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廣川ちあき
2019年8月22日 23:13
夏は有限、光のもとの肌たちの返す光が少し強すぎる掻きこわす病をもたぬ人たちの誇らしそうにかがやく露出唇と爪をあかあか目立たせてオルガン坂を少女ら登る気づいたらいつでも痒い皮膚だった夏は有限だから許せるやはり着るまだらに暗い腕と脚のくせにスカートも半袖も有限の夏のためかぶる安物のカンカン帽のつばがぐにゃぐにゃ(2019/08/22)
2019年7月31日 22:47
*肩が痛くて作った短歌連作の始まりはこちら↓肩が痛い、ただそれだけでわたしたちわかりあうかもしれぬ初夏肩こりをきっと武術の達人はわたしが歩くだけで見抜くだろう湿布薬うまく貼れないもどかしさ えいっ(ぺちっ)が成功しないわたしたち勉強すれば合格と肩こり持ちにまっしぐらだね「肩こりは英語で直訳できないんだよね」あ、そうですかあ、そんじゃ。肩こりを新機能として搭載しいざ東京で大学
2019年7月29日 21:13
僕たちはきらめく肌をもたなくて一階はいつも化粧品売場あきらめたように静かな階があり整えられた高級寝具エスカレーター次々人を運びあげ大きなマネキン前へと降ろす百貨店の屋上を転々とする怪獣たちをヒーローが追う怪獣とヒーローたちが去ったあと都市の空き地としての屋上喫茶店どこも高くて屋上の自販機で落とすセブンティーンアイスひゃっかてん、僕らの通るつうかてん、きょうつうてんを少し見つ
2019年7月27日 11:31
肩が痛いといふ困難を六年間放つて置いた代償だこれが肩の上に小人が乗つているやうなお伽ばなしは肩凝りであるレントゲン待ちゐるあひだ貼り紙に初めて知れり船医とふ職を整形外科医に首のつけ根を押されたりうぐぐと声を出せば笑はる上手いことリラツクスしてとの助言 岩石のやうな首と肩なのに(2019.07.27)
2019年4月17日 16:47
フリッパーズギターがラジオで流れてる甘いものだけ食べたい今日はあまおうパフェひとつぶんの疲れ将来について訊かれて答えるたびにエレベーターの一階ボタンを慌てて押す もっと素直に喋れたのならにがいにがい花束をかき乱すために長いのでしょう銀のスプーン周辺のどの駅からも遠い場所パフェは食事に含まれますか全て終わるはずがないんだもう行かないオフィスビルの名前ばっか覚えて2019.
2018年12月19日 19:28
十二月はそういう時期で歌手の死や俳優の死をふたたび知らす電流が樹々を光らす道にいて男女二人であれという呪い暖冬はすぐ終わったし望まないことも次々叶ってくれる僕たちを見たことのない誰だかが水を売り買いしてよいと言う大切にされるのはいつも多数派で少し離れて眺める聖樹大切にされない側で生きていく歩いても歩いても樹々が光る乱反射せよ人々、石畳の坂で雨のしずくが白熱しているだ
2018年7月20日 00:14
ゴーカートのどれかひとつに飛ぶ機能 夕焼けならば特に加速するメリー・ゴー・ラウンド、僕らは勝ち戦のきらめきを知らぬままで育った青く発光するウォータースライダーがしぶきを上げた都市の一点観覧車にすくい取られるためだけに登る階段がまだ終わらない絶叫の軌道を耳で追うほどに弱く閉ざされゆく遊園地虹色に光る遊具で埋めつくす大人たちみな夜行性につき初夏の騎士じゃなかった僕たちのための国
2018年2月7日 22:23
プラットフォームの三分間 廣川ちあき頭上には鳩の羽音が行き来して駅は岩場に似ているらしい駅までに傘に集めた水滴は文字を書くには少し足りない両の睫毛に鉄の庇を装備して女らプラットフォームに並ぶささえもつ脳の重たさ紫陽花は枯れゆくときもまるさを保つ戦いに赴く列に今朝塗ったバターの色のスカートの人靴の歩みの流れを分かつ石としてまもられているアゲハチョウの死枕木を千の鏡に掛
2017年8月10日 00:46
折鶴の束の原色照りつけて八月二日いま爆心地天主堂を望む背後の蝉時雨ひとりになりてただ黙すのみきちんと見つめるから何も語らなくていい 少女うつむくケロイドの頬爆心の碑柱の黒くそびえ立つ先の青空ますます青し爆心の碑を去る前に空を見よ竹山広の歌を思えば爆風は確かにここに吹いたのだビルの間の片足鳥居子どもらの笑い声して遠ざかる被爆詩人の詩碑を残して物言わぬことも静かな力なり瞼伏せたる聖使