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はんなり???!!!着付師物語

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風乃音羽がお送りする小説マガジン。超ヤンキーから世界を股にかける着付師になった女性の人生物語。【事実に基づいた物語】シリーズ。人生は小節より奇なり!
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記事一覧

はんなり???!!!着付師物語 第8章②未来の地球は小さい?!

はんなり???!!!着付師物語 第8章②未来の地球は小さい?!

「未来先生、ヤバい!!すごいことになってるんですね!!」
未来のSNSを見た生徒が興奮気味に教室に入ってきた。
「先生、ついにプライベートセスナ機買ったんですか?」
教室全体で大爆笑が起こった。
「ワハハ、、、あーおかしい、、はは、今日は、何月何日でしょう?」
「えっ?、4月、、、1日?、、エイプリルフールだ!!もうびっくりした。
けど、未来先生ならあり得そうだから、、」
「だよね。ここにいる全員

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はんなり???!!!着付師物語 第8章①パリ事件

はんなり???!!!着付師物語 第8章①パリ事件

 「待ちなさい!!」
パリの凱旋門の前のシャンゼリゼ大通りのクリスマスイブは、真夜中でもたくさんの人がオシャレをして行き交う。その中を着物の裾を捲り上げて大声で叫びながら疾走する小さな東洋人が注目を浴びている。その凄みとオーラで群衆の波が、まるでモーゼの『紅海の奇跡』海の分割さながら未来の前に道ができるように押しのいてくれる。未来が追うのはおそらく16〜17歳ぐらいの少年だ。
「その少年を捕まえて

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はんなり???!!!着付師物語 第7章③異常な移動距離!!

はんなり???!!!着付師物語 第7章③異常な移動距離!!

予定より長いニューヨーク出張を終えた未来は、帰りの飛行機の中だ。フルフラットの座席は小さめの未来には十分大きく、手足を伸ばしてご機嫌さんでくつろいでいると隣の外国人男性が声をかけてきた。
「あなたは日本人ですか?ニューヨークへは観光?」
「いいえ、仕事だったの。」
「へー、どんなビジネス?」
「着物よ。日本の伝統文化、着物の着付のお仕事なの。」
そう言いながら、自分の着付た人たちの写真を嬉しそうに

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はんなり???!!!着付師物語 第7章②ニューヨーク再び

はんなり???!!!着付師物語 第7章②ニューヨーク再び

 未来のフットワークを活かした仕事ぶりは、海外からの依頼まで引き寄せた。
ニューヨークのとある大きな日本人コミュニティの代表から連絡があった。そのコミュニティでは、毎年のように大きなパーティーを日本のお茶会形式で行う。そこに集まる人たちは、在住の日本人のみならず、日本やその文化に興味のあるアメリカ人たちだ。日本のお茶会形式と言えば、やはりドレスコードは着物だ。ゲストはそれぞれ自慢の着物でドレスアッ

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はんなり???!!!着付師物語 第7章①上昇気流

はんなり???!!!着付師物語 第7章①上昇気流

 未来のビジネスセンスなのか、運の良さなのかは分からないが、未来は人との出会いから、チャンスを掴んでいった。
例えば、ある撮影チームのイベントに着付けの依頼で出向いた。その時にとあるお笑い芸人がゲストで来ていて知り合った。その芸人を自分が主催するクリスマスパーティーの司会として呼んだ。その芸人の伝で写真スタジオのオーナーと知り合うことになり、ブライダル撮影のレギュラー着付師の依頼を受けるようになっ

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はんなり???!!!着付師物語 第6章④ひょんなきっかけを掴め!

はんなり???!!!着付師物語 第6章④ひょんなきっかけを掴め!

 未来の仕事は軌道に乗り始めた。東京をはじめとして、襟付けレッスンをきっかけに全国から声がかかった。声が掛かれば、沖縄であろうが離島であろうが、北海道でも出向いて行った。赤字にならなければ来てくれるという未来に、顧客たちは逆にちゃんとお支払いしたいからと、集客や口コミをしてくれた。地元大阪でも自宅の一階を使って固定のレッスンが始まった。ブログを見て、なんと海外からもオファーがかかりだした。
 忙し

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はんなり???!!!着付師物語 第6章③ブレイクスルーのきっかけ

はんなり???!!!着付師物語 第6章③ブレイクスルーのきっかけ

 未来は、集客のためにブログを始めた。毎日一つは必ず投稿することを決めて記事を書いた。最初は、これって本当に仕事になっていくのか、読んでくれてる人がいるのかと虚しくなるような日々だった。それでも毎日着付けのことや着物のことについて投稿し続けた。ブログでつながる人は、あえて異業種の人が多かった。実際、未来は同業者には興味がなかった。自分ができないことをやっている人の話が面白いし、そのほうが自分の枠が

