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聖使徒の像――2013年長崎連作――

折鶴の束の原色照りつけて八月二日いま爆心地
天主堂を望む背後の蝉時雨ひとりになりてただ黙すのみ
きちんと見つめるから何も語らなくていい 少女うつむくケロイドの頬
爆心の碑柱の黒くそびえ立つ先の青空ますます青し
爆心の碑を去る前に空を見よ竹山広の歌を思えば
爆風は確かにここに吹いたのだビルの間の片足鳥居
子どもらの笑い声して遠ざかる被爆詩人の詩碑を残して
物言わぬことも静かな力なり瞼伏せたる聖使徒の像

○2013年、全国高等学校総合文化祭(長崎しおかぜ総文)の文芸部門に参加し、現地の吟行で詠んだ作品。長崎の原爆投下日は8月9日のため、一首目の日付については迷ったが、訪れた日をあえてそのまま使うことにした。

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