球に行くことを許されたのだ。

 「わあ!」
 明くる日。
 目を覚ますと少年は地球にいた。
 砂浜を裸足で歩き、
 森の中で川の音を聞く。
 風が向かう方角へ鳥と共に飛び、
 人々と大声で歌った。

 本当、に触れるとき、
 こんなにも心が躍るなんて。
 少年は震えた。
 ずっとずっとこのままがいい。
 少年が願うと、そこに咲いていた花が言う。
 「生命は限りがあるから美しいのよ」
 「そっかあ」
 「いつか、あなたにも解るかしら」
 
 時間が来る。
 少年はこの星の、
 緑を、青を、匂いを、営みを、
 愛おしく、胸に抱いた。

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,438件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?