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はんなり???!!!着付師物語 第6章②未来四十歳、新しい目標

はんなり???!!!着付師物語 第6章②未来四十歳、新しい目標

 離婚再婚問題は、予想していたよりもあっさり片付いた。
未来は、前夫が故意に離婚届を出していなかったとするなら、一悶着あるかもしれないと覚悟していた。離婚届と保証人を準備して名古屋へ向かった。
喧嘩も覚悟で出てきた未来を迎えた前夫は、拍子抜けするようなことを言った。
「いや、お前のことだから、大阪に飽きたから帰ってきたよ。やっぱり一緒に住もうか!って言い出しかねないからな。そうなった時、もう一度婚

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はんなり???!!!着付師物語 第6章①人生の変化

はんなり???!!!着付師物語 第6章①人生の変化

約4年の韓国滞在を経て帰国した未来は、旅行社の名古屋支店に勤めることとなった。
そう言えば、未来は既婚者な訳で、それだけ長い間、日本を離れていた間、夫はどうしていたのだろう。そして、どう思っていたのだろう。
何の相談もせずに決めてきた韓国への転職で、数年以上別居状態が続いたこの結婚は未来とその夫にとって一体どんな意味があったのだろう。
当然ながらこの関係性は長く続く訳がなかった。
離婚に至る理由は

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はんなり???!!!着付師物語 第5章❷未来の韓国ライフ

はんなり???!!!着付師物語 第5章❷未来の韓国ライフ

後先考えずに新しい会社に入ったものの、未来の給料はなんと三分の一になってしまった。とはいえ、未来は前会社でインセンティブ含めて1ヶ月100万円ほどの給料を取っていたから、30歳過ぎのOLが取る給料としては三分の一でも普通以上だ。
けれど、普通は、100万円の給料で暮らしていた者がいきなり30万円の暮らしをするのは大変なことだ。しかも給料は半分円、半分ウォンで支払われていた。未来は、何に関しても順応

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はんなり???!!!着付師物語 第5章❶未来30歳転機を迎える

はんなり???!!!着付師物語 第5章❶未来30歳転機を迎える

 同級生の訃報は、未来に人生を考えさせる一つのきっかけだった。その前に、死を覚悟するような経験をニューヨークでもしていたからなおさらだったのかもしれない。
そんなことでもない限り、普通に生きていれば、若い時は自分が歳をとることも想像できないし、人はいつかは死ぬことは知っていても自分が死ぬことは全く意識にすらないと思う。
けれど、未来はこの二つの’死’を身近に感じてしまう経験を通して、目標もなく何と

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はんなり???!!!着付師物語 第4章❸未来その後

はんなり???!!!着付師物語 第4章❸未来その後

未来はアメリカに発つ時、家族にも彼氏にも「ちょっとアメリカに行ってくるね。」と告げただけで、どれぐらいステイするかも何も言っていなかった。
幼児の頃から、『鉄砲玉』と呼ばれていたけれど、この歳になってもそれは相変わらずで、自他ともに、「気が済んだら帰るんだろう。」と思っていた。
ニューヨークで死ぬかもしれない事件に巻き込まれたけれど無事だった未来は、通り過ぎてしまったことに恐怖も含めて何かを思うこ

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はんなり???!!!着付師物語第4章❷真面目?な女子大生??

はんなり???!!!着付師物語第4章❷真面目?な女子大生??

 未来は、とある短大の秘書科に入学した。中学に入学して以来、まともに勉強してこなかった未来にとって、勉強自体が新鮮で面白かった。だから真面目に勉強した。もちろん、次女、長男への父の特別ボーナス事件の時の決断があったから、向き合う姿勢が最初から違っていた。未来は自分で決めたこと、自分への約束は、何がなんでも完遂させたいという性格だ。だから、しっかり勉強すると決めたなら、先生たちが教えてくれることは一

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はんなり???!!!着付師物語 第4章❶未来帰国

はんなり???!!!着付師物語 第4章❶未来帰国

未来は、1年半のアメリカ生活を終えて、帰国した。けれど満喫したかというとそうではなかった。だから未来は、また再びアメリカに訪れることを自分自身の中で誓った。

帰国した未来は、当然留年するものと思っていたけれど、何故か元々同学年の子達と同じ歳に高校を卒業することになっていた。
そこはやはり、父親が何らかの手を回したに違いない。私学とはいえ、そんなことが出来たのは、未来の父親は、力を持っているだけで

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